神田連雀亭ワンコイン寄席29(中・三遊亭遊かり「鷺とり」)

さて平林という噺は、二ツ目に人気。学校寄席でも頻出のはず。
誰がやっても、「ひとつとやっつでとっきっきー」という、わかりやすいフレーズをどう楽しむかという、そんなイメージの噺。
だが若手でもベテランみたいな持ち味の小はぜさんは、そういうアプローチではない。大きなクスグリなど一切入れないのに、徹底的に楽しませてくれる。
「ひとつとやっつでとっきっき? 絶対違う」なんて、ツッコミひとつでもって爆笑をさらっていくのだから。

先日、「落語は間だからね」などとドヤ顔で言うラジオパーソナリティに鼻白んだが、でも小はぜさんみたいな人に関していえば一理あるな(その前に、お前はなぜラジオでドヤ顔がわかったのか)。

ひとつとやっつでとっきっきはタバコ屋の爺さんに教わるのだが、爺さんは定吉がタバコを買わないので意地悪することにしたらしい。
だが、その説明は入れないのである。説明なくして、客に理解させてしまう。
ただ爺さんは、定吉の語る「いちはちじゅうのもくもく」について、ごくさらっと「上手く読むな」とつぶやくだけ。
こういうところ、サラッとできない演者が多いんだ。

平林のサゲは大別して3種類ぐらい、細分化すれば無限にバリエーションがある。
平林さん本人に無事会えて、正しい読み方を教えてもらうのに定吉「そんなんじゃなかった」。
オープニングからすばらしい一席でした。

笑点特大号の女流大喜利にも出ている熟女二ツ目、三遊亭遊かりさんは、座布団事件の釈明から。
これはスポ根や少女漫画に出てくる、トゥシューズに画鋲を入れるようないじめではありません。うっかりしたんです。
小はぜさんとは協会が違うので、年に数回会うかどうかというところ。なのに遅刻してくるという。
ちなみに、私の着物貸してあげてもよかったんですけど。
私のこの着物は、師匠譲りですだって。これ、なんだと思います? シャネルの生地なんですよ。
バブルが弾ける前に、反物屋さんが売れそうだと仕入れたシャネル模様の生地なのだが、まったく売れないので師匠が仕立代だけで譲り受けたんだそうだ。
差しさわりがあるので当時の師匠の名は出しませんがと余計なことをさらっという遊かりさん。
今の名前も出さないが、師匠は遊雀師。

事件がなければ、小池都知事に似てると言われますなんてマクラから入っているのだろうか。
ハプニングをしっかり膨らませてくれて楽しい。

隠居に呼ばれる男から、鷺とりへ。
東京では、なかなか出そうで出ない噺だ。バカらしさ満載の噺で、私好きなんですけどね。
現場では、柳家小せん師から聴いたぐらい。あと、前座だった春風亭一猿さんから、「雀とり、鶯とり、カッパつり」でできた「商売根問」を聴いた。

もう4年前、Yahoo!ブログ始めて間もない頃に書いた記事があるので、よかったらどうぞ。

落語のアホバカ「鷺とり」編

雀とりからの、鷺とり。そこそこ長い噺だが、この構成だと20分でできる。
雀を捕まえるためのエサは、酒に漬けた米だ。上方ではこぼれ梅だが、東京では焼酎に漬けたり、みりんに漬けたりする。
杖をついた長老雀が出てきて、危険だからと若い雀を諫めるのだが、江戸っ子雀が先陣を切る。
江戸っ子雀が威勢のいいところを見せるのは、もともとの上方落語の形。
東京ではなぜか浪速雀にしてしまうのが多い。でも遊かりさんは江戸っ子雀にしていた。
江戸っ子のほうがいいと思うな。浪速雀にすると、向こう見ずでなく調子のいい雀という造形を、またこしらえないとならなくなる。
せっかくこしらえたわりには自然じゃないし。

ぼんやりしている鷺を帯に差し込むあたりがとても丁寧。
ひとつだけ納得いかなかったのは、鷺と一緒に空を飛ぶ八っつぁんについて、地のセリフで「この男」という。
なら、「八っつぁん」という名を最初から出す必要なかったんじゃないかと。
鷺とりの主人公、数ある噺の中でも独自のスタイルを持ったアホであり、名前を与える必要はないように思った。
逆に、空飛ぶ男を「八っつぁん」と説明してもいいのだが、それもなにか変だ。重箱の隅ですみません。

鷺とり、改めてとても難しい噺なのだなと実感する。私が演じるわけじゃないけど。
最初は根問ものと同様、会話だけでできているのに、鷺とりのシーンからどんどん地のセリフが増えていき、最後は地噺のようになってしまう。
スムーズに乗り切るのは実に大変だ。
遊かりさんの売り物になるんじゃないかと思った。
どなたに教わったのだろう。師匠・遊雀は持ってなさそうだが。

続きます。

 

三笑亭夢吉(現夢丸)「鷺とり」収録

作成者: でっち定吉

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