月例らくご温泉(下・柳家緑君「明烏」)

そして緑君さん。青い着物は、正太郎さんに負けず綺麗。
お客さんに、「緑君さんの芝浜は素晴らしかった」と言われる。だけど、芝浜は習ってないし持ってない。
持ってませんと客に言うが、そんなはずはない、湯島の2階(黒門亭)で聴いたと返される。
「稽古してくれと若手に言われるが、私はその噺持っていない」というマクラ、たまに聴く。その客バージョンだ。
まあ、今日はやりたい噺やらせていただきますといって、明烏。

うちの息子がいるのに廓噺だ。でもまあ、うちの子、やたら廓噺を聴いているのである。
むしろ、息子と一緒のときのほうが廓噺がよく出る気すらする。噺家さんは一体なにを考えてるんだろう。
それはいいのだが私、今年に入って4度目の明烏なんである。その前も、11月に聴いている。
流行ってるのかな? この連続5席のうち、4席は二ツ目さん。
緑君さんの明烏自体も、2017年に早朝寄席で聴いている。結構圧倒されて、それで私、緑君さんひいては花緑一門を強く意識するに至ったのだから。

好きな噺でも、それだけ続けて聴くとちょっとな。でも、故古今亭右朝によく似たすばらしい声に、すぐ引き込まれていった。
緑君さんの明烏は徹底して作りこまれている一品。こんな特徴がある。

  • 展開がゆっくり、たっぷりめ。しかしくどくはない。
  • 源兵衛と太助が、完全に描き分けられている
  • 若旦那はマザコン。母親が泣く泣く送り出す。

たびたび遭遇するこの噺、どれだけ源兵衛と太助が描き分けられているかに注目して聴いている。
それで噺の価値が決まると思っているわけではない。先人のだって、描き分けようとすらしていないのも多いし。でも、ひとつのポイントではあるだろう。
前回気づかなかったが、緑君さんの明烏、実に見事な描き分けがなされている。
源兵衛が社交担当。太助のほうは非常に不愛想、そして抜けている。

源兵衛が、帰ると泣く若旦那を引き留めつつ、文句を言う。
「なんで前の列に子供がいるのに明烏やってるんだ。その前は『町内の若い衆』だし、どっちも子供の前でやる話じゃないだろ」
そうだった。早朝寄席で聴いたときも、うちの息子ではないけど、子供がいるのにと言っていた。
言われたうちの子は喜んでました。

昨年は、二席聴いてもう終わり?といささか欲求不満気味だったこの会、今回は大ネタが聴けて満足しました。
時間のほうも、昨年45分しかなかったのだが今回は60分を超えていた。
この後、横浜にぎわい座で独演会のある正太郎さんはすでにいなかった。

1階の風呂に入る。
相変わらず、黒湯が熱いのなんのって。リアル強情灸の湯である。
温度が2種類分かれているのだが、低いほうでも46度あって、それはそれは熱い。
掛け湯ならかろうじて熱いほうの湯もOKなのだけど、とても浸かれないし、浸かっている人もいない。

緑君さんもお風呂に入ってきた。多少お話ができてよかったです。
誰も入れない熱い湯に、緑君さんだけ浸かっていた。

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作成者: でっち定吉

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