亀戸梅屋敷寄席8 その3

三遊亭竜楽師がいつものようにすばらしかった亀戸梅屋敷寄席。冒頭に戻ります。

冴えないライターの私だが、おかげさまで今週は忙しかった。朝締め切りふたつをやっつけて、確定申告を済ませてから亀戸へ。
亀戸の前に、ご無沙汰している春風亭昇羊さんを聴きに神田連雀亭にも行きたかったのだが、そうもいかない。
亀戸梅屋敷寄席の開演には間に合わなかった。
テケツには竜楽師がチラシを持って、前座さんと話している。両国でまったく同じ光景を見たっけ。
私の顔を見て竜楽師、「あ、いつもどうも」と言って下さる。いつもの人だとご認識はいただいているのだ。

関係ないけど、アド街ック天国に「亀戸」が取り上げられたのに、ゲストはなぜか立川志らく師。
亀戸餃子のお好きらしい好楽師など出していただきたかったと思う。
亀戸梅屋敷も、梅屋敷寄席も取り上げられなかった。なんでだ。

入場するとすでに、巨体の三遊亭楽大さんがマクラを振っている。竜楽師以外では、この二ツ目さんが目当て。
おかげさまで、二ツ目さんにしてはちょくちょく聴かせてもらっている。寄席をあっためるカロリーの大変高い人。
円楽師に入門志願した際のエピソードらしい。
楽大さんが入門した後、円楽党自体に志願者がいない。やっと2年後に入ってきたのが、師匠の息子、一太郎。
一太郎はとても素直。自分の感情に素直である。先輩が命じても、素直なので平気で間違ってますという。
少々強引に知ったかぶりにこじつけて、転失気へ。
円楽党なので少々演出は違うとはいえ、いつもよく聴く噺。
私は、「子ほめ」「道灌」「たらちね」「たぬき」は飽きないのだけど、転失気と真田小僧、元犬に若干飽き気味。
だがさすが楽大さん。目の動きひとつでいつもの噺を爆笑ものに変えてくれる。
「おならを借りに歩いていた」ことのトホホ感が珍念によく出ていて、それだけで楽しい。
表情がいいんだまた。こぼれるような笑顔を劇中に入れてくる。それと、睨み顔とのギャップがたまらない。
楽大さん、もう12年のキャリアである。真打昇進の早い円楽党なのでそろそろ真打になってもいいのだが、香盤では上に鳳笑さんがいて2番目。

続いて三遊亭小円楽師は、昔はすぐ年増になったと短いマクラを振って、なんと品川心中。
大ネタであり、寄席の、それもトリ以外で聴く噺じゃない。ちょっとラッキー。
ネタ自体の面白さをしっかり客に伝えてくれる芸でした。お染さんが可愛くていい。
生き死にのシーンがたまらなく楽しいのが、この噺のポイントなんだろう。もちろん親方宅も。
腰を抜かす元さむらいの先生はいなかった。

仲入り後の楽市師は、寄席の出番には役割があると。
今日は主任の竜楽師にサラッとつなぐ出番だが、私も28日主任なんです。だけど、亀戸梅屋敷の都合で、大根まつりをやるので中止にさせられましたと。
チラシも千部刷ってるのに。当日、少ないかもしれないが、落語目当てのお客さん来たらどうするのだと。
楽市師のマクラで初めて知ったが、この寄席は、師匠円楽が取りまとめをしているのだそうだ。なるほど、芸協に入ってからも円楽師出てるものな。

師匠の入院を絡めて医者のマクラ。
落語協会の柳家一琴師がよくやる、小児科医と産婦人科医を逆転させたネタ。本編と一緒に教わったのだろうか。
ただし、患者が女の子だと嫌らしいと考えたものか、男の子に変えていた。私も男の子のほうがいいと思う。
ご本人が語っていたように、出番の役割に忠実な軽い軽い「犬の目」。
目玉をポコンと取り外し、ギュッと埋め込む所作が馬鹿らしいのなんの。
まだ聴くのが2度目で、こういうバカバカしい味を持った人だとは知らなかった。円楽師の弟子、実に楽しい人が多い。

よく笑う客。もうちょっとで寄席自体壊れかねない危うさもあったのだが、結果的にはベストだったか。

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作成者: でっち定吉

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