春風亭昇太師は、落語はカミカミなのにとても器用な人である。ドラマでも人気だが、笑点以外のTVバラエティでも大活躍。
もちろん、カミカミ落語の評価も人気も高くてこそだけど。
BS朝日でやっている「春風亭昇太の少年時代工房」は実に楽しい番組。
少年時代に昇太師がやりたかった夢を実現していくというコンセプト。
このたびのゲストは仲間である、林家たい平師。
ふたりの掛け合いがとても楽しい回だったので、保存版にします。
昇太少年とたい平少年でもって、真鶴の竹林の中で巨大流しそうめんを作る。
竹を割り、削り、そうめんの流れるコースを作り上げていく。
たい平師と二人だけで絡むと、たちまちキャラの役割分担ができる。たい平師がボケとなり、昇太師はツッコミ。
「林家たい平の少年時代工房」とMCを始めるたい平師に、オレの番組だと繰り返し突っ込む。
漫才みたいでとても楽しい絡み。
しかし、カメラが入っているからではなくて、このふたりはたぶん、笑点や落語会の楽屋でもこんな感じなのに違いない。
落語というものはひとり芸だが、しかし「会話」自体は常に落語の中でおこなっているわけだ。だから、噺家は会話によって笑いを生み出すプロでもある。
昇太師いわく、たい平師は好きなことに熱中すると、テレビでも無口で職人顔になってくるのだと。そして、職人のオレってかっこいいというモードになる人なんだと。
言われたたい平のほうは、大学卒業したときに落語界に行くか職人になるか本気で悩んだという。
たい平師がアイディアマンなのは業界でも知られるところ。一緒に真打に抜擢された柳家喬太郎師もよく語っている。
溢れるアイディアを活かし、先日の落語協会謝楽祭でも実行委員長を務めていた。あいにく行かなかったが。
早速アイディアをフルに発揮し、流しそうめん界に新風を吹き込む、枝を使った支え方式。そして生きた竹の内部をそうめんが通過するワープトンネル。
これはただの演出ではなく、実際にたい平師が考えたものに違いない。師以外の誰も思いつかないものだ。
師のアイディア満載の古典落語を思い出す。しばしば、アイディアに走り過ぎてしまうきらいがある気がするけど・・・
画面に映るねじり鉢巻きのたい平師、本当に職人顔をしているので笑ってしまう。
放送されていない部分でも、本当にスタッフを指揮して働いている様子。
後輩なので「アニさん」と昇太師を常に立てるたい平師であるが、その実先輩に指示してこき使う。
この関係性がとてもいい。
たい平師、しばしばこのアニさんの肩を慣れ慣れしく叩く。
そこに甘んじる落語界の大御所、昇太師。
竹を割って箸を作りながら揃ってインタビューを受けるふたり。
協会も一門も違うのに、「昇太・たい平冒険図鑑」という会を一緒に始めた頃の話。
心を許してもらっているはずなのに、昇太師の結婚話は一切聴いていなかったというたい平師。
でも、名古屋の会の帰りにふたりで新幹線に乗ったとき、昇太師が富士山を眺めながら「俺もそろそろかなあ」と言ったという。
静岡県民だから富士山には隠しごとができないのだと。
そして、結婚観について。
たい平師はかつて昇太師から「仕事以外で実力を見せるな」と言われたことがあり、それを今でも肝に銘じているのだそうだ。
名言を受けて、たい平師は家庭ではペットの下の位置づけに甘んじているのだと。
まさに甚兵衛さんのような生き様。
昇太師の新作落語の名作「オヤジの王国」を思い出しましたぜ。
完成した流しそうめんコースの、なんとも楽しく、ワクワクすること。
昇太師がピタゴラスイッチじゃねえかと言っていたがまさに。
大喜びして流しそうめんにありつく地元の子供たち。
その様子を、最上部からそうめんを流すたい平師に伝える昇太師。
たい平師、一番喜んでいるのは昇太アニさんだと独白。
世界一まずい木久蔵ラーメンのつけ麺も流して、まずさを中和するためにたい平カレーで食べてくれというたい平師。
商品の宣伝も忘れない。
こういう楽しい番組で、噺家さんの魅力を再度知る。
落語ファンを自認する人たちも、無意味に笑点をdisらないほうがいいですよ。落語の世界と笑点、まるで別ものではないのだ。
少年時代の心を残したまま大きくなったふたりに、惹かれる女性もさぞ多いのではないでしょうか。
(追記)見逃した方、10月30日に再放送のようです。