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不定期連載、「丁稚の落語百科」です。今日は「に」。
二階ぞめき
廓噺の変わり種。
吉原へは、花魁目当てにいくのが普通だが、この噺の主人公である若旦那は冷やかし専門。
自宅の2階に吉原を作ってもらったので日夜冷やかしに出かけるのをやめ、ひとりで楽しむ。女の役までひとりでせねばならず、忙しい。
新作派の柳家小ゑんが、電気少年の憧れだった往年の秋葉原を2階に作る「アキバぞめき」という噺を作っている。
錦の袈裟
与太郎が主人公の、珍しい廓噺。
「女房がいるのに付き合いで吉原に行く」あたりが現代では理解困難。しかも女房の許可を得て行く。
そこさえクリアすれば非常に楽しい。
ポーッとしている与太郎が、隠れ遊びの殿さまだと勝手に勘違いされ、下へも置かぬもてなしを受ける。
「ちん輪」などという、そのままズバリの演題もある。
二十四孝
長屋の乱暴者八っつぁんは、母親やかみさんにも手を上げる。
大家から中国の故事を例に親孝行の大切さを教わるが、そこは八っつぁん、教わったようにはできない。
シチュエーションが「天災」と似ているが、こちらはそうそう掛からない。
ニックス
漫才協会、落語協会所属の女流漫才コンビ。実の姉妹。
父の父がアメリカ人のトーマス・ニックスという人だが、会ったことはないらしい。
どんどん巨大化していくお姉さん(エミ)は2019年に結婚している。
落語協会の色物の中でも、寄席の出番が非常に多い。
日照権
春風亭柳昇作の新作落語。
高層マンションの建設ラッシュに伴う日照権が社会問題となっていた頃の作品。
交渉に出向く人たちがマンションに取り込まれ、あるいは失敗して帰ってくるのは、古典落語の「木乃伊取り」から来ているものか。
冒頭に出てくる間抜けなキャラは「与太山」さん。
弟子の昇太が2020年にこの作品にチャレンジしたという。
二人旅
ににんたび。
元は上方ネタの「東の旅」。ご存じ喜六清八の二人連れが、大坂から伊勢参りをして京都周りで戻ってくる長い噺である。
東京では、長いこのネタの抜き読み。茶店でもって、地酒の「村雨」を飲んだり、婆さんにからかわれたりしているくだりは、独立したタイトルだと「煮売屋」。
このあと「うんつく」(長者番付)というスリルある噺に続く。これは東京でも、本家上方でも、ほとんど出ない。
二之席
毎月11日から20日までの寄席は「中席」。だが、正月だけは「二之席」という。
初席に続いて、寄席の世界は二之席が終わるまで正月である。
初席と同様、料金はやや高め。ただしこの席から、昼夜二部制となる。
二番煎じ
秋口から暮れに掛けての大きめのネタ。
火事見回りのために番屋に集まった商家の旦那たちが、こっそりお酒と猪肉を楽しむ。そこへ見回りの役人がやってくる。
猪肉がとてもおいしそう。食欲増進落語。
にゅう
古道具屋の噺であるが、与太郎キャラの奉公人が主人公。
主人が目利きに出かけたくないので、この与太郎を自分だと偽って送り出す。主人の期待を裏切らず、呼んでくれる商家でもって馬鹿の限りを尽くす。
「にゅう」とは道具屋の符丁で、古道具についた「キズ」のこと。漢字で書くと「入」。
滅び掛けた噺だが、復刻好きの柳家喬太郎が手掛けている。最近は、三遊亭天どんも寄席でやっている。
入門
プロの噺家になるには、プロに入門しないとならない。
入門を認められ、前座として登録されてようやくプロである。
前座の前に「見習い」という地位がある。ひと頃は入門するとすぐ前座になれたが、最近は志願者が増えたため、楽屋入りするまでの期間が長めになっているようである。
師匠に破門されると、東京の場合、真打になっていない限り廃業を余儀なくされる。この場合、別の師匠に入門し直すことがある。
また、真打にならないうちに師匠に死なれてしまった場合、別の師匠に再度入門しないと噺家が続けられない。
人形買い
アクセントは冒頭の「ニン」に置かれるらしい。
あまり掛かる噺ではない。しかも、端午の節句の前に出る季節もの。
前半部分は「壺算」に似ているが、人形を買うほうが騙される点が違う。
ここでも切れるがさらに後半がある。講釈が入ったりする賑やかな噺。
当代柳家小せんがこれで寄席のトリを取っている。
任侠流山動物園
三遊亭白鳥作の新作落語。柳家喬太郎も持ちネタにしている。
豚の主人公、「流れの豚次」が登場する第1作。
千葉の流山動物園は予算不足で、象以外には牛とチャボ、それに豚次しかいない。流山動物園を救うため、豚次は上野動物園のパンダ親分に頭を下げに行くのだった。
流れの豚次シリーズは好評につき、前後のエピソードが次々加わっていき、大作となった。
人間の業の肯定
「落語とは」に続くフレーズ。唱えたのは立川談志。
気に入らない噺家を批判したいときとても便利なことば。「人間の業が描けていない!」と勝手に断罪すれば一丁上がり。
次回、「ほ」の巻をお楽しみに。
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