珍しめの噺だが、洒落番頭、前座噺として実にいい噺だなと再認識。現在、前座がやることはない。
登場人物は4人だが、花飛さんが登場させているおかみさんの役割を、小僧の定吉に担わせると3人で済む。
その3人が、必ず2人ずつ会話をする設定である。
劇中のシャレも、別にウケる必要はないけどまあまあ面白いので、朴訥な前座にとっては助かる。
開口一番にぴったりの噺だと思うのだが。
続いて真打である勧之助師。尾上松也にちょっと雰囲気が似ている。
昨年11月に、やはりこの会で聴いて以来だ。
真打なんだからトリでもいいのだろうが、その際もこの日も二番手。二ツ目の弟弟子たちを引き立てたいという理由なんだろう、たぶん。
この会の出番については、その都度相談して決めているようである
この柳家花緑弟子の会の裏話から。
500円と安いこの弟子の会、スポンサーがいるので安くできるんだそうで。
なるほど、いつもお世話になってます。
私とおさんアニさんは真打に上がったので、年2回ぐらいの出番ですとのこと。あとは二ツ目の弟弟子たち中心で。
台所おさん師については、この会では顔付けされたのも見たことがないのだが、一応はメンバーなんだな。
ぜひ毎月来てください、一門にもいろんな個性があって楽しいですよ。花いちなんて、新作だと思ったら古典だったりしてねだって。
先月は、古典フォーマットの新作を聴いたけど。さすが花いちさん、出てない会でも話題にされるのだ。
今日の集客はつ離れしている。勧之助師によると、「池袋を超えてますよたぶん」とのこと。
まるっきりギャグとも言い切れない。コロナ禍の池袋、実際毎日少ないようだ。池袋に限らず、都内の寄席はどこも今、そんな感じ。
意外と落語好きの年配の人、家でおとなしくしてるようだ。
前回もそうだったし、ファンのニーズに応えて(?)、花緑一門の弟子たちの話。
やはり中心になるのは、兄弟子のおさん師。
愛媛からリュックサックを背負って上京した勧之助師の教育係こそ、おさんアニさん。
最初の頃はおさん師(当時花ごめ)が、本当、なにを言ってるのかわからなかったそうで。そのモノマネ入り。
すごいもので、聴いているうちにだんだんわかるようになりました、おさんラーニング。
着物の畳みかた、太鼓の叩き方を教えてくれるアニさんだが、その後勧之助師が楽屋入りして、よそのアニさんたちに見てもらうと、ことごとく間違っている。
愛に溢れた兄弟子いじりは楽しい。
面白いのは、花いちさんがおさん師をいじる際は、あくまでも「ちょっと変わった人」としての扱いなのである。
勧之助師に掛かると、もはや動物。これはつまり、勧之助師と花いちさん自身の個性の違いから来るものなのだろう。
花いちさんのほうが、おさん師の感性にずっと近いのだろう。まあ、見てればわかるけど。
さらに下の弟子である緑君、花いちは勧之助師(当時、緑太)が教育したのだと。
楽しいマクラを語りつつ、まだなにやるか決めてないんですと振ってから、季節の噺、青菜へ。
噺が決まってないのは、「寝床」の前回もそうだった。
どんな演目でも、勧之助師はとにかく動かす。
露骨な変化球ではなく、打者の手元で揺れ動く、スライダーとツーシーム、カットボールを投げ分ける。昨日もそうだが、この野球のたとえ、伝わってますでしょうか。
前回聴いた寝床は、非常に面白かったのだけど、動かしすぎてちょっと釈然としない一席だった。
それに比べると今回の青菜、楽しく、わかりやすい。わかりやすいというのは、演者の噺に掛ける思いが客に伝わりやすいということ。