緑助 / 花見小僧
吉緑 / 鈴ヶ森
(仲入り)
花ごめ / 佐々木政談
ワンコイン寄席を聴いた神田連雀亭、その昼席は、「風子」「遊かり」「小はぜ」「吉笑」というなかなか粒揃いの番組だった。
ワンコインから昼席に居続ける方法もあったろうが、予定通りらくごカフェへハシゴ。
雨の中、靖国通りをひと駅(都営新宿線小川町から神保町)歩く。
一度この付近から、鍋屋横丁を抜けて堀の内のお祖師さままで、歩いてみたいものだと思っている。
つまり、「堀の内」の八っつぁんを再現するのだ。間違って浅草まで行く気はないが。
らくごカフェからだと、お祖師さままで徒歩で2時間15分だそうな。
開演まで1時間半空いているので、書泉グランデで少々時間を潰す。
柳家喬太郎師の新刊が出ていた。
らくごカフェは、毎月1回の、柳家花緑弟子の会。メンバーは毎回異なるが、3人出る。
1時間半で500円なので、連雀亭の昼席(1,000円)よりパフォーマンスがいいわけだ。セコい?
でも仲入り時に、300円のコーヒーを頼むのであった。一応カフェなので。
この日のメンバー、大好きだというところまでは行かないにしても、全員に好感を持っている。
吉緑さんなんて2席聴いて、どちらもイマイチだったのに好感を持っている。
3人とも神田連雀亭のメンバーでもあり、そちらでも聴いた。
そもそも、花緑一門の全員が好きだ。外れのいない、すばらしい一門。
落語界、他にも育成の見事な師匠はいるが、外れの噺家もいるのがごく普通。
この点が花緑師はすごい。
弟子の数が多いのに外れがないという師匠、他には春風亭一朝師ぐらいしかいないと思う。
開口一番は柳家緑助さん。
以前連雀亭で聴いたときは志らく師に似ている(顔だけ)ように思ったが、今回から、まったくそう思わなくなった。
髪型が変わったのが大きいが、柳楽優弥のほうにずっとよく似ている。たぶん言われてるだろう。
この人は、客の下からスッと入ってきて客を持ちあげ、見事に空気を作ってしまう。
立ち合いからかち上げかますような見事な技術。
寒くなってきたが、最近はヒートテックというものがあって、ベテラン師匠方もこれを愛用している。
ある師匠が、「シートテック」と言っている。あ、ヒートテックですねと訊き返す緑助さんに、「俺は江戸っ子だからシートテック」。
そこに別の師匠。「本物の江戸っ子はシートテック着ねえよ」。
「これから花見小僧をやります」。おお。
おせつ徳三郎の前半。珍しめの噺だが、最近よく聴く気がする。
だが掛けるにあたって緑助さんにひとつ問題が。師匠に上げてもらってないんですと。
だから、SNSで緑助は花見小僧やったって書かないでください。どうしても書くときは「真田小僧」って書いておいてくださいだって。
私のはブログなので、狭義のSNSに含まれないということでイイッスか。ダメですか。
もう書いてしまった。
その、アゲてもらっていない長講・花見小僧は、実に見事な一席。
柳家の人らしく、小僧の定吉が実に可愛らしい。
この噺、回想シーンのみに出てくる婆やなどカリカチュアする余地がある。実際、古今亭菊志ん師のものは、婆やと徳三郎を徹底的にいじっていて爆笑だった。
だがそういう落語ではなく、端正だ。
定吉が、割と単純な(純真ではなかろうが)子供の造型。芯が可愛いのである。
そして、セリフ回し以外の間が絶妙。表情だけでもって、主人に追い詰められた定吉の心理を描き切ってしまう。
回想シーンの徳三郎はほとんど口を開かない。この後刀屋に続くとして、このキャラはどう変わるだろう。
古くからある型を踏襲している緑助さんにケチを付ける気はないが、旦那が察しが悪すぎる点だけはどうも気に入らない。
それはそれで面白いのだけど、大家の旦那がそんなに察しが悪いはずないだろうと思う。
五街道雲助師は、あまり察しが悪い造型にしておらず、旦那らしく鷹揚で見事だった。
それはそうと、番頭が旦那に(他に誰もいないのに)、娘おせつのことを耳打ちする場面などは緑助さん、実に上手い。