出囃子に乗って舞台の袖から噺家登場。
客「待ってました!」
噺家「ありがたいですねえ、『待ってました』。こないだ、下りるときに『待ってました』って言われまして、張っ倒してやろうかと」
お声が掛かる、一部の噺家さんならではの定番挨拶である。
困ったことに、この挨拶、カブる場合がある。
そもそも寄席では、噺がつくのはご法度だ。
だから前座さんはネタ帳に演目を書く仕事があるし、上がる前の噺家もネタ帳を見て、その日すでに出た演目とつかない噺を選ばなくてはならない。
NGなのは同じ演目だけではない。前座が「道潅」をやっていれば、導入部分が同じ「雑俳」はできない。
違う噺のマクラを勝手に持ってくるのはご法度であるが、これも噺をつかないようにする策のひとつ。
寄席とはかように親切な空間なのであるが、それでもネタ帳に書かれなかった事象についてはどうしようもないことがある。
「待ってました」に対する返答がカブるのを直接見たことはないが、千葉TVでやってる浅草演芸ホールの中継で、明らかに客がダレた笑いをもらすシーンを見たことがある。
たぶん、先の演者とカブってしまったんだろう。
ちなみに同一映像内だったかどうか、噺家さんが下りるとき、客が本当に「待ってました!」と声を掛けたのも見た。
うーん・・・。
数少ない、この挨拶のバリエーション。
客「待ってました!」
橘家文左衛門「(客席を睨みまわして)待ってるわけねえんだよ。俺、代演だもん」