堀之内寄席3 その1(三遊亭遊かり「堪忍袋」)

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遊かり / 堪忍袋
喜太郎 / 宮戸川
(仲入り)
鯉八  / 長崎

二ツ目さんの落語もいいものだが、寄席に帰ろうと決意した。
実際に鈴本と国立に行ってきて、続けて満足したところである。
だがやっぱり安く落語が聴きたくて、二ツ目の席に出かけてきた。
時間は短いし、料金が安いにしても結局前後の移動時間を取るし、パフォーマンスの点では決してよくないなあと思いつつ。
23日水曜日はいろいろ行く場所がある。
巣鴨すごもり寄席や、梶原いろは亭などにも惹かれたのだが、月に一度の堀之内寄席へ。
瀧川鯉八、昔昔亭喜太郎という面白い顔付けだ。これで500円。
本来茶菓子付きなのだが、お客さんが多くて切らしていた。まあいい。
天気がよくて、顔付けもよくて平日なのに超満員。トリの鯉八さんも、今まで出た中で一番の集まり具合と言ってたっけ。

うちからは決して近場ではないので、新宿に用事をこしらえる。
用事を済ませ都議会議事堂の食堂で食事したのだが、手荷物検査があった。時節柄仕方ない。
堀之内へは通常丸ノ内線だが、センタービル前から京王バスに乗り、終点の佼成会病院で降りてみる。こちらのほうが堀之内妙法寺に近い。
知らない通りをバスで通るのは楽しい。
丸ノ内線の中野車庫の前を通る。車両がトラックに載せられていた。地上を搬送するらしい。
ちょっとテツの気分。

開演前に、予想外の人が出てきた。古今亭今輔師。
みなさん、冷房寒くないですか、暑くないですかと。私にはちょうどいいのだが、暑いという意見が多く、冷房を付けたり。
この会の常連は今輔師のことはご存じみたいだが、もちろん知らない人もいる。
最後に、「お前誰だって話ですけどね。古今亭今輔です。真打です。この会は二ツ目の会なので私は出ませんが、お世話をしています」だって。
遊かりさんによると、座布団を並べるのも真打の今輔師だったそうで。
ちなみに帰る際には、鯉八さんの兄弟子である瀧川鯉朝師もいた。打合せか打ち上げか。たぶん両方だろう。

トップバッターは三遊亭遊かりさん。キャリアの浅い熟女。7年だそうな。
女流落語家は東西併せて50人。イリオモテヤマネコより少ない。
落語界の小池百合子ですと。客の婆さんが、「似てるわねえ」って言ってた。
都知事の名前を出す前に、誰かに似ているのですと振って客全員が気づくぐらいよく似ている。
以前聴いた、婿探しのマクラ。ヒザ立ちしてお客を見回す。
遊かりさん、語りのリズムもよく、すごく上手い人だと思う。
だが、聴いたことのあるマクラを二度聴いて、やっぱり客が楽しいという領域にはまだ到達していない。
あれはいったい、どういう技術なんでしょうな。
最近たびたび考えているのだが、語る演者が話に飽きていないという以外、技術面についてはよくわからない。
内容にではなく話術に惹かれるのだということはわかるのだが、その話術とは何なのか、だ。でも今度書く。

そして、師匠(遊雀)譲りの「堪忍袋」へ。
笑福亭鶴瓶師から三遊亭竜楽師に伝わり、そこからさらに遊雀師と金原亭世之介師に伝わったという、東西四派を横断する演目。
先日、浅草お茶の間寄席で世之介師の堪忍袋が聴けて嬉しかった。
遊かりさん、師匠に教わったであろうこの噺を、師匠の型でやる。遊かりさんは師匠リスペクトが強そうだ。
師匠と同じ型でやることの是非はあるだろうが、性別の違いがあるので、まんま真似してしまっても悪いことだとは思わない。
この、師匠の型をやり切ろうとしてやり切れていない部分に、遊かりさん独自の魅力と、そして遊雀師の偉大さの両方を感じてしまった。
遊雀師の型は、恐ろしく難易度が高いものだということが、遊かりさんのおかげで改めてよくわかった。
所作と、セリフを発するタイミングのすべてを計算し尽くした総合芸術である。
これもまた、師匠の高座を別途取り上げるつもり。

遊雀師は、おかみさんの声を亭主よりさらに低く出すという、すごい技を持っている。
遊かりさんは、おかみさんの声を若干高く(地声で)発していた。どうせ師匠の型で行くなら、これも真似て欲しかったと思ったが。
持ち時間は30分のはずで、途中で切るかと思ったらサゲまで。
一般的なサゲでは、堪忍袋から飛び出た悪口雑言が飛び散るのであるが、変化球。
鶴瓶師のものはわからないのだが、竜楽師から伝わったとおりの楽しいサゲ。

落語は、感性をフルに使って聴くのが楽しいもの。
それはわかっているのだが、たまに感性を広げながら、そこに理屈をぶっつけることで、思わぬ楽しさを得られることがある。
いずれ遊かりさんも、師匠の型をマスターした上であえて違う道を行く日が来るのでしょう。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。