《遊馬百席》
お見立て
品川心中(通し)
三連休の中日、日曜はどこか落語に行きたい。
月曜日に行ったばかりなので、できるだけ安いところへ。
前日の土曜日に座間で、談幸・圓太郎二人会というのが900円。当初これに行こうかと思っていたのだがやめてしまった。
交通費がやたら掛かるということはないのだが、いかんせん遠い。
予定は決めていなかったが、東京かわら版をめくって、急遽「遊馬百席」に出かけることにする。
毎月やっている会で千円と安いので、以前から気にはなっていた。三遊亭遊馬師の独演会である。
JR板橋駅から徒歩2分と近い、滝野川・みやこ鮨。
最近の私は集中的に、城北地区に出没中。
板橋駅の東口からは、初めて出た。西口(板橋側)と同様、東口である北区滝野川側の出口も、わりと閑静。ただし駅ビルを建設中。
駅前広場は最近整備したばかりのようだ。
柳家喬太郎師が、「私鉄のターミナルからひと駅目」の佇まいについて、マクラで語っていたなと思い出した。
北池袋とか、椎名町とか。
板橋駅はそれらの私鉄駅よりはでかいものの、池袋の隣であることは一緒。やや似た雰囲気がある。
ここに来て再開発が始まっているが、赤羽線時代から、基本あまり変わっていないのだろう。
遊馬師は、寄席でそれほど聴いているわけではないが、そこそこTVでも落語の流れる人。
その優しい世界観が好きだ。
先日の芸協らくごまつりで、裏方として列の整理をしていらした遊馬師をお見かけしたのも、この日の会に来た遠因になっているように思う。
午後3時開演の30分前に、会場の寿司屋「みやこ鮨」に行ってみた。
私は飲食店の面構えにはうるさい。いい店は見た目でわかるというのが持論。ここはいい店に思える。
それはそうと、準備中の札が出ているだけ。非常に静か。
落語会の案内は一応出ている。
まだ準備ができていないのかと思い、駅前を一回りしてみる。
しかし、10分前になってもそのまま。呼び込みなど一切ない。
非常に入りづらいが意を決して戸を開けると、数人のお客さんがいた。
受付が作ってあり、大福帳に名前を書くよう求められる。
寿司屋の店内は、カウンターと小上がり。小上がりの一番奥に小さな高座が設えられている。
時刻になると、CDプレイヤーで出囃子を流して、店の奥から遊馬師が登場。
ホームビデオで高座を撮影しているが、これに深い理由はなくて、世話役が新しいビデオカメラを買ったので試してみたいというだけらしい。
そのためか、皆さんカウンターに腰かけていて、高座に近い、座敷に座る人がいない。ちょっとやりにくいですけどと遊馬師。
師は先に、広小路亭を終えてきた。あちらも、座敷より先に椅子席が埋まるんですと。
末広亭もそうだ。椅子が埋まっても、桟敷は残っていることが多い。
やりにくい環境だったのだろうが、そこは毎月やっている高座らしく、見事でした。
東京かわら版に案内を出しているものの、本当に内輪でやっている会らしい。
そして、かわら版を見てやってきた、フリーの客というのは、どうやら私丁稚定吉、ただひとりだけらしいのだ。みな、ある種関係者。
つ離れしないでスタート。
ただし、ご主人と板さんが、板場で仕込みをしながら落語を楽しそうに聴いている。客は少なくてもみんなで楽しむのだ。
遊馬師、芸術祭大賞を獲っている超本格派の噺家なのだが、そのような人でも日曜にこのような小さな会を開く。そういうものである。
落語を聴けるのは、「チケットの獲れない噺家」の会だけではない。いろんな会があっていい。
遊馬師が語っていたところによると、この会、勉強会なのだそうだ。
噺家さん、家でのべつ稽古してたって上手くならないなんてよく言う。鼻から息をするもんの前で演じてこそ、勉強になる。