林家はな平お庭de落語(上・転失気)

火曜日、開演時刻でしくじったので水曜出直し。
とはいえ再度のスタジオフォー(巣ごもり寄席)もダレるのでどこかないかなと。
林家はな平師の「お庭de落語」というものが見つかった。2年ほどご無沙汰だが、好きな師匠のひとり。
細川肥後庭園内の「松聲閣」という建物が会場。
まんべんなく駅から遠いエリアであるが行ってみよう。
1時間で1,500円。
交通費節約のため高田馬場から歩くことにする。
ばばん場へ行く際の裏道を抜けると新目白通り。さらに神田川の北に出る。

細川肥後庭園は実に立派なお庭であり、文京区がただで開放してくれている。こんなスポット知りませんでした。
落語のおかげでまたひとつ縁ができた。
1本だけだが梅も咲いてた。
細川家つながりで、戸越公園に似ている。戸越公園も細川下屋敷だったのだ。
できた時代はだいぶ違って、文京区のほうは幕末かららしい。
こちらのお庭のほうが、地形の関係で立体的。庭園の脇を「胸突坂」が通っているぐらいなので。

早めに着いたので、お庭を見て回る。
敷地内には無料の美術館の永青文庫、隣は椿山荘の敷地。
見るべきものが無数にあるが、毎月ある会なので次回の楽しみに。
松聲閣は、しょうせいかく。声の旧字ですね。

転失気
鮑のし
百川

和室で、椅子席多め。
お客はつ離れそこそこ。そもそもそんなに入れないけど。
時間になるとはな平師登場。
高座の後ろがお庭で、陽がよく当たる。しばらくはな平師の顔が見えなかった。日が傾くにつれ見えてくる。

脚を痛めまして、とはな平師。
脚は噺家の命なんですがだって。
正座で1時間持つでしょうか。ただ、伸ばしているほうが楽ですね。
正座より、曲げるときが痛いです。歩くのがちょっと。
ましてここは駅からまんべんなく遠いですから。

新年からろくなことがなくて。声が出なくなりまして。
医者に駆け込んでステロイド剤処方してもらい、大分と福岡の会になんとか向かいました。
それから一家で胃腸炎になったり。
私厄年なんですよ。
前厄の昨年はお祓いしました。今年もやります。

この会は勉強会、というと失礼ですが、あまりやらないネタを出していく企画です。
ネタ帳見てましたらね、10年やってない噺があったんですよ。別に珍しい噺じゃないんですけど、機会がなくて。

知ったかぶりのご住職を振って転失気。
少々ガッカリ。
だが、実に見事なものだった。
隅々まで知り尽くしているこの噺、師はストーリーを語っているのではない。落語を語っている。
別に禅問答ではない。展開がどう、クスグリがどう、ではなくて、落語が聴こえてくるので実に楽しい。
前座噺を退屈せず聴ける場合、しばしば感じる技法がある。
ストーリーの先を知らない登場人物の気持ち、驚きをしっかり語ること。
ただはな平師から、珍念の驚き自体はしっかり聴こえてくるのだが、この技法とはむしろ真逆かもしれない。
師は展開を意図的に平板に、突出せすに描く。
どう語るか、だけに落語の楽しさが掛かっている。
この語りが落語なのだ。
誰にでもできるかというと、全然そんなことはない。
必ずしも若手だけでなく、「お付けの身にして食べちゃった」あたりを頑張りすぎる演者は多いと思う。
珍念の感情も実にフラット。和尚への軽い復讐を、ごく気軽に実行するし、いつまでもゲラゲラ笑ってもいない。
どんどん楽しくなってきた。本当に平板なのに。
サゲは先週聴いたのと同じ「屁とも思いません」。
このスタイルがどこから来たかというと、やはり正蔵師なのだろう。
似てない弟子ばかりの中で、はな平師がいちばん似てる。
一席目から大満足だ。

はな平師、転失気について語る。
みんな覚える噺ですが、最近寄席ではあまりかからないかもしれません(そうかな)。
学校寄席では重宝します。
聴く機会は多いですね。アタシのは誰から教わったというものでなく、聴き覚えです。

子供二人が保育園に通ってますが、最近そこに呼ばれて落語をしました。お子さんは全身で笑うから面白いですね。
うちの子は年長さんと、1歳児クラスです。
面白いことに、下の子は高座のアタシを見ても、誰だかわからないんですね。
着物の人がなんかやってると思うみたいです。

うちに帰ると妻が一人いまして。二人もいるもんじゃないですけど。
これが古典落語の演目と同じで、かみさんのほうが強いという。
ここから、商売終えて帰ってきた甚兵衛さんへ。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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