2019M-1グランプリ(上)

THE MANZAI程度なら見逃しても平気なのだが、M-1グランプリは見逃さない。
ここ2年、年々盛り上がるこのイベントにつきなにかしら書いているのだけど、今までは「落語との関連」で語るという縛りを自分に課していた。
今年はもう落語基準ではない。純粋に漫才目線で。
それによく考えると、私も日頃から漫才を聴く機会が、数年前と比べてあきらかに増えている。
これはナイツのおかげ。

今年、落語との接点に基づいては書くことがない。立川志らくが大人しかったから。
落語界の恥をさらすような言動はして欲しくないから望み通りだけど、これだけ大人しくしていたら、来年呼ばれる意味がまったくなさそう。
どうなんでしょう。
まさか、嫌いな司会者の2位に輝いて、こたえているわけじゃなかろうが、でも案外そんな理由かもしれない。
過去たびたび書いているのだが、この人は悪役として世間で話題になっていてそれでいいのに、本人は世間から愛されたくて仕方ないかまってちゃんなのだ。
昨年は、終わってすぐ来年も頼まれたと自慢げにツイートしていた。今年はしていない。
来年の審査員入れ替えに期待。

いっぽう、審査員席からひとり芝居を魅せていたのが上沼恵美子。
これ、嫌がる人がたくさんいるなと思ういっぽうで、私にはとても面白かった。
エミちゃんには、若手を踏み台にして自分が輝こうという、さもしい根性はないのだ。
ただ、結果的にエミちゃんが大人気の和牛を落としてしまった恰好で、しばらく物議をかもしそうだ。
でも、確かに和牛は王者の闘い方である。必死さがないという見解は、理解はできる。

私、丁稚定吉も、審査員気分を味わってみようと、今年は点数付けながら視た。
やってみるとよくわかる。点数付けるのはすごく難しい。
1人目の点数に最後まで引っ張られるし。
このコンビにこれだけ付けたということは、こちらはこれより下でないといけないが、でも差が1点しか付けられないとか。
そして、後から相対的に調整することもできない。NHKの新人大賞ならできるが。
松ちゃんが、「見取り図」の審査のときにこの難しさを語っていた。相対評価で上下を決めてから点数に反映させようとすると、付けられる点数が残っていないのだと。
自分で付けてみて、言っている意味がよくわかった。
あそこに座るのは実にもって大変なこと。
やってみると、審査員たちの評価と私の数字、ずいぶんと食い違う点があった。
個人の好き嫌いはあったってもちろんいいのだけど、世間の思いとズレすぎるようだと、審査は務まらないなと思う。
落語縛りをやめた今年は、全員に触れてみます。私の世間とズレた評価も載せてみる。
「漫才なんて俺はわかってるぜ」という上目線にならないように気を付けて。

《ニューヨーク》丁稚採点85点(8位)/結果:10位

一組目、ニューヨークはよくわからなかった。
わからないまま基準として点数を付け、これにずっと引っ張られた。
松ちゃんは、ボケと一緒に笑い気味のツッコミは好きじゃないんだそうだ。
ちゃんと怒るツッコミが好みだと。ふーん。
私はそうじゃない。
私は緩いのが好きなのだ。落語の隠居のような。
でも、松ちゃんが言いたいのは、あくまでもニューヨークに対し、「もっとツッコミは仕事をしろ」ということだと思う。
「ピン芸と解説」みたいで、ツッコミの仕事が目に見えていない感がある。
でも、これはツッコミだけの問題じゃない。ツッコミをちゃんと絡ませていないネタ作りがいけないのだ。
サンドウィッチマンのネタ作りにTVで密着していた際、「どうしてもツッコミたい」セリフを台本に加えるやり方を見たときは驚愕したが、でもよく考えたら当たり前のことだよな。

《かまいたち》丁稚採点84点(9位)/結果:2位(総合準優勝)

かまいたちはUFJ ≠ USJネタ。
このコンビのことは決して嫌いじゃないのだけど、このネタはなんだかイヤ。
知ってるネタだからということでなく、とてもイヤ。なんでイヤなのかよくわからないので気持ち悪い。
ひとつには、しつこい。生理的なもの。
それはあくまでもネタ選択に関する好き嫌いのレベル。
だが、コンテストでもって客いじりをしていたのは反則だと思う。審査員、誰も指摘しなかったけど。
ナイツ塙が和牛の審査の際にかまいたちに触れ、知っているネタだと言ったのは、ナイツの番組で披露したからだ。
最終2位のネタに、私は最低点を付けてしまった。
審査員を務めるのは大変だとこういうところで実感。
オール巨人師匠が、各出場者の漫才を徹底的に調べてから挑むというが、その方法論はわかる気がする。
そうしないと、吉本、それも西の芸人だけが頭に入ってしまうからだろう。納得いく審査と客観的な視点維持のためには、審査員にも努力が必要なのだ。

《和牛》丁稚採点94点(1位)/結果:4位

敗者復活戦は、3分の2ぐらいWebで先に視た。
私が入れたのは、和牛はもちろんとして、四千頭身(3位)と、カミナリ。
カミナリ6位だって。水回りのネタ面白かったけど。

和牛は、敗者復活戦と同じネタ。決勝に勝負ネタを残しておいたのだろう。残したネタが先に見たかった。
でも楽しい。
しかし、和牛もまた、しっかり怒っているツッコミじゃないよねと松ちゃん発言をいぶかしく思う。
もともとの大ボケに、だんだんツッコミが追いついてきてともにクレージーさを競う。
巨人師匠が、川西くんのツッコミにいつものボキャブラリーの豊富さが見られないとコメントしていたのは見事だ。
最後の最後で落ちてしまうとは。
「敗者復活から優勝」という、劇的なシーンは絵になりそうだが、陳腐でもある。
飄々とした彼らには似つかわしくないということなのでしょう。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。