スタジオフォー四の日寄席3(上・隅田川馬石「堀の内」)

堀の内 馬石
夏泥 龍玉
百川 左橋
(仲入り)
猫と金魚 権之助
オコッペ本線 駒治

 

ネタ不足が続いている。
今日も撮って出し。巣鴨スタジオフォー四の日寄席を聴いた直後、西巣鴨駅のマックで書いております。

スタジオフォーは、コロナで再度の休止に入っていたが、復活。毎月4日の四の日寄席も。
8月4日は、ここと迷って国立に行ったのだが、その日はそもそもやっていなかったわけだ。
10月4日。日曜日だが出かけてみよう。うちから遠いのだが、都営地下鉄のワンデーパス500円が出ていてありがたい。
桂やまと師が休演なのは知っていたが、行ってみると古今亭文菊師もお休み。
東京かわら版にも、代演の可能性ありと書かれている会。文句は言わない。日曜だからなおさら。
馬石師と駒治師がいれば、私はいい。
やまと師に替わって蜃気楼龍玉師。龍玉師はメンバー固定のこの会の6人目のメンバーのようで、よく代演で出ている様子ではある。
文菊師に替わっては、ついに一門外の人、柳家権之助師。すぐ近くに住んでいるらしく、一度出たこともあったそうで。

連絡先を書き、検温して入場。
日曜なのに、文菊師不在のせいか、やや空席が目立つ。他の理由もあるかもしれないが。
高座が改善されている。7月に聴いた際は、ビニールを演者の前に垂らしていた。
今回から、透明アクリル板をななめ(上方を手前に傾ける)に置いている。歪みがないので、客席からはほぼ気にならない。
アクリル版はパイプで固定していて、手作り感満載。

トップバッターは隅田川馬石師。
復活した四の日寄席ですが、しかしいきなり代演が二人ですと断って、この日の順番を説明。この時点で、初めてトリが駒治師と知る。
駒治は、鉄道落語で散々名を売ったのに、最近は自転車通勤している裏切り者です。これは前回、駒治師のマクラで聴いた。
改良されたこの高座について。
このアクリル板が斜めになっているのがいいんですと。
まっすぐ立てると、お客さんは見えないで、演者の顔が映るんだって。
後ろからライトを当てているから、鏡になってしまうわけだ。マジックミラーと同じで、客からはよく見えるのだが。
自分の顔見ながらしゃべるもんじゃないと馬石師。がまの油の気分ですだって。
いっそ噺家でがまの油を実演したらどうでしょう。四隅を鏡で覆い、噺家を閉じ込めて「子ほめ」を演じさせる。
脂汗が出てくるのを、三七二十一日煮詰めると、「笑い止め」ができる。

このままがまの油やるんじゃないかと期待したのだが、違った。持ちネタにあるなら、馬石師のがまの油聴いてみたいな。
粗忽のマクラ。親父の顔を忘れる小噺を振り、「あまりウケませんでしたね。ちょっとしつこくやり過ぎたかな」と反省の馬石師。
まあ、落語をよく知っている客にはウケないでしょう、普通。だけど、自己フォローまで含めての小噺なのだ。
まあ、堀の内だろうと。トップバッターで「松曳き」ということもあるまい。
堀の内は人気の演目だが、馬石師のものはかなり面白い。会の冒頭に最適の軽い軽い噺。
一度聴いているネタなのでこれに入って少々残念だったのだが、全然気にならない面白さ。
それに、結構細部が違う。
馬石師も、覚えたとおり一言一句やる人じゃないのだなと。堀の内というハイパー粗忽ワールド全開の噺が、完全に肚に入っているのだ。

馬石師ならではの工夫が、「粗忽な人が大勢お祖師さまにお参りに行っている」という点。
粗忽の八っつぁん(名前が出ないが、そうだろう)の目を見ると、粗忽なのがわかるんだそうだ。
だから途中で道がわからなくなって人に聴くと、察してもらえるのである。
鍋屋横丁までいけば、もう道に迷う心配はない。「あなたと同じ目をした人がいっぱいいますから」。
日参して3日目になる、八っつぁんとそっくりの人はちゃんと入っていた。このギャグに前回いたく関心したものだ。
八っつぁんも、ご同類は目を見たらわかるのだ。
堀の内という噺は、粗忽のギャグに満ちている。落語初心者にはとても楽しい噺。
しかしその分、聴き慣れたら飽きて不思議はない。
馬石師の堀の内はまったく聴き飽きない。
そして、八っつぁんに嫌な部分がまったくないのは師の人柄でもあろう。
八っつぁんは他人に迷惑掛けどおしなのに、実に気持ちのいい造形。
馬石師はかなり注意深く、嫌みな部分を引いている気がする。クスグリのために噺のムードを犠牲にすることは一切ないのだった。

続きます。

(※ スマホで書いたもので、と言いわけしつつですがタイトルが「隅田川馬席」になってました。馬石師匠、申しわけありません)

 

作成者: でっち定吉

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