アニメ「昭和元禄落語心中」の落語/第二話

アニメ「昭和元禄落語心中」第二話に出てくる落語につきいろいろ書いてみます。

野ざらし

のちの助六、子供時代の信さんが弟子入りを賭け、七代目八雲師匠の前で一席やってみる。 なんでも、

  • 明烏
  • よかちょろ
  • 船徳
  • 芝浜
  • らくだ
  • 文七元結

もできると大見えを切った。師匠も、「大ネタばかりじゃねえか」と苦笑している。 廓話やら死人の噺やら、すごいレパートリー。

信さん、寄席で聞き覚えたとおりに野ざらしを「サイサイ節」まで披露する。 親に実質捨てられ沈んでいた、のちの八代目八雲師匠をこれで笑わせた。 信さんの声をあてているのは、立川流の女流、立川こはるさんで、さすがに巧いしきっぷもいい。

「湯屋番」と同じく、ひとり妄想爆裂噺。 八っつぁんの妄想を爆走させておき、そのまわりで冷静に面白がっている釣り師たちの対比を打ち出すという、「サイサイ節」がなくても随分難しそうな噺だ。

子ほめ

のちの八代目八雲、菊比古の初口座の演目。 端正だが陰気な高座で、まるでウケず菊比古本人も落ち込んだ。 まあ、初高座はそんなものでしょうよ。

「子ほめ」は前座噺だが、前座が掛けてなければ、名のある師匠でも寄席でよくやる噺。 鉄板でウケる、いわゆる「儲かる噺」だ。

時そば

のちの助六、初太郎の初高座。 テンポよく勢いよく、菊比古のあとの沈んだ客席をたちまち沸かせる。落ち込んだ菊比古まで笑わせる。
声優は山寺宏一に替わっている。いい調子ですね。 初高座のくせに開口一番「よく来たなあー」。 この元ネタは、先代鈴々舎馬風のようです。

「時そば」は落語の代表といえる噺のひとつ。
物語の舞台である戦前では知らないが、現代では前座がやる噺ではない。
上方の「時うどん」ならともかく、東京の時そばのスタイル、前座にとっては仕込みが長くて辛いのではないかな。
それでも基本的に1対1の会話であり、「オウム返し」もある。噺家の鍛錬にはもってこいで、前座噺の特色を十分に持っているように思うのだけど。
基本的に「冬の噺」だという縛りがあるからかも。
とはいえ、物語の中で初太郎は夏にやってますね。

第三話に続く

作成者: でっち定吉

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