仲入り後は姉妹漫才、ニックスから。
半年ぶりに見かけたが、お姉ちゃんのほうの体が一回り大きくなっている。ネタ中に話していたが、2年で10kg太ったのだとか。
客に手を振って、プルプルする二の腕を妹に突っ込まれる。
衣装はたくさんあるのに着れなくなって、5着ぐらいを使いまわしているのだとか。
衣装は困るかもしれないが、ビジュアル的には姉妹で凸凹コンビというのは見事ではある。
しかしニックス、また腕上げましたですな。
妹の「そうでしたか」は前からあったが、ギャグフレーズとして繰り返しフィーチャーしている様子は初めて観た。
大賛成です。普通の日常用語でウケるというのはいい。
流行るといいですね。
ヒザ前はお目当てのひとり、林家彦いち師。
国立は演者の時間が長めなので、トリの師匠を立てるべきヒザ前でも、他の寄席と方法論が変わってくるようである。だから目当てにしてもいいだろう。
ドキュメンタリーマクラから。
客が大きなくしゃみをするとすぐにそれを取り込んで、「お大事に」。くしゃみを拾う人は、他に三遊亭遊雀師がいる。
ただし脱線したので話を忘れてしまい、なんとか戻る。
空港で飛行機に乗るのを待っているとアナウンスで、「機長が来てません」。爆笑実話マクラ。
師のドキュメンタリーマクラ、何度聴いても笑ってしまうのはなぜか。
それは、事象を面白がる感性とともに、感性を裏打ちする冷静な目線と理屈があるから。
機長が来てないと言われ、一瞬空港の客も爆笑するが、すぐに怒り出す。
そこで出てくるのが、常日頃から奥さんや後輩に、「まあまあ」と引き留め役をさせている暴走おじさん。
いつものように怒り出すが、その日は仕事で来ているらしく引き留め役がいない。しかし、他の客が同調しだしてうろたえる。
おじさんは引っ込みがつかなくなり、さらに突っ張るが、しょせんはいいたがりのおじさんなので最終的に同調する人はいない。
こういうマクラが長くなると、「睨み合い」などドキュメンタリー落語になる。方法論は一緒。
感性は感性のままで放っておかないで、そこに理屈が加わると途端に面白くなるわけだ。理屈の力のない人は、感性を信用しないほうがいい。
低視聴率の番組で醜態をさらしている立川志らく師に、もっとも欲しい分析力だと、彦いち師を聴きながら改めて思った。
客の反応がよかったためか、ついマクラが長めになってしまったと言ってようやく本編に入る彦いち師。マクラで終わるかと思った。
本編は新作落語で間違いないと思っていた。この日は古典の師匠ばかりであるから空気を変えるのにいい。
でも、古典の反対俥。
古典の中では彦いち師の得意演目だと思うのだが、これが池袋などだったら、新作に期待されて顔付けされている以上、実質新作縛りになるだろう。
彦いち師きっと、古典落語をもっともっとやりたいんだと思うのだ。昇太、喬太郎のように。
だからこそ、他に新作の出ない国立で掛けているのでは?
よく考えたら師の古典落語を寄席で聴くのは初めてかもしれない。
もっとも、結構新作っぽい。もともと破天荒な噺だが、細かいディティールが。
威勢のいい車屋は、呼び止めるとドリフトして付けてくれる。
一人目の力のない車屋が退院上がりだとか、そういう説明はとことん省いて簡略化している。こういう編集が新作落語家ならではなんだろう。
橋のない川を水中を潜って通過し、着いたところは青森県五所川原。これで落とす。
時間がなかったからかもしれないが、でもいい切れ場だ。
伊藤夢葉先生は、冒頭のムチで起こされた以外爆睡。寝てるとその音の大きさがよくわかる。
すみません、好きなマジックなのですが。2週続けてヒザのマジックで爆睡だよ。
語りが気持ちいいから寝るのにはいい。
トリの雲助師に続きます。