秋の落語とは?

「ほぼ毎日更新」になった当ブログ、更新時刻がだんだんズレてきまして、すみません。
現場に行かないとなかなかネタができない。

さて今年は、寄席が休席になったりして、夏の噺を掛け損ねた噺家が多いようである。無理もない。
夏の噺は実にバラエティに富んでいる。
怪談噺にお菊の皿、青菜にちりとてちん。そして船徳。

さて、外は酷暑であるが、そろそろ秋の噺の出番である。季節は先取りするのが粋というもの。
だが、秋の噺ってなにがあったっけ?
パッと名が挙がるのは「目黒のさんま」。これは文句ないのだが、これ以外が。
「野ざらし」は秋っぽいのだが、「四方の山々雪解けて、水かさまさる大川の」というセリフがあって、春にも思える。
そもそも、幽霊が出てくるのだから夏の噺ではないのか。

ちょっと当ブログから、過去のネタ帳引っ張り出して、秋にどんな噺が掛かっているか見てみることにする。
堀井憲一郎氏みたいに膨大なデータはないから、主観メインです。

晩秋になると出てくるのが「時そば」。でもまあ、これは明らかに冬の噺。
同じ理由で、「ふぐ鍋」も数回秋に聴いた。
冬の噺だという前提でもって、食欲の秋に掛けるというのが最適なのかもしれません。
食欲の噺といえば「そば清」がある。
これも明確な季節感はないのだが、いつかといえば秋だろう。旅のシーンもあるし。

ネタ帳繰っていくと、季節ものではないのに目につくのが「親子酒」。
ああ、秋っぽいなこれは。秋の夜長に、酒なしでは過ごせないわけだ。
酒の噺自体、秋に向いている気がする。試し酒も、禁酒番屋も。
酒の噺でいうと、「替り目」はとても秋らしい。おでんと、うどんの屋台。でもまだ寒い時期ではないという。
「猫の災難」も、季節感は別段ないけど、秋っぽい。

年中やってる噺だが、「鈴ヶ森」という噺には、人寂しい秋の気配がする。
もっとも、タケノコがケツに刺さるところを見ると春かもしれない。でもこれは付け加えたクスグリ。
秋は追い剥ぎの季節。

笠碁は、梅雨の時季にも掛かる。客の気持ちにはそれで合う。
だが、先代小さんによればこれは秋の長雨の噺だという。
お山に行ったときの菅笠でしのげる程度の雨なのだ。秋のほうが、人寂しくなるのである。

悋気の独楽、権助提灯というのは「本妻vs.妾」の楽しい噺。
これも、季節をあえて問うなら秋ではないか。
権助提灯では、風が強いから妾のところへ行ってやったらどうかと本妻が水を向ける。
風が強くて火が心配なのは冬だが、一晩中本宅と妾宅を行ったり来たりしているわりには寒さの描写がない。
初秋の噺なのかなと思う。真冬だと夜がなかなか明けないし。

過去のネタ帳をほじくり返していると、妙に見かける噺が「片棒」。
季節ものではないけども、祭りのシーンも濃厚に入っている。いつ掛けるかというと確かにこの時期はいいかもしれない。

あとは、そば清もそうだが旅の噺はよさそうだ。
「猫の皿」「茗荷宿」「小間物屋政談」など。
「三人旅」など珍しいが、私はすべて秋に聴いている。
「蜘蛛駕籠」にも旅の要素が含まれているので、よく聴く気がする

あと、流行らない商店の寂しさと、神信心が季節に符合する「ぞろぞろ」。

まあ、結論としては、秋は非常に落語に向いた季節だということで。

作成者: でっち定吉

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