続いて立川談吉さん。
お客さんが出の拍手をしようとしているのに、私が変なタイミングで頭を下げるもんで、手を叩こうかどうしようか変な形になってました。まだまだ修業が足りませんだって。
絶対、ネタ振りのためにわざとずらして頭下げてるだろ。
マクラは、自分の出身地、十勝が舞台の「なつぞら」について。せっかく自分の故郷がドラマ化されてるのに、誰も視ていない。
広瀬すずが可愛いのに、あまり盛り上がらないドラマ。
好感度の低いヒロインのときは、視ている人が少ないのだと嘆く。私はお姉さんのほうが好きですがだって。
よその女性が広瀬すずの話をしているのを小耳に挟む談吉さん。耳をそばだててみると、「あの娘、育ちが悪いから」。誰目線なんだよと。
楽しいマクラでつかみばっちり。
次にご本人、忘れ物が多いということについて。私よく忘れ物するんですと。昨日も財布忘れた。
帯を忘れたときは、風呂敷を巻きますと。これは他の噺家さんからも聴いたことがある。意外とバレない。
足袋を忘れたときは、白い靴下ならセーフ。まず気づかれない。
襦袢を忘れたときが問題で、このときは、下に羽織着ますだって。そんな人いるの?
忘れ物をしてるんじゃないかと気になるときは、だいたいしてます。
それなのに、なぜ気づかないか。忘れているからです。哲学的だな。
今日は前説やらなきゃいけなかったんですけど、私は注意事項が覚えられないんですと。落語は覚えられるのだけど。
小はぜさんに相談したら、別にいいんじゃないかということで止めましたとのこと。テキトーだ。
そして、八っつぁんが出てきて、隠居に頼まれて手紙を届けにいく。
そんな噺あったっけと思ったら、これが「平林」なのだ。普通、主人公は小僧の定吉である。
別に立川流に独自の平林があるわけじゃないだろう。自分で作り替えたものらしい。
この噺、「粗忽」ものとして掛ける人もたまにいるが、一般的には無筆の噺だと思う。
だが、粗忽からつながる噺に完全に作り替えている。
隠居が手紙を届ける相手の平林さんは、昨年祭りの際に八っつぁんと大喧嘩した相手らしい。
八っつぁん、ひとつとやっつでとっきっきから、遡って隠居とのやり取りまで全部思い出す。だが、正解の平林だけ出てこない。
いちはちじゅうのもくもくあたりからは、ちょっと他にないモード。
八っつぁん、なにしろ踊りながら唱えるので、その所作が全部入るのである。
談吉さん、実にいいですね。不思議な持ち味のファンになった。
かなり面白いけど、「爆笑派」というタイプとは違う気がする。
「ふざけた落語だな」と思わないのも不思議な個性。この人なりの、自然な体系の落語になっている。
ギャグがすべて軽いので、聴いていて疲れないのがいい。それに、軽いからスベリ知らずの芸風。