三三と若手2(上・立川吉笑と日本語警察)

17日金曜日は、らくごカフェへ。
昨年11月に初めて参加した「三三と若手」。
この会自体が気に入ったので12月も検討したのだが、この1月に回した次第。
今回の若手は、立川吉笑、柳家あお馬。
吉笑さんは真打昇進決定。
あお馬さんはキャリア11年だが、先日神田連雀亭を抜けたので、機会を見つけて聴かないと。

蒟蒻問答 あお馬
小人十九 吉笑
(仲入り)
田能久 三三

先週聴いた扇辰師ではなく、三三師から田能久が出た。
でも楽しいものでした。
さらにこの会が好きになった。
新作派も必ず入れるようで。

トップバッターはあお馬さん。
大きな声が、よく響く。

らくごカフェは、「通う会」で夜にしか来ないんです。久々に昼に来ました。
ボンディの列が長くて驚きました。エレベーター待ってたら、店員さんに人数を訊かれました
エレベーターに乗るという意思表示で指を指したら、おひとり様ですねって言われました。
私はまだ食べたことはありません。ただ、母親が私の会に来るときは、ボンディで腹ごしらえしてから来るので、おいしいというのは聞いてます。
母親は満腹になるようで、私の高座で寝てます。

永平寺の、僧侶の教育施設の卒業式の話。
「坊主になってこい」なんていうとしくじった前座みたいでイヤですが。
客が聴いても意味のわからない、卒業式における問答の模様を延々と。しかし退屈させない。
「私気がふれたわけじゃないです」

問答といえば蒟蒻問答。
あまり好きな噺じゃない。変に長くて。
最近聴いてよかったものは、短めだった。桂竹千代さんとか。

しかし、あお馬さんのものを聴いて、異なる道もあるなと思った。
長い噺で退屈させなければいい。
あお馬さん、抜いてる場面など別にないのだ。25分やってたし。
短めの部分はある。

  • 八五郎が坊主になるまでが早い
  • 寺の備品を叩き売る先の道具屋が、登場人物としては出ない
  • 親方の坊主が速攻できあがってる

でも、これだけじゃないなと。
当たり前といえば当たり前なのだが、あお馬さんは覚えた噺をただ再現するようには語らない。
寺男の権助との会話を、しっかり漫才をするように語る。
別にギャグいっぱいというわけではなく、クスグリは既存のものだけ。それ以外は来客(問答の坊主)を、先ほど話題にしてたなかなか死なない婆さんが死んだなと期待する場面程度じゃないかな。
でもありものでしっかり楽しませてくれる。
落語の技術として、「登場人物は噺の先を知らない」なんてのがある。
ストーリーを追って、八五郎がしっかり驚いているのが新鮮に映るみたい。

演者がそういう肚でやっていれば、落語の客のほうだって噺を知らない体で聴けるものだ。
永平寺からやってきた問答の坊主と、いったいどんなやり取りになるのかをじっくり楽しめる。
あお馬さんの魅力も改めてよくわかった、見事な一席でした。

続いて真打昇進が決まっている、立川吉笑さん。
初めて見る、群青色の着物。袴も見たことがないもの。
さすがに真打になろうというのに同じ着物ばかりというわけにはいかないらしい。

例によって、猛スピードの楽しいマクラ。
メールアドレスを公開しているので、たまにお客さまからご意見いただくことがある。
なんなら昔、携帯電話も公開していた。必死で探したら見つかる。
ご意見いただくこともあるが、現場のファンからはそれほど厳しいものはない。
ファンの方だって、予約の際に情報を知らせているわけだから、探したらこっちだってわかるだろう。だからお互いさまなのだ。
一席やっている間、高座からお客さまの顔は、画像としてなんとなく覚えています。
この後神保町の街中でバッタリ会ったとしたら、なんとなくはわかりますから、ああ先ほどはとご挨拶させていただきます。
ただ、不特定多数のお客さんが観ているテレビとなると。見知らぬ方から苦情が飛んで来ることがあるのです。
落語ディーパーに出ていた頃はいろいろありました。いろいろあって終わった番組です。
全国に日本語警察の方がいらして、皆さんそれぞれ間違った言葉が広がらないよう、日々自治権を行使しているわけです。
正直腹が立つこともあるんですけど、最大の問題は不愉快だが間違っていないというご意見です。
かつて落語ディーパーで新作落語づくりに密着されました。
カメラの前で、「もう煮詰まっちゃったんで、今日はダメですね」。これに対しNHK宛に苦情がありました。
「煮詰まるという言葉は、完成した状態を意味するわけで、本来はいい状態を表す言葉です。言葉は日々変化するものとはいえ、言葉のプロである落語家さんが間違って使うのはいかがなものか」
それからよくあるのは「ら抜き言葉」ですね。でもこれは、わりと意識しています。
問題は、ら抜きを意識しすぎて、要らない「ら」を入れてしまうことがあるんです。
いや、冷静に考えればわかるんですけど、ラジオなんかで0コンマ何秒で発言する際に、安全策を採っていらない「ら」を入れてしまうことがあるんです。

上下2回で終えようと思っていたが、これは3回になりそう。
続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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