初日 初天神(実は団子屋政談)
2日目 粗忽の釘
3日目 百川
4日目 千早ふる
春風亭一之輔師の個性は多方面にわたる。既存の古典落語を換骨奪胎し、ギャグをたっぷり盛り込んだものから、人情噺まで200席以上。
だが4日目まで、続けてバカ落語だ。
コロナの暗い影が世間を覆う中で、どうやら意図的にこうしているものらしい。
落語ファン以外の層を取り込むにも最適だろう。そしてコロナの中での日常マクラが楽しい。
先日6日間にわたって、一之輔落語を熱く語った。
「千早ふる」である。当ブログの中では決してアクセス多い記事じゃなかったのだが、配信の4日目についに出た。これでアクセス増えたらいいな。
「世界中で視ている」と断っているのに、海老名家を攻めるあたりさすがだ。
さて、その先の記事で一之輔落語につき、「談志が生きてたら怒り狂う落語だ」と書いた。
私は別に談志を落語の絶対基準に置いていないから、批判でもなんでもないことをお断りしておく。
逆説的に褒めたわけでもないが。
だが、一之輔師の十八番、粗忽の釘を配信2日目に改めて聴き、またパワーアップしたこの噺、談志のいう「イリュージョン」を地で行っているなと再認識したところである。
もしかすると、志らくなんかよりずっと談志の後継者にふさわしいともいえる。
談志よりスケールがでかいと思いたいのだが、いっぽうで柳家喬太郎師の影響も実は強いので、スタイルの開祖とまではいえない気もする。
まあ、今からなにかの開祖になるかもしれないし。
イリュージョンという言葉、談志の用いている概念は極めて難しい。
だが、私なりには理解している。「狂気をはらんでいてなんだかわからないがひきつけられてしまう」というさまである。
もっとも、客が引くほどの狂気はたぶん、イリュージョンではない。それは別のもの。
粗忽の釘の八っつぁん、狂気たっぷりで、隣の住人はビビッている。だが、平和な空気を維持している。実は、そっちのほうがすごいのかもしれない。
その2日目のマクラは、弟子の噺。
一番弟子の㐂いちさんは、九九の七の段が言えず、干支もちゃんと言えない。師匠によると、ちょっとおつむが弱いらしい。
そんな与太郎キャラに見えない人だったので、驚いた。俳優上がりの二枚目キャラなのに、実はバカなんだね。
「干支が言えない」のは、瀧川鯉昇師のネタに出てくる弟子、鯉太エピソードと同じ。だが、いかにもな見た目の鯉太師と、印象はまるで違うのに。
師匠が弟子をどう料理しようが勝手だが、弟子のほうは二枚目キャラを封印されたようなものだな。
三枚目路線に転向する?
この㐂いちさんをはじめ、4人の弟子全員に、コロナの最中、課題を与える一之輔師。
仕事がなくて自分自身が大変なのに、弟子の面倒まで見るのだから大変だ。
3日目は長いマクラの中で、人情噺を求められると語っていた。その流れで、芝浜をダイジェストで語ってしまう。
芝浜なんか、全然好きじゃないと一之輔師。
これは必ずしも反語表現ではないと思う。
芝浜なんて名作じゃないという共通認識、ある種、噺家の中にもあるのだろうと思う。
今芝浜を掛けても、メリットは薄いだろう。そもそも、12月にしかやらない噺だ。
今、コロナから人類を救うのはバカ噺を置いてほかにない。
この後6日間の、一之輔師の掛ける噺の予想。
5日目 青菜
6日目 かぼちゃ屋
7日目 茶の湯
8日目 人形買い
9日目 夢八
10日目 らくだ
ちょっと攻めた予想をしてみました。
季節的にありそうな「夏泥」をあえて外してみる。
人情噺もいいけども。笠碁とか。