春風亭一之輔師のラジオ、ニッポン放送の「あなたとハッピー」(金曜)は相変わらずとても面白いのだけど、日曜早朝に全国ネットしている「Sunday Flickers」は最近イマイチだなと思っていた。
当ブログでもいろいろ小出しにして愚痴っているところなので、イマイチな理由は繰り返さない。
だが、息子が部活で早起きするためついでに起こされた日曜日、久し振りに生放送で聴いてみた。
東京ではオンエアしていないが、私はradikoプレミアムの会員だ。
途中から聴きだしたのだが、一之輔師がなぜか東北弁を喋っている。
本物の東北弁ではなくて、落語に出てくる標準方言である。飯炊きの権助やら、大酒飲みの久造(試し酒)やら、田舎から出てきた人、あるいは松山鏡とか蒟蒻問答とか、田舎が舞台の落語で使われることば。
状況がようやく飲み込めると、田舎館野田雄というキャラクターらしい。
知らないのだが、再登場だそうな。
田舎館は、青森県の村でいなかだてと読む。
昔競馬ファンだった私、JRAとともに岩手競馬の場外が置かれたこの地名はたまたま知っている。現在は田んぼアートで有名。
野田はもちろん、一之輔師の出身地である。チーバくんの鼻先にある、醤油に浸かった地。
本来の一之輔師は一切出てこず、青森から臨時にやってきた78歳のお爺さん、田舎館野田雄氏が冒頭からおしまいまですべて喋る。
一之輔師は年始から多忙で、家族を置いて逐電したんだって。
すごいのは、番組中の落語コーナー(落語ショートオンショート)まで、田舎館野田雄が喋る。寝床の第2回なのに。
このコーナーを編集して一本の落語を作っているマニアがいたら、真ん中だけことばが違うのだもの、嫌だろうなあ。
全国のフェスティバルを紹介する、「街フェス On Sunday」のインタビューも田舎館氏が担当。
やたら面白かったので、生放送が終わってから、改めて冒頭から聴き直した。
田舎館氏、キャラは一之輔師のままでふてぶてしい。アシスタントがまだ喋っているのに遠慮せずおっかぶせていく。
上から笑われる田舎者キャラではないので、これを聴いて不快になる東北人というのはいないのではないか。むしろ喜んでいそうな田舎館氏は、老人だがPayPayを使って地元の「マインマート」で買い物しているらしい。あそこの娘は出戻りなんだって。
マインマートというチョイスに爆笑したのだが、調べてみたら東北にマインマートはない(調べるなよ)。
ラジオの放送から噺家、春風亭一之輔のすごさを改めて思い知る。
もともと師は、落語に田舎者を登場させる際、セリフを覚えてそこだけ田舎者になるような噺の作り方をしていないのだ。
権助が出てくる場面では、師が権助として自由にものを喋る。だからもともと、アドリブにも強いのだ。
本業でそのような喋り方をしている人だから、1時間半別キャラがしゃべり続けることなど、なんでもないらしい。
標準方言の喋り方自体は、実はそんなに難しくもないようだ。これだけ守ればそれっぽくなる。
- すべて鼻に掛ける
- 母音を減らし、「イ」と「ウ」を区別しない
- アクセントを抑え、特に語尾を平板に
すべて鼻に掛ける喋り方、「鼻濁音」と共通している部分もある。
まあ、江戸っ子の鼻濁音は「ガ行」だけだけど。
番組アシスタントは相変わらずものを知らない。もちろん急に賢くなるはずはないから仕方ない。
この日の放送でも、「浜村淳」も、慣用句の「知らぬ顔の半兵衛」も知らない。ラジオやってる人が、浜村淳知らないでいいのだろうか。
この人がものを知らなすぎて、一之輔師がイラッとしているのがリスナーにも伝わってしまっていたのだが、田舎館氏に変わっただけで、とてもあたりが柔らかくなる。
今後もずっと、一之輔師に替わって田舎館氏が出ればいいのに。
ちなみに、田舎館野田雄氏、先日のM-1についても触れていて、ぺこぱの優しいツッコミを褒めていた。
私の想像では、今年のM-1は一之輔師が志らくに替わって審査員を務めることになっている。
すでに話があって、今から一之輔師は一生懸命漫才をチェックしているに違いない。
radikoプレミアムに入れば全国で聴けるので、ぜひ田舎館野田雄のラジオを聴いてみてください。
今日までしか再生できない地域が多いようだが。
オンエア地域の人なら、JFN PARKからも聴けるようだ。