落語の演題、演者の名前の誤字いろいろ

落語ファンが聴いた落語の演題を、ブログやツイッターに載せるが、残念なことによく字が間違っている。
実に頻繁に見かける誤表記が「雑排」。ワープロでこう変換されてしまうのだが、意味は「雑排水」すなわち、「家庭から出る汚水のうち、台所や浴室から出るもの」。
正しくは古典落語の演目「雑俳」。俳句なんだから当然なのだが、このようには変換されないので気を付けましょう。
間違った表記の「雑排」で検索すると、You Tubeで聴ける「雑俳」がやたら引っ掛かる。アップしている連中が間違えているのである。
ツイッターで検索したら、故・立川左談次ご本人のツイートが引っ掛かった。プロまで間違えている。

当ブログへは「一門笛」という誤検索でよくお越しいただく。もちろん、「小三治一門」の一門ではありません。
「一文笛」が正解。
まあ、私も「黒紋付」を「黒門付」と書いて記事をアップしたけど。

「明烏」を「明鳥」と書いている人、結構いる。まさか演題がアケドリだと思っていることはなかろうが、少なくとも「鳥」と書いてカラスと読むとは思っているわけだ。
これは結構恥ずかしいぞ。
もっとも、間違った「明鳥」で検索すると、間違っているという指摘もないまま、普通に明烏として検索結果が表示される。だからいつまでも気が付かないかもしれない。

演題よりもずっと間違えられやすいのが、噺家の名前。
確かに噺家の名前は大変複雑である。でも、間違えると失礼。
春風亭一之輔師にリツイートしたファン、「一ノ輔ブーム到来」と書いて、ご本人に「名前間違えられるくらいなんだからブームなんてきてねーっつーの!」と叱られていた。

「之」を間違えるのは珍しいが、「輔」は結構間違いがちだろう。
噺家の名前で「すけ」と読む字は「輔」「介」「助」などいろいろある。記憶に自信がなければ、都度調べるしかない。
「之」の字だって油断ならない。だいたいは「之」でいいが、入舟辰乃助なんて人もいるし。五明樓玉の輔師みたいにひらがなもあるし。

柳家、林家、橘家といった亭号の家の字を、「屋」にしてしまう間違いもまた、常に多い。林家の場合、いにしえは実際に林屋だったのだが。
牛丼と一緒だと覚えましょう。「吉野家」「すき家」。もっとも「松屋」と間違えたら元も子もないが。

当ブログへの訪問で、誤検索のほうがむしろ多そうな人が「柳家蝠丸」。つまり、二重に間違えて柳屋福丸になってしまう。
福丸だと、上方の噺家(桂福丸)になる。
まあ、普通には「蝠」の字が出ないし。出したい場合、「こうもり」を変換すると、「蝙蝠」になります。

噺家の「圓」という字を、「園」と書いてブログにアップしている人がいた。
先日襲名披露があった三遊亭圓雀師を、「園雀」、兄弟子圓丸師を「園丸」と書いていたのである。
シークレットのメッセージを出して指摘してさしあげたのだが、なんとコメント削除されて無視された。
圓は円と同じ字である。メクリの字は、なるべく隙間を埋めるという縁起物なので、圓の字のほうが有利。だが、三遊亭円丈師のように、簡単な字のほうを好んで使う人もいる。
今度襲名の、四代目円歌師も簡単な字のほうのようだ。どちらの師匠も、落語協会的の香盤には「圓」の字で記されているので、圓も円もどちらも正解。メクリが円歌か圓歌かは、また別の話なのだけど。
ともかく、「園」の字は噺家には使わないな、普通。
ちなみに円歌師の旧名は「歌之介」。これも相当、字が間違われて続けてきたものと思われる。

噺家ではないが、ものまねの故・四代目江戸家猫八は、襲名前の小猫であった時代が長かった人。
小猫時代にうちの近所の地域寄席に呼ばれていたのだが、ポスターに、なんとも失礼なことに「子猫」と書いてあった。
今桂米團治の小米朝師も同じことをされて、「子米朝」という本を出した。「子米朝」という言葉はないが、「子猫」はあるから無理もない、ってダメだろこれは。

(2019/7/27追記)
私のブログでも誤字を見つけました。「滝川鯉橋」とか「歌之助」とか間違いを書いていました。 偉そうなことはいえません。噺家さんにもお詫びします。

続編です。落語の演題、噺家の名前は入力が大変だ

作成者: でっち定吉

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