大岡山落語会 その3(林家はな平「お菊の皿」)

Mr.ポテトヘッドみたいな林家はな平さんは、正蔵師の3番弟子。
この大岡山落語会は、もともと兄弟子のたこ蔵師(二ツ目時代、たこ平)がレギュラーメンバーだったらしい。
真打に昇進した際に、はな平さんが後を継いだのだそうで。

はな平さんは派手な縞の着物。冒頭のトークでも「こんなの持ってたっけ」と先輩ふたりに突っ込まれていた。
二ツ目になってずっと着てますということだったが。
そういえば、冒頭のトークでこの人が語っていた内容は、師匠・正蔵について。
正蔵師は、ネットに関する知識が本当にないのだと。You Tubeというものを、5ちゃんねるみたいなものだと思っている。
若手の太神楽師である鏡味仙成さんが、大胆にもYou Tubeで対談を始める。
第1回の相手が、落語協会会長・柳亭市馬師であり2回目が正蔵師。ギャラなんか出せないのに、二人とも引き受けた。
だが正蔵師、You Tubeの対談だというので、おびえてはな平さんに電話を掛けてきた。
そんな番組に出たら炎上して世間に叩かれるんじゃないかだって。
はな平さんは言ってなかったが、柳家小もんさんも一緒にインタビューをしている。

はな平さん自身は、料理動画を上げたりしているらしい。海老名のおかみさんに褒められたとか。
「落語家あるある」は後で視てみた。結構笑いました。
後は、ジブリの映画は古くならなくていいですねと。
いっぽうで先日、ドラマの「やまとなでしこ」の再放送を視て、あまりの古さに腰を抜かしたとか。

はな平さん、怪談噺をしますと。
怪談噺というのも不思議なことばで、「怪談」だけで成立しているのに、さらに噺をくっつける。やはり落語なのでと。
まあ、普通に考えればお菊の皿だろうと思う。
夏の寄席では取り合いになる噺だが、この夏はみな、出す機会を逸しているんじゃないか。

「執念・妄念・残念」のマクラから、やはりお菊の皿。
骨格のしっかりした噺だから、続けて聴いても楽しめる。とはいえ、私もこの夏は初めてだ。
あと、全国各地で季節を問わず人は幽霊になるはずなのに、なぜかどこでも夏衣装で、しかも江戸弁だと。
私の出身地、福岡の幽霊はこうなりますといってローカル幽霊を披露。

マクラの出し方からすると、古今亭の師匠に教わったのだろう。特に雲助師のお菊の皿にそっくりだ。
雲助師は「関西弁の幽霊」だが。
ただし、お菊さんの言い交わした男「三平」についてはセリフだけ入れてスルー。入れなくていいのにと思ったけど。

初めて生で聴くはな平さんの一席は見事でした。
欠点は、幽霊があまり色っぽくない点だが、これは仕方ないと思う。そもそもはな平さんの手の甲、真っ黒けだし。
できないことはやらない。若い衆たちのバカっぷりに焦点を当てて、そこをしっかり描けば楽しくなるのだ。
振り返ってみると、はな平さん、意外なぐらい遊んでいないので驚く。イメージとしては、結構遊びまくっている落語なのに、実のところ、基本に忠実、スタンダードなのである。
この噺、遊ぼうと思えばいくらでもその余地がある。だが、普通にちゃんとやれば、演者の持ち味が自然にじみ出てきて、独自の一席ができあがる。そのいい例。

唯一気になったのは、興行主が出てきて、観客席をこしらえて、というあたり。
すでに、何千人が観られると言ってしまっているため、この時点で、すでに逃げられないぞと思ってしまう。
こういうところは、先人は上手いことぼやかすのではないかな。

続きます。

 

七段目/お菊の皿

作成者: でっち定吉

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