立川談幸、いつの間にか香盤決定

ふと気になって、落語芸術協会の香盤を確かめてみた。
香盤は、噺家の序列。ファンにはあまり関係ないが噺家にとっては大事なもの。
とっくに正会員になり、弟子もめでたく真打に昇進した立川談幸師。
真打の一番下に、破線を引かれてさらにその下という扱いだったのだが、ちゃんと香盤が決まっていた。
いつ決まったのかまったくわからない。まあ、基本的に芸協内部の問題で、いちいち報道するようなものじゃないし。
昇太会長が決定した前後に決定した話だろうか?
それにしては、ずいぶん下の香盤だ。三笑亭可風師の下で、昔昔亭桃之助師の上。どちらも若手の真打。
どうやら、芸協の正会員になった日付により、遡ってここに収まったらしい。正会員決定を、真打昇進の日付と考えるわけだ。
まあともかくこれで談幸師、完全に芸協の一員になった。
弟子も、立川流から連れてきた2人以外に、すでに4人もいる。

これでひとつ前例ができた。
といっても、移籍に伴い、香盤を新たに決定した前例はすでにある。
談幸師のような円満移籍ではない。
三遊亭遊雀師が落語協会から移籍してきているのだが、この香盤も、芸協に所属した時点で決まっている。
談幸師の香盤決定方法は、これを踏襲したようだ。
もっとも遊雀師の場合、準会員歴はない。
移籍に伴う事情はいろいろあり、個別に比較して整合性が取れないことはあるかもしれない。

しばらく移籍を受け入れていない落語協会のほうは、かつてあった移籍につきこういうやり方はしていない。
桂文生、桂南喬という移籍組は、芸協での真打昇進時をベースに落語協会の香盤が決まっている。
大ベテランの三遊亭金馬師も、東宝名人会にしか所属しておらず、途中から落語協会に加入している。その際に、香盤をどうするか会議があったそうで。
先代柳朝が、自分の順位を譲る形で決着したとか。

三遊亭円楽師も、芸協に加わった人。今のところ準会員で、芸協の公式には「客員」として名前が出ている。
2017年6月に加入しているので、もう2年経っている。いつ正会員になるのだろうか?
円楽師も、正会員になった日をもって、芸協の香盤に加わることになるのだろう。
このたび昇進の柳亭小痴楽さんの上だろうか?
円楽党を脱退していないことはなにか影響するのだろうか。客員のままということもある?
まあ、寄席に出られるならなんでもいいのかもしれない。

この後も、特に立川流から個別に芸協に合流する流れがきっとあると思う。
代演を中心に2年間準会員を務めたのち、正会員になれるというルールになるだろう。
ただ、上に挙げた談幸、遊雀、円楽という人たちは、いずれも落語協会で前座修業をしている。
芸協と落語協会は基本的にシステムを横並びにしているから、落語協会の修業はそのまま認める。
この先、立川流のみで修業をして真打になった人が合流したいと言ってきたとき、どうするか。
全員の移籍を認める理由はない。ひょっとして、公表されていないだけで却下された人はすでにいるかもしれない。
認める場合だが、恐らく前座を1年務めて格好をつけさせるのではなかろうか?
この前例は、談幸師と一緒に移籍してきた弟子。
円楽党から新たに加入の希望があったらどうなるか? 円楽師が認められている以上、移籍を受け入れるなら、二重加入でもいいということになる。
円楽党も立川流と同じ扱いにするか? するしかないだろう。
ただ、円楽党には両国寄席があって、立川流よりは寄席らしい修業がおこなわれている点、微妙ではある。

ややこしい人は、他にもすでにもうひとりいる。
東京に出てきて長い、笑福亭鶴光師。
この人は芸協の真打香盤には名前がなく、上方真打という別個の扱い。
上方落語協会との二重加盟でもある。まあ、東京の別の団体にも入っているのと比べると、さして問題にはならないだろう。
ライバル組織ではないからである。
鶴光師も、東京に根を下ろし、多くの東京採用弟子を抱えている。
東京の弟子は上方落語を手掛けるが、芸協の中ではまったく差別はされていない。
すでに2人、真打も出している。
鶴光師が芸協の所属になったのは1990年とのこと。色物としての、あいまいな形でスタートしたようではある。
鶴光師も、談幸師と同じ形で真打香盤に載せる必要があるのではないか。1992年あたりから正会員になったと考えればいいだろう。
そうすると、なんと新会長・昇太師あたりと同期ということになる。
もちろんキャリアはだいぶ違うのだが、これでもおかしくはないのでは。
昇太師の後の香盤は、小文治、小南、竹丸と続く。

昇太新会長の野望は、団体の統一なのだと書くメディアもある。
意欲の濃淡はわからないが、一本化したほうがいいというのは多くの人の望みだろう。
だが、香盤問題ひとつとってもなかなか難しいようではある。
個人的には、団体が複数あることにも、わずかなメリットはあると思っている。
これにより、ドロップアウトした噺家さんを別団体で救うことができるというものはある。それだけといえばまあ、それだけ。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。