滝野川「みやこ鮨」の三遊亭遊馬2(上・粗忽長屋)

板橋駅東口、北区滝野川の寿司屋「みやこ鮨」での、三遊亭遊馬師匠の独演会「遊馬百席」。
前回は7月、三連休の中日に初めて出向いた。裏を返しに行きましょう。
いい会であって、会場のみやこ鮨がまたなかなかいい雰囲気であることを家族に言うと、今回ついてきた。
会が終わった後の、お店を予約して出向く。会の予約も一緒に入れてもらった。
ちなみに私最近は、遊馬師のブログを楽しみに読んでいる。隠居と遊馬師の会話が面白いのだ。
古典落語の世界を地で行く遊馬師。

板橋にはちょっとだけ早く着いたので、駅前マクドナルドで一服する。
勉強をしに来ていたお姉ちゃんが、目の前のお婆さんに話しかけられていたのを目にする。
お姉ちゃん、勉強できなくて困ったと思うのだが。人の距離が近い街なのだということは感じる。

開演の20分前ぐらいに行くと、まだ客は誰もおらず、遊馬師が座敷で着替えのまっ最中であった。

前回は少なかったのだが、打って変わって大入り。20人弱。お店だから、これだけ入るときゅうきゅう。
いつもは横になれるぐらいなんですけどねと遊馬師。

《遊馬百席》
粗忽長屋
堀の内
(仲入り)
粗忽の使者

なんと、粗忽噺3連発。前回は廓噺2連発だった。
自分の会だからって・・・寄席ではあり得ない演目の出し方。
もっとも、最初から今日は粗忽シリーズにしようと決めていたわけでもないようだ。
一席目は、ずいぶんといろいろマクラ・小噺を振っていた。「十人寄れば気は十色」とか、さまざまな系統のものを。
小学生の子供さんもいて、なにがいいだろうかと探った結果、粗忽ものに行きついたようである。
単にツきまくっているだけではない。「堀の内」の主人公八っつぁんは、粗忽長屋の八っつぁんがやがて結婚した結果なんだそうだ。
なるほど、このハイパー粗忽振りは、同一人物であっても不思議はない。
三席目になると、もう一席粗忽ものが来るなとすでに予期していた。

粗忽長屋

今回も遊馬師、20分ぐらいたっぷりマクラを振っていた。
今日は9月1日、まだ学校始まっていないんですねと。休みが一日長くて得ですね。
最近は、二ツ目さんも一人前の扱いをされていて、料金が安いもので仕事が多い。
遊馬師、二ツ目さんのツイートを確認し、「あ、こいつ今日も仕事してる」とチェックする。
私のほうは、夏の書き入れ時でも皆さんと同様に休みながらのスケジュールだと遊馬師。
子供に向かって、噺家になっちゃいけませんよと。ライバルは今のうちに潰しておかなきゃ。
それと、CD「三遊亭遊馬のこども落語」シリーズが今隠れたベストセラーなのだそうで。その宣伝。
今日来た子供たちは、自由研究の課題に落語を取り上げ、ついでに先生に教えてくださいだって。

古典落語に付随のマクラを数多く降る。客だって先刻知っているものばかりだが、ちゃんとウケる。
語り口がよければなんだってウケるのだ。

ようやく今日の方向性が定まった様子。
粗忽のマクラ「赤犬」を振り、粗忽な人ばかりが集まった長屋がありますと粗忽長屋へ。
粗忽の噺の中でも、難しいことでは筆頭。
なにせ、粗忽な八っつぁんと熊さんの人物造型にリアリティがなさすぎる。こんな奴いねえよという。

だが、さすが遊馬師。
この粗忽な二人、遊馬師が演ずると、ちゃんと落語の世界でリアリティを放つのだ。
こういう人物なのだという描きかたに、説得力がある。
なぜかと考えてみるのだが、結局、冒頭からの描写が丁寧なんだろう。八五郎から見たこの世界のありようを、徹底して描く。
そうすると、客は八五郎のものの見方を徐々に学習するので、やがては「八っつぁんだったら仕方ない」になるのだ。
そして、常識人であるツッコミ役の町役人の気持ちもわかる以上、そこに認識のギャップが浮かび上がり、爆笑となる。

続きます。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。