神田連雀亭ワンコイン寄席25(上・柳家小はぜ「のめる」)

しばらく、寄席の定席に行っていない。自称ホームグラウンドの池袋にも。
円楽党の両国や亀戸には行っているのだが、いわゆる寄席四場にこのところご無沙汰だ。
寄席の番組は大変長い。行く際は、本当に身心がのんびりしていないとならない。そこまでは余裕がないのだ。
でもまあ、仕事の合間に、貧乏くさく1~2時間落語を聴きにいくのも決して悪いものではない。
三連休はずっと仕事に追われていた。連休明けの火曜、頭が痛くなったのでちょっと神田連雀亭に。
最近、連雀亭で当たりが多い。
そして、この日もまた、当たりだったのでした。これでいいやな。

小はぜ / のめる
談吉  / 平林
橋蔵  / 試し酒

若干小粒かもしれないが、いい顔付け。3人の所属団体もバラバラ。
立川談吉さんは初めてだ。
なのだが、この人に関しては、ミッドナイト寄席の放送を視て記事を起こしたことがある。妙なところを褒めた。

立川流も、世間で悪目立ちするベテランが多いおかげでなかなか聴きにいかないが、それでも吉笑、笑二のふたりなら、ここ神田連雀亭で目当てにしている。
まだいい噺家はいるはずだと思っている。
この日みたいに、好きな噺家に挟まれて立川流の人がいるのは理想かもしれない。
ちょっと気になったのは、柳家小はぜさんと春風亭橋蔵さん、若干イメージが被る。
個性は違うのだけど、ふたりとも現状地味なタイプなのだ。もちろんそこに味を見出しているから出向くのだけど、盛り上がりに欠けたらどうしよう。
だが、ギャグ多めの談吉さんを挟んだおかげで、構成バッチリの番組となったのであった。
こういうことがあるから、組み合わせというものは面白い。

ギリギリつ離れしてスタート。まあ、こんなものだ。
トップバッター柳家小はぜさんは、ベテランみたいな味の人。連雀亭ではよく聴くが、だいたい前座噺など軽い噺を掛ける。
トリのときは大ネタなのかもしれないが、トリは聴いたことがない。
ともかく柳家らしく、軽いネタもすばらしい。ただ一度、端正だがまったく盛り上がらない道灌に出くわしたことがある。
たとえば前の週に亀戸で聴いていたく感動したばかりの、三遊亭らっ好さんの道灌となにが違ったというのか? 達者な小はぜさんをしても、落語というもの、実に難しい。

いつもだと、前説が出るんですが今日はありません。まあ、いいでしょうだって。
たまにトップバッターの人が前説がわりに注意点を喋っていることがあるが、それもしない。意外とぞろっぺえだが、まあ常連の多い席だから。
なくて七癖と振って「のめる」へ。
最近、やたらよく聴くイメージがある噺なのだが、過去ログ調べたら別にそうでもなかった。

単に賭けごとで戦っているだけではない。お互いの癖がよくないので、ちゃんと直そうという気持ちが強い。
抜けてる八っつぁんだって、友達の留公が口癖のせいで評判が悪いので、いてもたってもいられないのだ。その背景もしっかり描いてみせる。
この八っつぁん、醤油樽に「大根が詰まろうかね」と留公に訊きに行く際、意味もなく糠を頭から被って出かける。
このくだり、その後スルーしてしまうことが多い気がするが、留公のほうはちゃんと、「汚いから家に上がるな」と応答している。
解けない詰将棋を考えたのは隠居ということで、せんみつの床屋の名前は出ない。

小はぜさん鼻濁音も完璧で、歯切れのいい言葉をやりとり。鼻濁音については、必要以上に強調する気はないのだけど、いい江戸言葉はやはりいい。
気持ちいい一席。そして、丁寧な描写ですでに八っつぁんと客の気持ちがシンクロしているので、留公が「詰まらねえ」と言ったとき、まあ嬉しいこと。
ひとつだけ気になったのは、どちらのセリフだったか、「ちげーよ」だって。江戸っ子がちげーよとは言わないだろう。うっかりだろうけど。

続きます。

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作成者: でっち定吉

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