柳家花緑弟子の会6(上・柳家花飛「洒落番頭」)

洒落番頭 花飛
青菜 勧之助
(仲入り)
親子酒 緑助

 

27日の月曜日は、上野広小路亭の「しのばず寄席」昼席に出向く予定を立てていた。
主任は三遊亭好楽師。他に、昔昔亭桃太郎師など。
入場料2,000円が1,500円になる「演芸・舞台を観に行こう!」も前日にプリントアウトして、準備OK。
27日の当ブログ、前日までにネタが書けておらず「撮って出し」にしようと思っていた。しのばず寄席の模様を夜アップしようと。
だが、なぜか4時ごろ目が覚めた。せっかくなので、書きかけていた「落語の演題:東西比較」を完成し、アップできた。
寝不足なもので、朝飯食べたら再び熟睡してしまった。目が覚めたら、とうてい12時の開演に間に合わない時刻。
しのばず寄席の3番目に顔付けされていて、楽しみにしていた古今亭今輔師の出番にも間に合わないので、行くのやめた。
なにしてるんだかな。
夢の中では、一度目を覚ましていたのだけど。落語みたいな夢の見かた。

改めて翌日、28日に行くところを探す。
菊志ん師主任の池袋でもいいが、貧乏落語ファンの味方、毎月第4火曜の昼間、らくごカフェの「柳家花緑弟子の会」に出かけることにする。
ワンコイン500円。
今月は巣鴨、浅草に継いで3席目だから、コロナが再び拡大する中、むやみに出歩いてはいないと思う。

弟子の会は2か月続けての参加になる。メンバーは総入れ替え。
トップバッターは、花飛(かっとび)さん。
若手というものはアグレッシヴに演じることを期待されるが、それに背を向け、まったく異なる道を進む人。
とはいえ、すねているのではない。自分のたぐいまれな個性を最適に活かす道を見つけたということだろう。
いかに弾まずに演じるかというのがこの人のテーマ(想像)。私も、その弾まない個性が大好きなのだ。
コロナについてひとくさり。まあ、その話題しかないところ。
本編は、1月にこの会で聴いた洒落番頭。半年振りなのに同じ噺。
だが、がっかりする暇がない。いきなり落ち着きすぎたトーンで淡々と喋っていくので、もう引き込まれてしまう。

洒落番頭と呼ばれる、ユーモア溢れる番頭さんは、シャレのわからぬ旦那をしくじり、くじけ気味。
悪気のない旦那のハラスメントを描いた噺でもある。
しかし番頭さんがくじけているというのは、本人の口からそう語られるから初めて描写されるわけだ。常にトーンを落として演じる花飛さんの番頭さん、機嫌のいいときもふさいでいるときも、同じトーン。
これがたまらない。超ベテラン、林家正雀師のようなスタイル。
落ち着いたトーンで語られる主人と番頭の会話は、聴き手の余計な感情の発動をブロックする。そして高座には、純化された人間の感情だけが描かれる。

一度聴いた噺であることは、開始早々、すでに気にならなくなっていた。
15分のコンパクトな高座はすばらしいデキ。
洒落番頭(庭蟹)は珍しめの噺だが、TVで春風亭三朝(朝也)、三遊亭志う歌(歌太郎)の各師が出していた。
これらの人も、珍しめの噺になにかしらアクセントを加えようとしていた。それが普通で、悪いことなんかではない。
だが、一切その誘惑に駆られない花飛さん。
ストーリーは単純な噺である。だがサゲに持っていく、細かい部分すべてに参ってしまう。
この一席はヒットです。

花飛さん、最近ではレアなアンダースローの本格派だと思う。強靭な足腰から投じられた投球は、シンカー主体で丁寧に低めをついていく。
打者がその、配球にポカンとしていると、いきなり浮き上がり気味のボールが鋭く高めに食い込んでくるのだ。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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