全国には噺家が900人近くいるという。東京だけで、550人だとか。
高座でこのように話す人は多い。そしてだいたい続けて、「そんなに必要ですか」。
ちなみに、実際に数えてこういう人は、ほとんどいないようだ。
以前、柳家花緑師がマクラで、実際に数えてみたって言ってたっけ。
私も一度数えてみるか。
2020年1月19日現在。
まず最大の人数を誇る、落語協会。
真打 :207人
二ツ目:65人
前座 :32人
合計 :304人
真打のすごい数。見事な逆ピラミッド。
落語を知らない人は、真打というのはよほど偉いのだろうと思いこむことがある。
もちろんすごい真打は多数いるのだが、「真打だからすごい」という関係性は、どこにもない。
辞めず、破門にならなければ誰でも真打になれる。
真打の中には、年配の人を中心に、実際にはもう寄席に出ていない人も多い。それでもたまにでも顔付けされるので、名前はかろうじて知っているという人も。
超ベテランでもないのに、一切お見かけしたことのない人もいる。本業が別にあるのだろう、きっと。
3月下席からは、真打がさらに5人増える。二ツ目が、前座から3人増えるので、2人減。
続いて落語芸術協会。
各カテゴリごとに人数が計上されていて助かる。ただ、後述の通り鵜呑みにできない点もある。
真打 :94人
二ツ目:46人
前座 :24人
合計 :164人
真打は落語協会の半分以下だが、その下の階層はほぼ同規模である。これは意外な発見だった。
5月に真打が3人増える。
ちなみにここに含めていないが、講談師が16人もいる。
寄席の顔付けにあたっては講談師も当然に含まれるから、落語協会と実質的な差はさらに埋まることになる。
講談師は、芸協と提携している日本講談協会のW所属。
少々不可解なことに、日本講談協会所属でない(師匠の死去に伴う移籍で退会している)日向ひまわり先生の名前は、講談のカテゴリにはなくて、「真打」のカテゴリに入っている(上の数字からは抜いた)。
唯一の「上方真打」カテゴリで所属している笑福亭鶴光師は含めていない。客員ではなく正会員だから本来含めるべきなのだが、上方落語協会のほうでカウントしたい。
三遊亭円楽師と、東北弁落語の六華亭遊花さんは客員なのでカウント外。
それから円楽党。
公式サイトが現在ないので、Wikipediaによる。
真打 :36人
二ツ目:17人
前座 :5人
合計 :58人
芸協の3分の1の規模である。亭号は、ひとり残らず「三遊亭」。
「林家」が増えることはついになかった。
今春、真打が2人増える。その後、一太郎という、円楽師の息子が二ツ目筆頭。
声優が本業で、落語ほとんどしていないのだが、普通に昇進するのだろうか?
他の団体の歴史を見ても、二ツ目時代からよそのジャンルに行ってしまった人というのは、故・桂小金治ぐらいではないかと思う。
前座がやたら少ないが大丈夫だろうか。
前座は、以下5人だけ。
- じゃんけん
- 西村
- じゅうべえ
- 楽べえ
- しゅりけん
どうりで最近いつ行っても、しゅりけんさんが前座を務めている。その分、上達が早い。
前座筆頭のじゃんけんさんが今度二ツ目に上がるはずだが。
でも、見習いらしい人を見ることもあるから、たぶん補充はできているのだろう。
じゅうべえさんはスウェーデン人で、よくメディアに取り上げられている。
関係ないが、噺家になりたい人は円楽党が狙い目だと思う。
そして立川流。同じくWikipediaで。
真打 :29人
二ツ目:19人
前座 :10人
合計 :58人
くしくも円楽党と同じ人数。
理事会もほぼ消滅し、団体の体を成さなくなっているらしい。
志らくの弟子前座降格事件なんていう、好き放題ができてしまうのもそんな組織ならではだ。
上方落語協会も数えてみた。
255人
結構大変だった。
公式でもWikipadiaでも、一門別に会員が出てくるのだが、故人・非会員も混じっているためである。
Excelに全部貼り付けてから、いろいろ抜いてなんとかまとめ上げた。
「上方落語家」というくくりだと、さらに東京の鶴光一門も含まれるし、上方落語協会非会員も含まれる。
東京・大阪の5団体に入っていない人も載せてみよう。名古屋とか。
Wikipediaの「落語家」の項には、「団体から独立してプロ活動を続ける者」の一覧がある。
ただし、「元落語家」といったほうが妥当な人も多いはず。寄席に出れず、まっとうな落語会も開けなければ、自称落語家と言われても仕方ない。
私の判断で以下の人が現役とする。
- 桂千朝
- 桂文我
- 桂まん我
- 桂南光
- 桂南天
- 桂雀々
- 桂優々
- 快楽亭ブラック
- 快楽亭ブラ坊
- 三遊亭はらしょう
- 雷門獅篭
- 雷門幸福
- 雷門福三
ブラ坊さんとはらしょうさん、優々さんは、神田連雀亭に出ている。
連雀亭の出演を失ったらどうするのだろうか。
細かい集計は終わった。
まず東京の噺家を全部足してみよう。次の通り。
587人
なんだ、600人近いじゃないか。
すごいですね。
ここに、上方落語協会の255人と、非所属の13人、それから芸協客員の六華亭遊花さんを足す。
日本の噺家の人数:856人
900人というのは多過ぎるが、850人といえばほぼ正確な数だということがわかりました。