しかし花緑一門は本当に団結力が高いようだ。
仲のいい一門は、売れる人が多くなる好循環。いいことだと思う。さん喬、一朝、鯉昇、好楽などなど。
ちなみに12月上席昼席は、花緑一門の二ツ目は池袋(主任・花緑)と新宿(主任・小満ん)にそれぞれ顔付けされている。
面白いことに、「花」と「緑」で分けている。
つまり池袋が、花いち、花ごめ、花飛、圭花。
新宿が緑君、緑太、吉録、緑助。
真打の弟子であるおさん、勧之助は師匠の出る池袋にクイツキで交互。
この席あたりで、師匠に名前の相談をしたいらしい。
トークのあと、緑君さんが一席やって仲入りの予定だったようだ。
だが長くなったので、急遽仲入りを挟む。客も爆笑し過ぎで、休憩が必要。
仲入り休憩後に緑君さん。時間が短くなってしまったからだろう。ごく軽くやりますと。
自分が削って、花いちさんのために時間を残す配慮だ。
その花いちさんは先ほど外に出ていきました。稽古してると思いますだって。
先日の柳家花緑弟子の会のマクラでも話していたが、緑君さんはときん師に頼まれ金馬襲名の手伝いに出かけていた。
緑君さんは上の師匠に非常に可愛がられるようである。花いちさんにはこの部分が欠けているようだ。
花いちさん、前座のときはとんがってたんですと以前話していたっけ。でも、下の噺家には慕われてるみたい。
披露目は最後の国立になったが、ある日楽屋に緊張感が走る。なんだと思ったら小三治師が急遽現れたのだ。四代目金馬改め金翁師に、祝儀を手渡しに来たのだそうで。
あまりの風格に、お付きの三三師までがそこいらのアンちゃんに見えたそうな。
金翁・小三治の会話は、お互い耳が遠くて訊き返してばっかりなんだと。内容は「年は取りたくないね」というだけ。
小朝師すら、言葉少なであったそうな。
六代目小さん襲名の際は、ついて回ったり一切しなかったのに、他門の襲名で現れるんだなと。
これは小三治師に対する私個人の感想である。緑君さんが言っていたわけではないので念のため。
せっかくの披露目の機会なので金翁師に稽古を頼む緑君さん。
金翁師はどんな若手に対しても、気軽に「いつでもおいで」と言ってくれるんだそうだ。90過ぎの超ベテランには珍しいこと。
これは以前、木久蔵師からも聴いたことがある。
そんな、金翁師から教わった噺をやりますと。
金馬襲名絡みだったか? あるいは別の話だったか。後輩たちの名前を次々挙げていく緑君さん。
その際、「くん」付けする後輩と「さん」付けがいたので面白いなと。
高校中退で噺家になっている(柳亭小痴楽師と同じだ)緑君さん。年下の後輩が多数いるわけだが、たぶん年が上の人はさん付けしてるのだろう。
なくて七癖。畳のケバをむしる癖、それから鼻クソほじって丸めて鼻に戻すマクラ。
「四人癖」に入る。
決して珍品の類でもないと思うが、かなり珍しめの噺だ。
私は子供の頃に、先代雷門助六がテレビでやっていたのに強烈な印象を持ったのを覚えている。それ以来聴いたことなどない。
宣言どおり軽いのだが、絶品でありました。
癖をやめようという噺では、「のめる」はしょっちゅう出る。二ツ目さんがよくやるイメージ。
四人癖も同じ趣向なのだが、こちらはしぐさでの癖の噺。ビジュアル全開だから、ラジオではできないしCDにも入らない。
それぞれしぐさの癖を持つ4人の男が、癖をやめるため賭けをする噺。
- 鼻の下をこする
- 目をこする
- 羽織の袖を引く
- いちいち手を打つ
この4つの癖を、たっぷりビジュアルで見せてくれる。
癖とはいえ、落語だから所作を綺麗にやらなきゃいけない。そして緑君さん、実にいい形だ。
言葉とビジュアルの総合芸がそこにある。ある種、極めて落語らしい佳品。また、扱っている内容がどうでもいいという。
とても難しそうなので儲からなそうな噺。私は好きだなあ。
実にいい形でもってトリへ。