落語について毎日書いてる当ブログ、ついにネタ切れでトチ狂ったのでしょうか。
いずれトチ狂うかもしれないが、今のところかろうじて正気だ。
コロナ以外のニュースを題材に、メディア情報をどう捉えるか、世間に意見をどう発信すべきかという問題提起をしてみたい。
これ自体は、ツイッターで吠えている噺家にも関係する話である。
こんなニュース。
夫の車を誘導中の妻、ひかれて死亡「道に迷いＵターンしようと…」（※リンク先記事削除済み）
読売新聞の記事である。Yahoo!のほうはいずれ消えるのでこちらが元リンク（※削除済み）。
高齢ドライバーの悲劇。認知の乱れによる事故らしいとわかる。
既視感を覚える類のニュース。またかと誰でもそう思うだろう。
そんな記事を取り上げてどうする？ 世間の反応のほうに価値があるのだ。
Yahoo!ニュースのコメント欄は、こんな内容で埋め尽くされている。
- 買い物で道に迷ったってどういうこと？
- 高齢者は免許を返納せよ
- 免許持っていないであろう人が誘導すると、得てして車の導線にいる。轢かれて当たり前。
- クルマがないと、地方では生活できないのだ。クルマがなくて暮らせる社会にしないと。
- うちにいる老人もそうだ。頼みもしないのに不要な誘導を買って出るから困っている。
まあ最後の、悩み共有のコメントはいい。ものの言い方が世間に対してフラットだ。
それ以外のYahoo!のコメント、結局みな同じ種類。
起こった事象について、人間みな、自分の知っている分野、得意な分野に引き寄せる傾向が強いなと。
コロナについて、専門家を名乗っている人も含め、この傾向丸出しになっているのを見ればわかるだろう。
この閉塞感漂う状況について、なにかを語りたい気持ちはよくわかる。
だが、一般論を語る前にもう少し吟味したほうがいい。
悪いがありきたりのコメントの中で、鋭いなと思った指摘はただひとつだけ。
- 道路幅は約3メートルだったと報道にある。車長3メートルほどの軽ワゴンでもって、どうやってUターンしようとしたのか
このコメントをした人だけなのだ。数少ない情報からちゃんと疑問を洗い出したのは。
だが、まだ足りない。
この事故のニュース、記事の情報だけから、しっかり得られる事実があったのだ。コメントした人は誰も気づいていない。
岡山県民なら、コメントしてなくても気づいたと思う。
推測に過ぎないが、現場は日名川の支流、このあたりかなと思う。県道35号線沿いではないようで、そうするとだいぶ奥地になる。
そしてちゃんと記事内に、この夫婦の住所地が載っている。Google Mapで、自宅から事故現場までのルート検索するとこうなる。
県内移動なので気づきにくいのだが、この異常な距離を見て欲しい。
笠岡とか、そこそこ大きな街が自宅のそばにあるのに、買い物をしに、なぜこの山里にまで出かけた？
ニュースに疑問を持つなら、まずここから掘り下げるべきだったのだ。
距離で言うと横浜から八王子まで行ったようなもの。山道は通らないのであんまりいいたとえでないけど。
道に迷い、恐らくカーナビもなく、まったく知らない土地にどんどん進んでいったという認知の乱れが、この短いニュース記事から読み取れたはずなのである。単にバックに失敗したという以上の。
ニュースに対する世間の論評の、構造としての底の浅さを、この一件から思い知った次第。
なんだお前は。自分だけは目の付け所が違うと自慢しているのかって？
まあ、今回については、そう感じられたとしても仕方ない。
ただそんなことより、考え方は常に柔軟に保っておきたいですねと言いたいのです。
特にこんな閉塞的な、ツイッターで人々が罵り合ういやーな状況下においては。
政治思想が右でも左でも、その立ち位置自体をどうこう言う気は私には別にない。だが、立ち位置に関わらず底の浅い人間（噺家含む）が、浅いコメントを垂れ流しているのは見るに堪えない。
そして底の浅い人間ほど、上からものを言いたがる。
最後にまた別の、ずっと大きなニュース。
福岡でうなぎ屋に元店員が立てこもったという。
この際に、人質になった幼い姉妹のうち、お姉ちゃんのほうには途中で解放のチャンスがあったが、妹だけ残せないと自分の意思で残ったというではないか。
助かったお嬢ちゃんたちにトラウマが出ないよう、今後留意して欲しいと願う。
だがその後で、こういうところに、落語の人情噺の題材が隠れているなと思った私です。感動の種があるではないか。
