消えた三笑亭夢之助や鶴瓶師弟関係など

朝、ABCラジオ「なみはや亭」をリアルタイムで聴きながら書いております。
仁鶴追悼である。
いずれ出すかもしれないが、今日はこれとは関係なく。

You Tubeの落語チャンネルは多いが、当たり前だがすべて面白いわけではない。
だが、続けて面白い動画を複数視たのでご紹介がてら。

笑福亭べ瓶師はチャンネルをふたつ運営している。「落語の東西」というチャンネルで、東京の四派を取り上げていた。
上方落語協会に所属する人が、東京の四派を扱うというのが面白い。べ瓶師自体は東京で、さまざまな団体とかかわっている人。
前座修業から真打制度まで、四派の噺家にいろいろ訊きまくる。メンバーは勧之助(落協)、可龍(芸協)、好の助(円楽党)、談吉(立川流)。
結論として落語協会は中から見ても、外から見ても誇りが高く、容易に近づけるものではないらしい。
円楽党の好の助師など、芸協の披露目には気軽に行けるが、落協のほうには足を踏み入れたことがないそうで。
例の襲名騒動があってのことでもないらしい。
もっとも、好楽一門の好二郎さんなど、林家仕込みの「大師の杵」を掛けていたりしたから、好の助師個人の感想と思ったほうがいいかもしれない。

芸協の三笑亭可龍師は、うちの協会は噺を教えてくれと頼まれたとき、まず「イヤ」という風土ではないと。
当代円楽師も、こういう開かれた風土を見て統合ができると思ったのだろう。志半ばではあるが。
昇太会長が、落協と一緒になりたいと思わないのにも、個性的な風土の存在があるに違いない。

上方とは異なる真打制度についても、前座修業についても、四派の代表とも「あったほうがいい」と答える。
面白いことに、円楽党と立川流も。
好の助師も談吉さんも、毎日寄席に行くのは辛そうだと感想を持っている一方で、修業はあったほうがいいだろうと。
可龍師は「慣れだからね」と手短に。
真打制度について勧之助師は、「お客さんのためのもの」だという。実に端的な説明。
真打になったからっていって、急に実力が上がるわけじゃないでしょ。でもお客さんには区切りになる。
年功序列の真打制度になお価値があるのは、確かにそういうことだろう。

ちょっと気になったのは、べ瓶師が協会・団体を「派閥」と呼んでいること。
べ瓶師だけでなく東京の噺家も、You Tubeで取り上げるときはこういう言い方をしばしばしている。だがちょっと違和感。
派閥というのは、自民党を除くと明確に目に見えないものを言うと思うのだけど? 協会は明確な区切りだからな。

いつも視ている林家はな平さんのチャンネルでは、「上方落語あるある」を取り上げていた。
いつもの寸劇仕立てではなく、三遊亭司師とのトークスタイル。
こちらで「東京の人は《上方から来た○○師匠》と言いがち」という話題が出ていた。当人は実際には「大阪から決ました」と言う。
そして、大阪の人は《江戸から来た○○師匠》と言いがちなんだと。東京の人間が自分で「江戸」ということは、まずない。
確かにそうだ。
大阪ローカルの番組に春風亭昇太師が出ていたのを、違法動画だが視せてもらった。これは実に楽しかったものの、番組の中で「江戸」「江戸落語」という言葉をやたら使っていたので違和感あり。
これに違和感を持った東京の人間は、「上方」という言葉を使う際にも気を付けましょう。私も気を付けます。

ヨネスケちゃんねるに、べ瓶師もゲストで登場していた。師匠・鶴瓶師との破門の思い出を語る。
Web上の記事を読んだことはあって知ってはいたのたが、廃業して1年後、門下に復活するまでの話は涙ものである。
師弟関係の好きな私にはたまらないものであった。
ヨネスケ師も勧めていたのだが、いずれ一席の人情噺に発展することだろう。師匠の私落語のように。

そしてヨネスケちゃんねるに、昨日アップの最新動画が出ている。
「落語界の消えた天才」を取り上げるというサムネイルに引かれて視てみると、これが三笑亭夢之助師について。
盟友、小遊三師とともに夢之助師について語る。

当ブログの1年前の記事、ずいぶんヒットしたものだ。

三笑亭夢之助と手話通訳事件(上)

これはなにかのきっかけにより書いたものではないのだが、検索する人がそれだけ多いのだ。
同業者から夢之助師への言及を見たのは初めてである。
しかも、ヨネスケ、小遊三といえば、夢之助師に最も近かった人たち。

夢之助師、急に芸術協会を辞めてしまったが、理由は体力的なものだということ。
講演ぐらいはできるが、高座は務められないのだと。
そして、芸協にだけ退会届と手紙を出し、ヨネスケ、小遊三といった身近な人には相談せず消えてしまった。
もう電話もつながらないらしい。

噺家にもいろいろな全うの仕方があるが、消えることを選ぶ人もいるわけだ。
人の思い出には残る。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。