鈴本演芸場5 その1(入船亭遊京「金明竹」)

子ほめ 松ぼっくり
金明竹 遊京
紋之助
転失気 市坊改メ柳亭市好
悋気の火の玉 正蔵
ジキジキ
真田小僧 おさん
棒鱈 圓太郎
(仲入り)
ニックス
アジアそば 白鳥
正楽
甲府い 扇辰

 

11月8日(日曜)は、もともと寄席に出かける予定にしていた。
息子はまだ新宿末広亭に行ったことがない。なのでそちら、芸協の芝居に行く予定を立てていた。
だが、夜席主任の柳家蝠丸師匠が休演。代バネは笑遊師。
東京かわら版には日曜の予定は書かれていないので、蝠丸師、地方に行くのだろうか?
予定の休演だったら末広亭のサイトにも早めに載せておいて欲しいと思ったのたが、ともかく私は当日朝知った次第。
弟子の蝠よしさんのツイッターには8日休みとあったのだけども気づかなかった。まあ、蝠丸師は例年通りなら12月の池袋中席主任なので、そちらで聴けると思う。
とにかくも、急遽行き先を上野に変更する。

急遽の変更といっても、もともと鈴本のほうにも行きたかったのだ。主任は入船亭扇辰師。
扇辰師は、ブログ始めてからそれほど数多く聴いているとはいえないが、大好きな師匠。
今年の正月、落語初めはこの人で、黒門亭で「雪とん」を聴かせていただいた。
割引券も出ていて幸い。
なんと、これで自粛明けの寄席、狙ったわけじゃないのだけど五場完全制覇。

末広亭は人数制限を解除した結果、食事禁止。こちらの場合、4時間は空腹に耐えねばならない。
鈴本は、まだ制限が続いているので席で食事OK。松坂屋で少々購入する。
日曜とはいえ、コロナ禍の夜席、客は少ない。
開場時に並んでいた人も数人のみ。
特になんてこともなさそうな日曜の夜席だが、しみじみいい芝居でした。だから私は寄席が好きなのだ。
博多で落語まつりがあったために11月上席は寄席を休んでいる人もいるが、落語協会の層の厚さからするとまったく関係ない。

前座の松ぼっくりさんで寝てしまう。おかげで頭すっきり。
番組トップバッターは入船亭遊京さん。小辰、辰乃助という扇辰師の弟子二人との交互出演。
与太郎がおじさんに叱られている。金明竹だが、いきなりおじさんが出かけるシーンからスタート。
柳家だと主人公が松公になるのが普通だが、入船亭の金明竹は柳家スタイルではないらしい。
与太郎の掃除をカットするのは普通だけど、いきなり店番からとは珍しい。
マクラをそんなに振ってなくて、時間はあるはずなのにどうしてだろうと思う。
それはこの人らしく、ゆっくりたっぷりした本編だから。
言い立てを決して急がない。特に与太郎に二度、おばさんに一度聴かせた後の四度目の言い立ては、非常に丁寧。
この噺、わざとわからないように話してるんじゃないかと思う言い立てをする若手にも出くわすのだが、そんなことはない。
遊京さん、言い立てに時間をたっぷり確保しているので、決して急がない。そして、おかみさんが旦那に対しておこなう再現もゆっくりたっぷり。
客の気持ちに沿った再現に、薄い客席から爆笑が上がっていたから本当に立派だ。
坊主がいて屏風があって坊主がいて、この無限ループで爆笑。そんな金明竹聴いたのは初めてかもしれない。
遊京さんはこのところよく聴いている。この京大卒の看板が先走りがちな二ツ目さんに、大きな期待をしている。
むやみにギャグをブッ込んだりせず(むしろ刈り込んでいく)、噺本来のクスグリで笑いをかっさらっていく遊京さん、実にカッコいい。
与太郎の活躍場面はさしてないのだが、シチュエーションがやたらと面白い。
金明竹、上手い人がやると本当に面白い噺だと改めて思う。

高座返しは扇辰師の弟子の辰ぢろさん。落語は未聴。
曲独楽、紋之助先生はいつものパワフル高座。
薄い客席でもとにかく盛り上げてくれる。芸を中断しての漫談もいつもながら面白い。
この日は立皇嗣の礼だが、即位の礼の後の空港で、独楽に使う刀を持ち込もうとして空港警察に連れていかれた話。
2月に池袋の同じ芝居に二度出かけたので、この先生が予定調和的に務め上げるのではなく、アドリブで進めていることがよくわかる。

今年は落語協会も芸術協会も、新二ツ目の披露目に多く遭遇している。
この日も新二ツ目の市坊改メ、柳亭市好さん。
先の遊京さんも、精いっぱい出迎えてくださいとあらかじめ話していた。
前座時代には聴いたことがない。
初めて聴く市好さん、発声について志ん朝を徹底的に研究しているらしい。師匠(市馬)じゃなくて。
今日の高座に関しては、他に特徴を見いだせなかった。まあ、寄席で頻繁に聴く転失気だから、ちょっと仕方ない気もする。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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