1998年のNHK新人演芸大賞

仕事をしながらYou Tubeを聴きっぱなしにしていることもたまにある。
落語はあまり聴かない。落語については、録画のコレクションを多く持っているという理由もあるが、You Tubeの落語はみな聴いてしまったかもしれない。
最近は、ミルクボーイの漫才と、和牛のラジオを聴いていた。まあ、これらもいずれ聴き尽くす。
その流れで、なぜか1998年のNHK新人演芸大賞の動画が表示された。ありがたく視せてもらった。
NHKの「ごごナマ」に喬太郎師出たとき、この映像が一部放映されたが、すべてを視たのは初めて。
当時は、漫才等の演芸と、落語とをまとめて一緒に収録し、一緒に放映していた。表彰はそれぞれ別個。
メンバーは次の通り。

《演芸の部》

  • ラーメンズ
  • ワンダラーズ
  • ギャオス
  • ルート33
  • 003MANIA(優勝)
  • エレキグラム

《落語の部》

  • 林家彦いち
  • 立川生志
  • 桂三風
  • 桂吉弥
  • 柳家喬太郎(優勝)

アップしてくれた人、「柳屋喬太郎」って書いてる。噺家あるある。
名作「午後の保健室」で優勝した喬太郎師は、このおかげで2年後に抜擢真打となった。
司会は、1989年に優秀賞、つまり準優勝だった春風亭昇太師。
この1998年も、その後も準優勝表彰はなくなっている。

演芸の部の出場者、ラーメンズを除いて誰も知らないので驚いた。
私の、お笑いに対する空白時期だったのもあるが、それにしても。
エレキグラムのひとりは、現在のフットボールアワー後藤なのだけど。
まあ、落語のほうだって空白期だったし。寄席に行くようになったのはこの数年後からだ。
でも、ラーメンズが「お笑い」の領域から離れていった原因は、そんなところにあるのではなかろうかなんて思う。
そして、ラーメンズ以外びっくりするほど面白くなくて、またも驚いた。
だからといって当時視ていたとして、そんなにつまらないとは思わないだろう。お笑いは、進化し続けているのだということがよくわかる。
松ちゃんが昨年末のM-1グランプリの審査員をして、「スカイツリーができたときの東京タワーの心境」と言っていたが。

落語のほうは、現在の新人落語大賞と、レベルは変わっていない。
喬太郎師と同じ大会に、同期の彦いち師が出ていたとは知らなかったので驚いた。
司会を含めて、その後のSWAメンバーが3人いたことになる。
生志師、吉弥師も高いレベルで活躍中。三風師だけ知らないが。

彦いち師は「何があったんだ」というタイトルの新作落語。
この噺はまったく知らないので、その後棄てたのだろう。
師匠・木久蔵(当時)が酔っ払って記憶をなくすネタをマクラに振る。
ウケているが、現在の気合に充ちた彦いち師とはだいぶ喋り方が違う。結構せわしい語り。
それでも、若い彦いち師にも若いなりの魅力がある。
今こんな若手がいたら、私はかなりの高評価を付けることは間違いない。
演技が自然なのがとてもいい。
彦いち師、SWAの中ではやや人気が下であり、SWA解散の頃から徐々に新作落語界での地位を上げていった人だと認識していた。だが、実はSWAの前から達者な人だったのだな。
アドリブで、「ラーメンズみたい」などと入れてみせる余裕もある。
新作の作り方にも、今に通じるテイストが漂う。
酔って記憶を亡くした主人公が、昨日いったいなにがあったのかを知ろうとするが、なかなか明らかにならないところにサスペンスがある。

次の3人はこの演目。

  • 「初天神」生志
  • 「桃太郎」三風
  • 「軽業」吉弥

いずれも、賞を取るのにふさわしい演目じゃないと思うのだが。
まだキャリア3年なのに決勝に出た吉弥師、当時からすばらしい腕なのだが、古典芸能感丸出しの一席であった。
独演会じゃないんだから。

そして柳家喬太郎師は、やはり当時から圧倒的な力量。
マクラからやたらウケている。
客も、お笑いからずっと観てきてくたびれている頃だが、すっかりのめり込んでいるようだ。
一番最後という順序は、絶対的に有利というわけでもないだろうが、関係ない。
そしてさらにすごいことに、恐らく当時の視聴者の視点で見ても、一緒に放映された漫才・コントに笑いの量で勝っている。

午後の保健室は、落語において複数の登場人物を演じ分ける約束事自体をギャグにしてしまった、画期的な新作落語。
相当の落語マニアにして、ようやく思いつくワザだと思う。
当時のキョン師はもっぱら新作落語の人というイメージで見られていたろうが、新作だけやっても、こうはならないだろう。
だからといって古典の人の場合、登場人物によって「声を変える」ことはダメだとされるので、このアイディアには行きつかないだろうが。

今と違って審査の中身は不明であり、大賞受賞者の発表だけがおこなわれる。
表彰されて、自由に育ててくれた師匠のお陰ですと語るキョン師。
さらに楽屋前でのインタビューでは、この次はNHK日本の話芸でお会いしましょうと。
実際に喬太郎師、日本の話芸にはしばしば登場する。
この番組は、なぜかお爺さんでないと出られない。お爺さん以外で珍しく出ているのがキョン師。

三田落語会

作成者: でっち定吉

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