神田連雀亭昼席(上・春風亭弁橋「富士詣り」)

 

富士詣り 弁橋
日本創生 竹千代
たいこ腹 小んぶ
二十四孝 小もん

 

月末の仕事の締め切りが多くて、結構アセってきた。
でも落語に行きたい。すごく行きたい。
どうしようかと思ったが、比較的短い時間の神田連雀亭昼席へ。
ただし、これに伴い予定していた31日のしのばず寄席(好楽主任)は取りやめる。
しのばず寄席など上野広小路亭の寄席は、「したまち台東芸能文化」のプリントアウトで2,000円が1,500円になるから、数ある寄席の中でもパフォーマンスの高さは圧倒的。この31日は違うが、夜席まで居続けできる日まである。
31日の顔付けは、他に兼好・萬橘・今輔といった私の好きな人が多く楽しみにしていた。
いっぽうで、立川流が3人いたりなんかして。立川流も多少聴いておかないといけないのだが。
出かける前に聴いていたナイツのラジオに、談笑師がゲストで出ていた。ここの一門についてはみな上手い。

連雀亭は、先週9か月振りに来たばかり。
この二ツ目専用の寄席には、30回以上来ている。
だが私、ワンコインばかりで、昼席、実はまったくの初めてなのであった。
ワンコインだろうが昼席だろうが、この寄席の使い方を私は根本的に見直すことにした。
青田買いはしない。顔付けの全員が、すでに実力を認めている人のときにだけ、来ることにする。
微妙な人がひとりいたら、やめる。
今日の4人については、全員の実力を認めている。所属は落語協会ふたりに芸協ふたり。
キャリアは、二ツ目になって1年の弁橋さんから、真打が近い小んぶさんまでいろいろ。
そして、期待通りでした。

先週来たばかりなのに、ニューアイテムが登場し、新たなルールができている。
受付の小もんさんから要請を受け、これに従う。
まず、センサーで測る体温計である。
それから、名前と連絡先を書かされるようになっている。まあ、これぐらいはいい。
つ離れはしていて、19人の定員に近い。

2番手の竹千代さんが前説で登場。面白いことはなにも言わず諸注意だけ。
今日の高座について考えごとでもしていたのか。

先月の浅草で初めて聴いた、二ツ目でも下のほうの春風亭弁橋さんから。
最近ドラマに出たのだそうだ。タイトルは聴かなかったが「親バカ青春白書」というムロツヨシ主演のドラマ。
「オチケンの先輩役」で3秒間画面に出たそうで。ただし後頭部と横顔。
落語指導を務める昇也さんの紹介らしいのだが、弁橋さん「ぼく大学出てないからオチケンわかんないですよ」と言うと、昇也アニさんも、俺も出てないよだって。

弁橋さんの故郷は山梨県韮崎市。名物は(ちょっと考えて)なにもないです。
ただし富士山がある、と言って富士詣りへ。
先週のワンコインも夏の珍しい噺ばかりだったのだが、今週もまた。
だが富士詣りについては先月、金原亭馬久さんから聴いたばかりでもある。
大筋は一緒だが、細かい部分はだいぶ違う。芸協でいったい誰がこの噺を持っているのだろうか。
ちなみにWikipediaによると、山梨出身で二ツ目に昇進した人、林家正雀師以来なんだって。
山梨県といえば小遊三師だが、つまり今3人しかいないってことだな。
富士山を挟んだ静岡県出身の噺家は、もう佃煮にするぐらいいるけど。

弁橋さんはとにかく明るい高座を務めようと張り切る。
落語協会の柳家小太郎さんによく似た雰囲気がある。
噺にあまり近寄り過ぎず、適度な距離を保っている点がいい。
こうするとギャグも入れやすいし、客の気持ちも楽だ。
悪くないのだが、途中ちょっとダレた。終始弾んだ語りで進めている点は決して悪くないのだが、今度はそのテンションでもって、噺が変に安定してしまうのだ。
新たな刺激をもらうか、あるいは徹底的に落ち着いた空気か、どちらかが欲しい。落語とは、かように難しい。
だが、ダレ場を乗り切ったあとは素晴らしかった。
「邪淫界」の懺悔を始める熊さん。
亭主の留守宅に上げてもらい、かきもちをつまむ振りしてかみさんの膝小僧をつねる熊さん。
だがかみさんもノってきて、熊さんのヒザをつねる。
このやりとりが最高だった。
弁橋さん自身がこのやりとりを、とても楽しんで語っているからなのだろう。
馬久さんの富士詣りは、そこまでじっくり進めていた分、色気がにじみ出てムズムズする語り。そういうのとは違うのだけど、とても楽しいつねりっこ。

今後も楽しみな人だ。
そのまま下がりかけ、たぶん竹千代さんに指摘されたのだろう、ああ、という顔をして戻ってきてメクリを変える。
そういえばこのメクリ、昨年は上手にあったなと。

続きます。

 

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作成者: でっち定吉

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