落語協会から、来秋の真打昇進4名が発表された。おめでとうございます。
- 古今亭志ん吉
- 柳家小んぶ
- 柳家緑君
- 柳家花いち
何人まで昇進かなと思っていたが、緑君、花いちは同期入門なのでやはり同時だった。
真打昇進は東京の落語界では大事な節目だが、これを徹底的に楽しもうとすると決して簡単ではない。二ツ目の落語を追いかけていないとならないからだ。
私もいろいろ出掛けてはいるが、巡り合わせで聴いたことのない二ツ目さんも若干いる。
二ツ目は、寄席では番組のトップバッターとして、前座の後に一席喋る出番しかない。だいたいは交互出演。
寄席に通っていても二ツ目はそうそう聴けない。
人によっては、たまたま入った真打昇進の披露目が、初めてその噺家を知る機会ということも普通である。
二ツ目を聴こうとすると、神田連雀亭がいちばん。
今回昇進決定の4人のうち、連雀亭に出ているのは小んぶさんだけだが。
今回の4人、世間の認識はどうだろう。私はかなりレベルが高いと思うのだが。
そして、全員のファンです。
もっとも名を知られているのは古今亭志ん吉さんか。
NHK新人落語大賞の本選に2回出ている。
志ん吉さん、今年のNHK新人落語大賞には落ちたようで、その際こんなツイートをしていた。
最後のNHK新人落語大賞は二次予選で終わった。
記念受験的な色合いもあった昨年までと違い、今年はこれだけに照準を絞り、一分の隙も無く仕上げたつもりだった。
残った六人には、ぜひ「圧倒的」な、この未練を跡形もなく吹き飛ばすようなものを見せてもらいたい。
本選進出おめでとうございます。
— 古今亭志ん吉 (@konkonshinkichi) October 15, 2020
このツイートの際、すでに来年は真打だとわかっていたのだろう。ラストチャンスのつもりで全力を出し切ったということと思う。
この人の高座には単純でない工夫があり、いつも感心させられる。
ちなみに真打昇進決定後になにかしらつぶやいているのは現在のところこの人だけ。
先日wikipediaの適当な記事をいくつか取り上げたのだが、志ん吉さんの現状スカスカの記事に、新人落語大賞本選進出2回は書いてあげてください。
柳家小んぶさんは、この夏まで一度も聴いたことがなかった。
その後立て続けに3度聴けて幸い。
最初に訊いたのが大ネタ「臆病源兵衛」であり、その後が「たいこ腹」「強情灸」という軽い噺。
両方の分野にまたがる噺を聴けて幸いだが、軽い噺もまた絶品であった。
真打昇進後は寄席の出番など少ない人が多いものだが、小んぶさんは浅い出番に顔付けされるんじゃないか。
そして花緑門下の緑君、花いち。
本人たちはつぶやいていないが、弟弟子の吉緑さんがおめでとうのコメント。
花いちさんは二ツ目の中でも非常によく聴いている人。多摩まではなかなか行けないのだが、いろいろ追いかけて聴いている。
花いちさんは古典と新作の二刀流。
新作は古典の役に立ち、古典は新作の役に立つ。特に花いちさんは、古典だか新作だかわからない噺を多数持っている。
だが二ツ目で二刀流の人を見ていると、どちらかのほうがいいなと思う人が多いのが事実。
どちらも役に立つ以上、どちらかに絞れなんて言う気は全然ない。ただやがてそういう中から、桃月庵白酒師のような面白古典に絞って活躍する人が出てくるのだが。
そういう人を見ている中で思うのだが、花いちさんはもう、完璧な二刀流である。新作は客の視野の一段上を攻め、古典はアベレージが大変高い。
柳家喬太郎師だって、真打昇進時はまだ世間に新作の人という目で見られていたはずで、それを思うとつくづくすごい人である。
緑君さんもとても楽しい人である。そして高く抜ける声がすばらしい。
高校中退して入門しているので、まだ30歳。平成生まれ。
この人にご無沙汰気味なのは避けているわけでなくて、らくごカフェの「柳家花緑弟子の会」に花いちさんを目当てに行ってしまうからだ。
まあ、昇進までに必ず二度三度は聴くと思うけど。
今は休業中でやっていないのだが、池上の銭湯の落語会で、緑君さんと少々話ができたのは実に嬉しかった。
緑君さん、終演後客の私と同じく入浴し、誰も入れない名物の極熱湯船に、ひとり入っていた。リアル強情灸の湯である。
実に芸人らしい、愛想のいい人である。花いちさんもマクラで、新宿ゴールデン街で金を持たずに飲めてしまう兄弟子を賞賛していた。
ただご本人のwikipediaに、ゴールデン街で飲む緑君さんの悪口が書いてある。
誹謗中傷は早く消してください。
名前だが、たぶん全員変わるとみた。真打に耐えられそうな名前は志ん吉さんだけだ。
志ん吉も二ツ目名なので、たぶん変わる。
柳家には名前がまったくないので、柳家の3人ともオリジナルの名前になると思う。
実際、緑君、花いちの兄弟子は勧之助になったし。
私は東京かわら版の堀井憲一郎氏ではないので、昇進者についてなんとかいいところを探してやろうなんていう立場にはない。
このたびの4人は、嘘偽りなくすばらしいですよと声を大にしたいのです。