2019M-1グランプリ(中)

《すゑひろがりず》丁稚採点92点(3位)/結果:8位

すゑひろがりずは初めて観るが、こういうのは私の大好物。
ジングルとして鼓を打つことで、客を安心させてくれる。
「蝦夷芋焚き火飯味=サッポロポテトバーベキュー味」わかったぜ。
もっとも、M-1で勝ち抜けられるはずはない。もちろん、そういう芸じゃない。
この大会じゃなくて、東京の寄席向きの芸ですな。太神楽のように毎日出て、毎日同じようなことをしても価値の落ちない芸。
東京吉本所属だそうだが、色物が芸協に比べて手薄な落語協会入りしないかなあ。
初席に出たら客は喜ぶだろう。初席以外でも、落語の合間に出てきてくれたら実に楽しい。
すでに夫婦コンビの「おしどり」が、吉本所属で落語協会入りしている。前例がないわけではない。

《からし蓮根》丁稚採点91点(5位)/結果:6位

からし蓮根は後半に向けて盛り上がっていく構成が素晴らしい。
最後悪口雑言を放つ教官に、クルマをぶつけるギャグがあまりにも面白くて、最後2点プラスした。
技術的には文句ないのだろうけど、ボケる方法論がもうちょっとなにかありそうな気がするのだが。淡々としているのはいいとしても。
松ちゃんの「ツッコミが怖い」はよくわからない。ギャグなんだろうけど、
教官が悪態をつくのは、その後のフリだから必要だし。

《見取り図》丁稚採点93点(2位)/結果:5位

見取り図は昨年より圧倒的に面白かった。
こういうネタづくりって他にないな。
「熱中症の櫻井翔」がウケた。
「ダンサーの綱吉」というスルーしてしまう謎のワードを出しておいて、最後に回収するのがすごい。
一席終わった後で「笑神籤でいい順番引いてくれてありがとう」「俺、堀江選手ちゃうねん」というとっておきのやり取りを残しておいたのもすごい。
舞台以外の場面でウケも獲らないといけないから大変だ。

《ミルクボーイ》丁稚採点90点(7位)/結果:1位(総合優勝)

ミルクボーイはコーンフレークだけで1本ネタをやり切ったのに驚愕。
昭和っぽいという形容が先に出ていたが、ツッコミは入念に説明しておこなう、今風のもの。
本当は突っ込んではいない。Wボケである。
昭和にはないスタイルだと思うけどな。
私も大笑いしたし十分に面白かったのだが、過去最高点を叩き出してトップに踊り出たのまでは、まったく意味がわからなかった。
素人よりも、プロウケするみたい。
素人の私だって、十分楽しみ、十分に高い評価をしたのだ。点数がさらに上に行ってしまい釈然としないというのは、初めての経験。
ともかく、サンドウィッチマン富澤の、「おじさんが二人、コーンフレークだコーンフレークじゃないって言ってるだけ」という、嬉しそうなコメントがすべてを物語っている。

《オズワルド》丁稚採点92点(3位)/結果:7位

初めて観るオズワルドは、おぎやはぎみたいな芸。
ボケとツッコミの区別はあまりなくて、どちらもちょっとボケているという。
関西のお笑いファンにもっとも嫌われるタイプの芸。私は好きだ。
ミルクボーイは好きだがオズワルドは嫌いというのは論理的でない。
もっとも最初から、優勝を狙えるタイプの笑いではないと思うけど。
中川家礼二が、彼らのことを好きなのは感覚的によくわかる。だけど、エミちゃんも同じ点数を付けていたたのはかなり意外。

《インディアンス》丁稚採点91点(5位)/結果:9位

インディアンスはとても面白いが、点数が低いのもいっぽうでよくわかる。
テンポが速すぎて、ギャグの手駒が多過ぎて、くたびれてしまうのだ。
そういえば東京漫才の新宿カウボーイが似た雰囲気だが、あちらのほうがずっと疲れないと思う。
中川家礼二が、作り込むのは素晴らしいが、ボケに地の部分が欲しいとコメントしていたのはさすがプロ目線。

《ぺこぱ》丁稚採点84点(9位)/結果:3位(総合3位)

最後のぺこぱは、なんだかジャニーズタレントが冠番組でもってコントを披露するときのようなネタだなと思った。
でも、構成作家たちが頑張ってキャラ付けをした結果の、ジャニタレがやったほうが面白んじゃないかと。
ただ、いきなり横を向いた相方に合わせて、「正面変わったのかな」というネタは面白かった。こういうのもプロが笑うのだろう。
やはり礼二さんのいうとおり、ボケのキャラができあがっていないのはすごく気になる。
私は最低点を付けたが高得点で、和牛を抜いて最終決戦進出で実に意外。
エミちゃんが、和牛を落とすために後半高得点を重ねたと理解しているファンが多いようだが、その気持ちはわからなくもない。まあ、ぐだぐた言い続けるのはどうかと思うが。

私が最低点を付けた2組が最終決戦進出という結果。
この時点で、私の審査員としての適性のなさがすでに表れる。
ところで私は自己の主観でもって「採点がおかしい!」などと憤ることは一切ない。好きな和牛が落ちていくさまも、淡々と眺めている。
M-1に限らないが、コンテストで誰かへの応援が強すぎて、客観的な視線を失ってしまうと楽しくない。
この後実際、最終決戦で大いに驚嘆させられた。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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