六代目笑福亭松鶴「狸茶屋」(上)

誰に頼まれたわけでもないのに毎日更新、でっち定吉らくご日常です。
Yahoo!ブログのときと比べて、日々のアクセスが減ったわけではないけども、検索でのヒットが減ってしまったのは残念。
Yahooのときは、「落語 ブログ」の検索で1ページ目に載っていたことがあったんですけどもね。
逆にいうと、検索に引っかかっていたのは、決して自分の力ではなかったわけだ。
まあ、また頑張っていきましょう。

ネタが切れたときはTV・ラジオの落語に頼る。
落語協会の九州・沖縄遠征で休んだ春風亭一之輔師の代打で「あなたとハッピー」のパーソナリティを務めた柳家わさびさん、やたら面白かったのだが、一日分のブログのネタにまではならない。

急逝した、桂三金師の「おおもり高校修学旅行」が、先週のABCラジオ、「日曜落語なみはや亭」で流れていた。
すでに一度、つい最近同じ番組で聴いた新作落語なのだが、追悼で再度流れたのである。
しかし、恐らく太り過ぎが原因で亡くなった人の、デブをテーマにした新作落語を聴くのはなかなか辛いものがありました。面白くはあったけど。
この三金師もゲスト出演していたのだが、「東京デブサミット」所属の噺家の方々も、健康にはくれぐれも気を付けてください。
二ツ目の林家扇兵衛さんがマクラで語っていたデブサミットの打ち上げは、食べ物が肉だらけで、緑色をしたものがほとんどないんだそうだ。
最後は炭水化物で締める。
長生きするのも芸のうち(by黒門町)。野菜も食べましょう。

野球のシーズンオフに掛かる、東京の「らんまんラジオ寄席」もそうだが、なみはや亭も公開録音と昔の音源とを交互に流す。
昨日のなみはや亭では、六代目笑福亭松鶴の「狸茶屋」という珍しい廓噺が出ていた。
これをちょっと取り上げてみます。

上方は遊びというとお茶屋が多いのであるが、廓(というほど上品な場所ではないが)の噺もあるのだな。
東京は廓噺が多いけども、そんなによく聴けるわけではない。
「明烏」「幾代餅」のようなメジャーな噺はごく一部。
多くの噺は、禁止されてなどいないのに滅びかけている。まあ、廓がないのだもの、仕方ないと思う。
噺家は噺を仕入れて客に買ってもらう商売だが、商売になりにくい噺は仕入れない。
そもそも、噺家自体、廓噺にいつまで興味を持っているだろうか。

「五人廻し」や「お見立て」、「錦の袈裟」あたりは、まあいい。そこそこ掛かる。
あとは「三枚起請」「辰巳の辻占」「文違い」など。大ネタだと「品川心中」とか「居残り佐平次」。
「お直し」「磯の鮑」「徳ちゃん」「木乃伊取り」「羽織の遊び」「突落し」「首ったけ」など、たまに掛かる噺にも楽しいのがあるのだが。
「坊主の遊び」や「三助の遊び」などになると、まあそうそう出番がない。

客から「待ってました、六代目、たっぷり」と、松鶴に声が掛かっている。当時の松鶴は、上方落語協会会長。
狸茶屋という噺は、まったく聴いたことがない。というか、存在すら知らなかった。
松鶴は、録音をしている「1080分落語会」という会のマクラで、若手の「きん枝」くんが「狸賽」を掛けたので、自分もたぬきの噺を掛けることにしたと述べている。
ごく普通には、たぬきの噺が先に出たなら、ツくからやらないところだがな。
最近小文枝を襲名した、きん枝師が若手という時代である。
そして面白いことに、「たぬさいという、えらく古い噺」と松鶴語っている。
まあ、古い噺には違いなかろうが。当時そんなに出なかったのでしょうか。
今、上方で「狸賽」が果たしてどれだけ掛かるのか、私は知らない。

若手は頭の毛が長いのが多くて、気持ち悪いと語る松鶴。
頭を清潔にしているのがわれわれ古手ですだって。まあ、こういう価値観は今でも十分あるだろう。
ただし若手でも小米みたいなのは、私らより髪が薄いだって。のちの枝雀のことである。

たぬきは人を騙すが、人間でも騙すのを商売にしている人がいる。公然と騙す看板を上げて商売していた人たちが。
昔の遊びについて。1円あったら結構に遊べた時代の話。
新町は格が高いが、若い松鶴たちが行ったのは松島、飛田という格下の遊び場。騙されるのを承知で遊びに行くのが楽しかったのだという。
いっぺんも行ったことのない店の前で「おばはん」が、「あの子が待ってるし」と声を掛ける。
客はすでに騙されているのだ。

続きます。

作成者: でっち定吉

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