神田連雀亭ワンコイン寄席23(上・柳家小もん「三人旅」)

五代目柳家小さん「湯屋番/三人旅/強情灸」

仕事に区切りをつけて、一日ぽっかり空いた日。
久々に、池袋へ瀧川鯉昇師を聴きにいこうかとも思った。この場合、昼から夜の仲入りまで居続けになる。
だが結局、1時間の神田連雀亭ワンコイン寄席で済ますことにした。
短くても、いい落語が聴ければ満足なのです。

現地に着くと、ビルの前で柳家花飛さんが立っている。なにをしているのかと思ったら、昼席の整理券を配っているのだ。
そうだった、昼席は神田松之丞さんが出るのだ。
整理券をもらったうえで、ワンコイン寄席に参加する人もいたようだ。そのためなのか、ワンコインも20人程度埋まって盛況。
私も予定がないので居続けしてもいいのだが、よしておく。
松之丞フィーバーを今、少々冷ややかに眺めているところがあって。
これが、浪曲の玉川太福さんだったら聴いていきたいのだが。

小もん / 三人旅(びっこ馬)
花飛  / ぞろぞろ
幸之進 / 家見舞

立川幸之進さんだけ初めて。
落語協会の柳家小もん、柳家花飛のおふたりが目当て。
小もんさんは、急遽の代演のようである。だから来たというのもあるが。

柳家小もん「三人旅」

本来前説をする花飛さんが表で整理券を配っているため、前説なし。
柳家小もんさんが時間になると出てきて、「今日は人手が足りないもので前説がありません」と断って、まず携帯オフ等諸注意。
小もんさんは都内の寄席はもっぱら自転車で向かうらしいが、今日は雨も降ったので電車で来たそうな。
マクラをそこそこに、旅のマクラから。駕籠の話に入りかけるので「蜘蛛駕籠」かと思った。
蜘蛛駕籠も私の大変好きな噺なのだけど、小もんさんのは一度聴いてるからなと思う。
その思いが演者に伝わったものか、三人旅へ。
柳家のお家芸のひとつだろうが、めったに掛かる噺ではない。楽しいのに。
大変長い噺の中のごく一部。

すばらしい一席。
やはり柳家は違うなと。小里ん師の弟子だけのことはある。
いつものスタイルなのだが、まったく余計なクスグリを入れずに、噺本来の持ち味だけで堂々と勝負する小もんさん。
登場人物たちの会話がとにかく楽しくて、ずっと聴いていたくなる。また、旅ののんびりした雰囲気がよく出ていていいのだ。
老夫婦に連れられてきていた小学生の孫が大爆笑していた。
この時季は親子寄席など多数あるけども、子供相手だからってなにも、「初天神」とか「転失気」とかばかりやらなくたっていいと思う。廓噺やれとは言わないけど。
先日江戸東京博物館で聴いた馬石師の「臆病源兵衛」もそうだし、こんな「三人旅」なんて古い噺でも、力のある噺を上手い人がちゃんと演じれば、子供だって喜ぶのだ。
「粗忽の使者」にも使われる、馬に乗ったが首がないというようなクスグリ、実に落語らしくていい。
もちろん、大人にもとても楽しい噺。

びっこ馬のアクションなど、所作の多い噺だけに、目で見ても楽しい三人旅。
また、小もんさんのような丁寧な人が演じると、ちゃんと東海道中の画が浮かぶ。
時間をあらかじめ長めにもらっていたようで、25分を超える長講だった。
まだまだ旅は続きますと言って下りる。いきなりの大ヒット。

続きます。

作成者: でっち定吉

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