色物芸人にとっての落語定席

本業多忙につきアップが遅れました。
締め切りが続くので、ちょっと当ブログお休みするかもしれません。
さて今日はネタがまだ固まっていないのだが、春風亭一之輔「あなたとハッピー」を聴きながらアドリブで書きます。

ここ2日間、寄席の彩りとして欠かせない漫才について触れている。
「解散」にだけ注目する世間は、実はちょっと無責任だ。「世間」ではないかもしれないが。
解散することにより、漫才師は落語の寄席に出る資格を実質的に喪うのである。逆にいうと、仕事がなくなっても解散したいというぐらい、相方と一緒にいたくないのだろうが。

ナイツのラジオの新番組、結局月木の4日間聴き続けた。
実に面白く、業界のネタもたくさん聴けた。だが、ナイツからの情報だけではわからない点もある。
ナイツは落語の寄席にもよく出るが、主軸があくまでも漫才協会に置かれているからだ。だから、かつてのゆめじうたじ、現在のWモアモアの、解散によって落語定席に出る機会の消滅については語っていない。
世間の人は、例えば「おぼんこぼん」が落語協会や芸協には所属しておらず、落語の寄席に出ていないことも知らないだろう。

改めて、落語協会と芸術協会の色物香盤をじっくり見てみた。
そしていかに色物芸人が多く、そしてそのうち、実際に顔付けされている芸人がいかに偏っているか、改めて思い知る。
寄席の番組を作るのは席亭だ。協会には所属できても、依頼がない限り寄席には出られない。
そして、いつもの芸人しか呼ばれていない実態がある。
落語の寄席において大事なことは、落語の邪魔にならないこと。
寄席に呼ばれる色物さんたちは、徹底してこれを守り抜いている。

色物は落語を下支えする存在に過ぎないのか。そんなことはない。
笑いはいつも、制約から生まれてくる。落語を聴きにきた客に、楽しい漫才その他で爪痕を残すことは可能。
爆笑だけが笑いではないのだ。
噺家が寄席のトリを目標にするのと同様、色物はヒザを目標にする。ヒザはトリの前で、客の頭をいったんクールダウンする、実に重要な役割。
この役割を名誉と実感できない芸人は、結局は漫才協会の定席(東洋館)において、トリとして脚光を浴びる機会もないはず。
落語だってそうだもの。落語の場合は、ヒザの前の「ヒザ前」が特殊なポジション。
ヒザ前は実に難しい。ウケすぎてはいけないが、客の気持ちをそらすようなつまらない芸は許されない。
このポジションが上手い人は、例外なくトリでも見事な人。
落語協会でいうと、さん喬、一朝、正雀。若手だと文菊など。
芸術協会だと、本来爆笑派の笑遊師が、ヒザ前で苦笑派になる。

色物芸人が、落語の定席に出るのはハードルが高い。
噺家の身内になり、一門に加えてもらう必要がある。
ナイツがよく漫才で、芸協では小遊三師匠の弟子だと言っている。別に間違いではないが、いわゆる弟子という意味でもなくて、小遊三一門に加えてもらうことで寄席に出られるのだということ。
そして残念なことに、実際に呼ばれるのは一握り。

暇があったら、東京かわら版をひっくり返して、色物の出番の数を比較してみたいのだが、あいにくそこまで暇でもなく。
落語協会と芸術協会の、漫才とコントに限定し、よく出る人(印象です)をピックアップしてみる。

【落語協会】

  • 鈴風にゃん子・金魚
  • ロケット団
  • ホームラン
  • ニックス

【落語芸術協会】

  • 東京太・ゆめ子
  • 東京ボーイズ
  • 宮田陽・昇
  • ナイツ
  • コント青年団
  • おせつときょうた

あれ、先日末広亭で観た「コント山口君と竹田君」は芸協の会員じゃなかったのだな。
落語協会はちょっと顔ぶれが変わらなくて心配。いや、「とんぼ・まさみ」とか「青空一風・千風」とかあとは夫婦漫才のジキジキ、おしどりなどいるのだけど、まんべんなく出ている印象ではない。
個人的には、「母心」に所属して欲しいです。彼らは両国寄席に出ている。
落語協会、なまじ噺家が充実しているがゆえに、色物と講談が足りない印象。数年先を見据えたら強化しておかないと。

芸術協会のほうは、ここに載せなかった「ぴろき」「ねづっち」「ボンボンブラザース」が他にいることでも、色物の充実振りがわかる。玉川太福さん(浪曲)までいるし。
芸術協会で、この度解散したWモアモアとか、コンビ仲が極めていいらしいので解散はない東京丸・京平などは、広小路亭以外には、それほど呼ばれていない。
超ベテランになると呼ばれにくいのかというとそんなことはなくて、京太・ゆめ子先生はずいぶん出ている。
さらにいうなら、昨年亡くなった新山ひでや師匠の「新山ひでや・やすこ」もよく出ていたのだ。
だから、寄席の空気に似つかわしい人なら、年齢は問わないのである。

ナイツのラジオで、「日本スタンダップコメディ協会」という協会ができていることを知る。
副会長が「ぜんじろう」で、香盤の3番手にラサール石井がいるというなんだかな協会。
現状、吹けば飛ぶような団体だが、なぜか立川談慶、林家彦いちと、噺家さんが二人入っているので驚いた。
なんで噺家がスタンダップコメディをやる必要がある? 彦いち師なんて十分高座でやってるじゃないかと思ったが。
しかし寄席の世界でスタンダップコメディといえば、ナオユキである、この人は参加していない。

作成者: でっち定吉

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