春風亭一之輔師は落語以外でもいつも楽しい人。余芸の見せどころであるラジオも毎週聴いている。
ツイッターも面白いのだが、この師匠が珍しく吠えていた。
怒りは本気なんだろうけど、ただ怒ってると噺家っぽくない。最大限にシャレをかましつつ。
とはいえ、日ごろのシャレづくしのレベルからするといささか怒りが強すぎにも映る。
ツイートを要約するとこんな内容。
- 素人のブログを見つけた。高座の写真を撮って載せたり、客席でウイスキーの瓶持って自撮りしてたりひどい
ああ、あれねと思った。
私でっち定吉も先日まで更新していた、Yahooブログのひとつである。うっかりクリックし、ゲロ吐きそうになるブログのひとつ。
高座の写真を平気で撮影する神経も壊れてるが、「ウイスキーの瓶持って自撮り」って、どこまで自己顕示欲の塊なんだよ。ただのジジイなのに。
楽屋にもやってくる一之輔師のファンらしいが、師は切り捨てることにしたらしい。
まあ、お客なんて神さまじゃない。
ちょっと気になるのは、一之輔師「高座の写真撮影」と「自撮り」とを同列に非難していること。前者は明確なルール違反。だが、自撮りはひたすら気持ち悪いだけで、怒りの矛先は本来違うはず。
一之輔師、怒りの第二弾。
- マクラやクスグリを起こすのは営業妨害。そもそもちゃんと起こせてないし面白くない。それに録音するな。
おやと思った。怒りはまずごもっとも。
マクラやクスグリを逐一起こすのが営業妨害につながるというのはまったくそうだろう。「あ、誰それのブログで読んだギャグだ」となるかどうかは別にして。
私にとっても、この手のブログは反面教師である。
第一弾同様、怒りのあまりいささか論理破綻気味だ。落語界屈指のインテリ一之輔師にしては。
録音しているなら、ギャグを正確に文字に起こすことは可能。あまりにも起こしすぎているから録音を疑うわけだ。
ちゃんと起こしていない人は、そもそも録音していないと思うけど?
モンダイは、この噺家の怒りは、私でっち定吉にとって無関係かということ。
高座のギャグについて書き起こすブログを反面教師にしている私だって、それなりに書いてはいる。うっかりすると一之輔師の怒りの矛先を受けかねない。
私の場合完全に起こしているわけではないし、そしてあくまでも、私の脳内に生じたイベントとして取り上げている。
一之輔師、「起こすんなら俺より面白く起こせ」とも書いている。だから、ちゃんと評論になっていれば一之輔師も文句は言わないのかなとも思う。
ウイスキーと自撮りしている痛いファンのブログを見つけた一之輔師、「春風亭一之輔 ブログ」でヒットする私のブログだってご覧になっているのでは。
自分のブログで、一之輔師の高座について触れた部分を読み返してみた。
2017年、年末に池袋で聴いた「味噌蔵」では、私はこう書いている。
<一之輔師の財産であるギャグの数々を、覚えているまま逐一書くのは気が引けるので、自分のメモ代わりに書いておく。「焼き印」「割り箸」。>
これはつまり、ギャグをすべて書き写すのは無礼なんだという前提に立ってはいるのである。
ただ、これだけ書いておいたら免罪符になって好き放題できるというものではないからな。
実際、師のテレビで放送した落語(新聞記事、かぼちゃ屋)については、結構細かくギャグについても書いている。テレビだから、録音どころか録画だ。
丸ごとじゃなくて自分自身の解釈をぶつけてではあるけども、噺家さんの財産を最大限、利用させてもらっているのは確かだ。
なにがよくてなにがNG、というのは案外難しい。
だが、正誤の問題ではなくて、ブログでのこういった取り上げ方を噺家さんが事実として不快に思うなら、それが自分の基準とずれていたとしても即止めようと、これは本気で思っている。
理屈っぽい当ブログではあるが、ものごとの分け方は善悪よりも、「粋」「野暮」のほうを好んでいる。噺家さんに「野暮」だと言われれば、対応する。
録音をはじめ、ファンのふるまいを厳しく面白く語っている柳家小ゑん師に仮に非難されるなら、ブログ自体止めてしまったっていいといつも思っている。