神田連雀亭ワンコイン寄席26(下・三遊亭らっ好「弥次郎」)

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三遊亭らっ好さんは、「天ぷらの揚げ終わりみたいな拍手ありがとうございます」と登場。
そう聴こえたの?

先に出たふたりは落語協会だから、寄席に出られる。
われわれ円楽党は、山手線の外、両国でやっています。
昔喧嘩したお爺さんたちのおかげでそうなってますだって。
両国寄席は、特殊な環境です。国技館に行く人はいますが、その反対側なんでなかなかお客さんの足が向かないんです。
墓石みたいな台の上でやるんですよ。緋毛氈でも掛かっていればいいんですけど。
そして、客席の真ん中に柱があるんです。柱のお陰で30人分ぐらいの席が無駄になってます。

墓石には笑った。確かにそんな環境だものな。
色物さんの出番の際は、その墓石を後ろに片付けるのだ。
そのお江戸両国亭、私はたまに行く。結構いいところだと思う。
柱についてはどうしようもない。

そんな中で、お客さん2人の前で最近やりましたと。途中で一人入ってきたものの、「あ、間違えた」と言って出ていった。
さすがにこれは嘘だ。両国の場合、客席に音が漏れないよう、締め切ったテケツで料金払ってから入場するから、間違えて出ていきようがない。
冗談に突っ込むのは野暮だが、そもそも両国でそんな少ない人数あるのかね?
もっとも私も、人気のない師匠のトリを聴きにはいかないので知らないだけかもしれない。
客は、大混雑の席に出かけた人のほうが、一桁前半に出くわした人よりずっと多いのだ。
落語協会の人なら池袋をネタにするけど、空いている池袋も私は2回しか経験していない。
だからギャグが全然ピンと来なかったりする。

あとは故郷・長崎での投資信託のイベントに呼ばれる自虐ネタ。
「面白いことを言ってくれ」と無茶振りされるので謎掛けを披露したのに、司会者に「それはどういうことですか?」

楽しいマクラから、嘘つきの噺「弥次郎」へ。
もともとこの人のファンになったきっかけは、この連雀亭のトリで掛けた「明烏」だった。
大ネタと比べると、違うにもほどがあるな。
トリで弥次郎掛けるのを初めて聴いた。円楽党の寄席でだって、前座からしか聴いたことがない噺。
でも、らっ好さんは「道灌」「子ほめ」「つる」など前座噺が実に上手い人。
それらに毎回感心させられているので、弥次郎もいいじゃないかと思う。
小もんさんが大きめのネタを掛けたから、バランスを取ろうということかな?
確かに、時計を見ると残り時間が20分なかった。

ただし聴いたことのないタイプの弥次郎。
楽しい嘘つきが来てくれたと喜ぶ隠居が多い気がする。
らっ好さんの場合、用事があってきたわけではないらしい弥次さんが、隠居にお前さんは「嘘つき弥次郎」って呼ばれてるねと言われてる。
そして、嘘つきの舞台は、火事が凍る北海道ではない。
通常、北海道を後にした弥次郎は次に津軽海峡を渡って恐山に向かい、猪と闘う。
だが、らっ好さんの舞台は、木曽の山中だ。
木曽山中で、山賊と闘い、猪と闘うのである。あとは一緒だが。

キンをつかんで猪を退治したのに、腹から子イノシシが湧いて出るのが楽しいポイント。
客に「あれ?」と思わせておいて、いったんそのまま進むところが楽しい。
隠居にオスかメスか、どっちだと言われて、「そこが畜生の浅ましさ」は入らない。
聴いたことのない楽しいサゲが入っていた。弥次さん、木曽から空を飛んで、隠居のところまでやってきたらしい。

それにしても、この人は男二人の会話から楽しさを引き出すのが本当に上手い。
前座噺が上手いわけだ。隠居はわりと冷静にウソ噺を聴いているのだけど、でもとても楽しそうだ。

平和な人間関係が描かれて、楽しい一席でした。
終わると、小もんさんはすでにいなくて、昼席のメンバー、風子さんと小はぜさんが出てきていて、見送ってくれた。
私はらくごカフェの「柳家花緑弟子の会」に向かいます。

 

作成者: でっち定吉

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