円楽党の真打昇進基準(下)

林家九蔵問題で話題になった、三遊亭好の助師は2018年の昇進まで13年掛かっている。
落語協会・芸術協会よりはそれでも早いが。
好の助師と同期の三遊亭朝橘師は、1年早く12年。
これは差がついたのではなくて、真打昇進を違う年に分けることで、団体としての盛り上げを図るためであろう。

だがその次、二ツ目香盤トップである三遊亭鳳笑さんの、昇進の声が聞こえてこない。
この人は資料が少なく、正確な入門年次がよくわからないのだが、2005年か2006年のはず。
好の助師の昇進の次年度に昇進したって構わないはずだが。
鳳笑さんの実力が劣っているということはないはず(少なくとも私は好きだ)なので、恐らく意図的に昇進時期を遅らせていると思われる。

鳳笑さんの次、三遊亭楽大さんは、2007年の入門。この人も達者で面白い。
まとめて昇進という可能性もあるから断言はできないが、今後も一人ずつ昇進させそうに思う。
そのさらに次はやや問題。噺家としてはあまり活動していない、円楽師の息子・一太郎。本業は声優。
こうした人は、年功序列真打制度の下でも扱いに困りそう。
とにかくそうこうしているうちに、真打昇進まで15~16年程度掛かる落語協会・芸術協会に揃うことを目論んでいるのではないか。

円楽党の真打昇進、ある程度遡ってみた。真打昇進の年度と、入門時からの年数。月は考慮していない。

五九楽(1992年・入門11年)
とん楽(1992年・入門8年)
好太郎(1992年・入門7年)
楽松 (1992年・入門6年)
竜楽 (1992年・入門6年)
良楽 (1992年・入門5年)
愛楽 (1992年・入門4年)
京楽 (1992年・入門4年)
洋楽 (1993年・入門9年) ※ (故人)
全楽 (2002年・入門2年) ※ 入門前に立川談志門下
小圓朝(2005年・入門9年) ※ (故人)入門前に落協・小三治門下
神楽 (2007年・入門10年)
上楽 (2007年・入門10年)
楽生 (2008年・入門11年)
円福 (2008年・入門11年)※ 入門前に芸協・柳昇門下
楽京 (2008年・入門11年)※ 入門前に落協・小里ん門下
兼好 (2008年・入門10年)※ 受賞歴多数
大楽 (2009年・入門10年)
鳳志 (2009年・入門9年)
王楽 (2009年・入門8年) ※ NHK新人大賞受賞
楽市 (2012年・入門12年)
萬橘 (2013年・入門10年)※ 受賞歴多数
朝橘 (2017年・入門12年)※ 受賞歴あり
好の助(2018年・入門13年)※ 受賞歴あり
(※ 2020年1月10日更新しました。一部不明のため名前のない人あり)

こうやってまとめてみると、笑点特大号で活躍中、愛楽師の昇進など、私の認識以上に結構無茶苦茶であるな。
4年って・・・二ツ目昇進の年数だ。
こんなアナーキーなやり方をしていれば、既存の協会から嫌がられても、それは仕方ない。

よそでの修業を断念して合流した人が多いことにも気づく。
そういう人は、比較的ゆっくりめの昇進だ(移籍前のキャリアが9年あった、旧名立川國志館の全楽師を除く)。
移籍して、結果的に早く真打になったらシャレにならないものな。

円楽党の真打を、世間の客観的評価をもって眺めてみれば、売れっ子は下のほうに圧倒的に集中していることもわかる。
中でも兼好・萬橘の力は圧倒的である。
なるほど、古いファンが円楽党を認めないとして、その心境もこうすると見えてはくる。
中堅どころがもうひとつパッとしないのだ。
ただし本当は上手いのに、早すぎる昇進のお陰で世間評価が落ちてしまった気の毒な師匠もいるように思えるのだが。

並べてみると、ある程度の真打昇進ルールも見えてくる。

  • 異常に昇進の早かった時期を除くと、入門10年が目安
  • 現在、二ツ目時代の活躍に関わらず、昇進を遅くしている
  • 他団体で修業を積んだ期間が考慮されることもある
  • 受賞歴があると、昇進が早まる
  • 近年は、ひとりずつ昇進させる

「10年」という目安を「15年」程度に伸ばしていくことで、既存の二協会と同じになるのである。
円楽師や好楽師(会長)にも、このあたり戦略があるのだろう。

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作成者: でっち定吉

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