新宿末広亭3 その1(橘家圓太郎「化け物使い」)

朝の更新がなくてすみません。そんなに毎日ネタないです。

明日、日曜から緊急事態宣言。なので寄席へ。聴き貯め。
世間に喧嘩を売っているつもりはみじんもない。かといって、褒められる行為とも思ってないが。
行った時点では決まっていなかったのだが、結局寄席四場は中止しないそうで。連休中にも行こうと思えば行ける。
2協会と寄席が言うように、「寄席は社会生活の維持に必要なもの」なのかどうかは知らない。必要ではないとは思う。
「政府や都に従わない落語界は偉い」と勝手に高く評価する人もいるんでしょう。
「オリンピックはやめちまえ。寄席は開けろ」という、すごい人もいるはず。

当初、寄席でなくて、行きたい落語会がひとつあったのだ。
しかし現地に行くと札止め。慌てて行先を他に探す。池袋は披露目をやっているが、昼席で入替え制だから、行きづらい。
こうなると、行先は入替えなしの新宿か浅草。
まったく予定になかった新宿末広亭へ。落語協会の席で、昼席の主任は初音家左橋師、夜は入船亭扇遊師。
昼席の春風亭一之輔師に間に合ったのが幸い。

笑組
人形買い 一之輔
化け物使い 圓太郎
紋之助
竹の水仙 左橋
(以下夜席)
平林 貫いち
初天神 遊京
あずみ
子ほめ 扇蔵
長短 左龍
ペー
道灌 文蔵
漫談 しん平
ダーク広和
ぼやき酒屋 はん治
(仲入り)
弟子の強飯 百栄
小猫
持参金 扇好
元犬 三三
仙志郎・仙成
天狗裁き 扇遊

 

仲入り後のクイツキは、昼主任の左橋師の弟子、古今亭ぎん志師。着いたらサゲ。

笑組

久々に聴く、笑組から参加する。
桟敷席にいる子供をターゲットにして、太ったかずおの遅刻話。
漫才協会の話もあった。なんとコウメ太夫まで協会入りするんだと。それからナイツ塙のお兄さん、はなわも。
漫才の協会なのに、漫談ばっかりだよと。
毎日聴いてるナイツのラジオでも触れていない、最新情報だ。

(※ 追記)コウメ太夫は2019年にすでに入会してました。はなわ入会だけは最新情報だと思います。

春風亭一之輔「人形買い」

次が間に合って幸い、一之輔師。
コロナと政府を軽く揶揄して、季節の噺、端午の節句に合わせた人形買い。
極めて旬の短い噺である。寄席の出番が多いから、こんな噺も持てるのだと思う。
持っているのは知っていたが、聴くのは初めて。

人形買い自体、聴いたことのない人が多いだろう。こんな噺。

  1. 長屋に男の子が生まれた。月番が人形を買いにいかないとならない。
  2. 壺算に似た導入部(買い物上手を連れていく)
  3. 5円の予算から1円捻り出して、一杯やろうと計画
  4. 人形店へ。首尾よく値切って、5円の予算のうち4円で人形を購入。
  5. 神功皇后と太閤秀吉の人形を選び、長屋の意見を聞いて片方返すことにする
  6. 小僧の定吉が付いてくる
  7. 定吉がおしゃべりで、お店の若旦那と女中のおもよさんのロマンスをペラペラ喋る

ここで切ってしまうと末広亭にぴったりのサイズ。今日もそう。
上手い買い物をしたつもりだったが、買った人形は2年前のものだった。
この先がまだまだある。長屋の易者と講談師に意見を聴いたところ、1円を巻き上げられてしまう。
通しは柳家小せん師で二度聴いた。落語らしく盛りだくさんで楽しい噺。

一之輔師の人形は、神功皇后と武内宿禰だった。武内宿禰は普通は、神功皇后の人形の隣にいるのではないかな。いいけど。
ごく軽い噺だが、特にどこがどうではなく、すべてが楽しい。さすがだ。
クスグリまで含めて、すべて覚えている気がするのだけど、にもかかわらず、どこでどう笑ったのか記憶がない。
寄席のいい仕事だということ。

橘家圓太郎「化け物使い」

ヒザ前は橘家圓太郎師で、化け物使い。
花が散れば夏の噺だ。だが、私はこの噺を、昨年の1月に聴いた
化け物が、一つ目だけしか出ないスタイル。
それは同じだが、展開が前回聴いたものと結構違っていて驚いた。池袋と新宿では、相当に作法が違ってくるのだと再確認。
もちろんそれだけでなくて、圓太郎師が常に噺をいじっているためでもあるのだろう。
田舎から出てくる杢助が、口入屋に飛び込むシーンはない。旦那の人使いの荒さを示すシーンがないのは同じだが。
しかし、杢助が旦那をたしなめるシーンもそんなにリキ入っていない。豆腐屋に3回行かされるムダさを追求するだけ。

そして結構、旦那が一つ目に優しい。なにしろ仕事をする一つ目に、旦那が餅を焼いてやるのである(!)
もちろん、本当には優しくないから「暇をくれ」になるのだけど、旦那自身、杢助に叱られたのが応えているようなのだ。
旦那と杢助の関係解消は、相性抜群の人間関係がやむなく途切れるという、普遍的な素材に昇華している。
これ、すごい。同じテーマに思えない噺に変わっている。

パワハラ的な内容には、どんどん世間が拒否反応を示していく中、こんな噺もちゃんと生き残る道があるのだ。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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