配信に春風亭一之輔登場!初日は「初天神」

どこにも行けないので家で仕事をしているが、どうも不調。
落語に出かけることが、生活のリズムになっていたことに今さらながら気づく。

現在の落語界、動いているのは配信だけである。
若手は大変だろうなと思うので手助けしたい気持ちもある一方、有料のテレワーク落語会などひとつも視ていない。
寄席好きの私からすると、自宅でもって有料配信を、姿勢を正して聴く気にはなれなくて。
平常時なら、1,500円の落語会と1,000円の寄席とで行き先を迷うような貧乏人だし。

テレワーク落語に参加する気にならないのはもうひとつ、BSトゥエルビで延々やっていた、二ツ目が出るミッドナイト寄席の悪印象のせいもあるな。
日々、VTRコレクションを聴いているのだが、ミッドナイト寄席の録画はそうそう聴く気にならない。

そんな配信の世界に、春風亭一之輔師が現れた。文字通りの真打登場。
そして、無料である。これで価格破壊された若手が困ってやしないだろうか、そんなことをちょっと思う。
無料の一之輔を聴いた後で、二ツ目を有料で聴けるか?
一之輔師は、21日からの下席、鈴本演芸場で夜席のトリのはずだった。なので、律義にその時間帯に配信をしようという試み。
私はもちろん観せていただきます

話はそれる。
ネタ切れなので私は先日、実に6日間にわたって一之輔師の「千早ふる」を取り上げた。
これが、アクセス数が揃って低調。
さすがに、一席の落語をほじくろうとする試み、いい加減皆さまに飽きられ、うんざりされたのでしょう。
一之輔師にも、なんとなくお詫びしたい心境。

さて早速21日夜、You Tubeの一之輔チャンネルを開く。
結構、通信が切れ気味であった。音だけ出なくなったり。
なので翌日また聴いて頭の中でくっつける。うちの環境では、生は無理そうだ。
なんと1時間の一席。寄席のトリはこんなに長くありません。落語協会の場合は30分から35分というところ。

さすが一之輔だなと感服するのは、客の笑いが一切ないのに、それがほぼ気にならない点。
ドリフだってMr.ビーンだって、笑い屋あってなのに。
これぐらいの腕がないと、無観客で配信やっても意味ないのかもしれない。とにかく、大変な心臓の持ち主だ。
家族の話から、初日は初天神。
一之輔師、寄席の仲間からも「いつもマクラで子供の話をしている」と揶揄されている。
マクラでも、子供の話をするために芸人になったんじゃないですよと一之輔師。

先日、三遊亭丈二師がマクラで、客席でメモ取る人を批判していたのを紹介した。
一之輔師も、配信で同じ批判をする。
さらに、配信で生コメントはやめてくれと。
噺家で他にもメモ書き批判をする人はいるのだが、いっぽうで客も、やめない人は決してやめないね。
一之輔師、本音としては当ブログのような、噺家の演出についてどうこう言うものも嫌いなはず。でも、これを止めさせる根拠はまったくないので、私も続けるのだが。

初天神、かつてうちの息子が小学校低学年の頃、鈴本の親子寄席で聴いた思い出の演目。
ギャグたっぷりなのだけども、凧揚げのシーンで一瞬だけ親子の情愛が強く漂う。それがたまらなくて。
だがその後も、ときたま聴くとギャグがさらに進化している。
進化することを批判はしないのだが、あのときの初天神が最高だったなと思わないでもない。これは単なる好き嫌いに過ぎないのだが。

そして今回の初天神に、なんと凧揚げがない。団子屋の「ポチャ」のくだりから、なぜか大岡裁きのお白洲ものに替わってしまう。
途中、一之輔師が噺を中断し、解説を入れる。これはまさに、新作落語家のやり方。
初天神というおなじみの古典落語に、私が作った部分をくっつけたものですと。
ちなみに、「団子屋政談」っていうタイトルになるんだね。絵本も出ている。
面白かったが、変な噺。
初天神のくだりなく、いきなりお裁きの始まる新作にすればよかったんじゃないかなんて思った。でも、こういう古典落語の後日談なんてのも、SWAの人たちが結構やっているものである。

6日間続けた不評の記事でもって、私は一之輔師こそ新作落語家の系譜に位置していると結論付けたところである。
ちゃんとした新作もっとやればいいのになとますます思った次第。
いや、ちゃんとしてないところが持ち味になりそうだけど。

いずれにしても10日間一之輔師の配信が聴けるので、今後もネタにさせていただきます。

作成者: でっち定吉

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