令和の落語界における「笑点」の地位 その2

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20年前の笑点を振り返ってみると、落語とは確かに別世界の存在に見える。ここまでは事実だった。2001年は志ん朝の亡くなった年でもある。
令和の世に同じことを言っている人は、その後の認識をアップデートできていないわけである。
「自分にとって重要でないから番組を視ない」これ自体はなにも、間違ってはいない。
だが、知らないことをわかったように述べてはいけない。どんなジャンルでも、これは当たり前。
噺家が出ている人気番組を、視ないで貶めることに躊躇のないファンが多いのが、落語界の不思議。
昨日も書いたが、かつての自分を恥じてそう言う人も多そうだ。恥じなくていいのです。

しかしこの後から笑点を取り巻く環境は、当時のファンが誰も気づかないうちに大きく変わっていった。
ちょっとだけ後の時代は、こうなる。2006年前後静かに、しかし激変があった。

  • 桂歌丸・・・落語芸術協会会長にして、笑点司会/2005年には芸術選奨
  • 三遊亭小遊三・・・落語芸術協会副会長
  • 三遊亭好楽・・・依然つまらないとされていた
  • 林家木久蔵・・・依然キワモノ扱いだが、W襲名により地位が上がる
  • 春風亭昇太・・・新作落語のエリートにして、2000年に芸術祭大賞
  • 三遊亭円楽(6代目)・・・円楽襲名
  • 林家たい平・・・エリート抜擢真打

先代圓楽が引退し、歌丸が司会。
こん平が闘病で降板し、弟子のたい平が座る。
そして昇太が登場。この人は実際には笑点では当初人気がなかったわけだが、芸術祭大賞をはじめ、文句のない落語界の実績を引っ提げての登場だった。
なにより、芸術協会の会長と副会長が収まっていたのはすごい。
この時代にすでに、「笑点は落語の上手い人がやる」という前提が生まれていたのである。
もちろん、落語の上手い人がみんな笑点に出るわけではないのは当然。しかし「落語の上手い人は笑点に出ない」という認識は、とっくに古くなっていたのである。

好楽師だけ、相変わらずちょっとなんだかなという感じではあった。
しかし売れっ子弟子の兼好師が2008年に真打昇進するなど、現在の地位を築き上げる萌芽は、ちゃんとこの頃あったのだ。

以前、Wikipediaの噺家の項目に不満を持ち、記事にした。

Wikipedia記事の適当な記述

なんで、なんでもかんでも笑点基準で語るんだよと。
今でもこの不満はある。
だが、笑点基準というものがまるで間違いなのかというと、この時代からはそうとも言えないのであった。

なぜ笑点だけが悪く言われてきたか

落語の番組は笑点以外にもあった。
私は「お笑いタッグマッチ」は古すぎて知らないが、これも大喜利番組。
司会の春風亭柳昇をはじめ、桂伸治(先代文治)などの人気者が、「落語がヘタ」なんて言われたと聞いたことはない。
私が実際に見ているのでは、「生放送!お笑い名人会」なんて好きだったなあ。「ハリセン大喜利」。
ハリセン大喜利とは、馬風師匠のオンステージ。
NHK「お好み演芸会」も人気の番組。大分にいた子供時代の桂文治師は、これを毎週視て、先代文治か小三治、どちらかの弟子になりたいと思っていたという。
師匠文治が大分に興行で来たのが縁だったと、先日小三治逝去の際のツイートで。
笑点を貶めるファンが使う小三治も、大喜利をやっていたわけである。
笑点は結局、単に人気がありすぎるのだろう。そしてキャラが濃い。
ちなみに笑点、40分時代には、落語もちょくちょく掛かっていたから、今以上に立派な落語の番組だった。今は落語は掛からず、演芸と大喜利専門となっている。

笑点メンバーはやはり精鋭

笑点Jr.等で活躍していて、大喜利メンバー入りがうかがえる噺家はいた。
橘家文蔵、五明楼玉の輔、立川生志などである。
これらの師匠だって、笑点メンバーに抜擢されていたら恐らく受けていたと思うのだ。
昇太、たい平の両師とも、その激戦を勝ち抜いてきたのだから立派なのだ。
え、三平はって?
勝ち抜いてきたわけでないメンバーが現にいる。それはもう、私にもなんら整合性が取れない。
制作側に若返りを果たさなきゃという意識があったのだろうけど。
ところで、現代において次のメンバーを選抜するのは、笑点特大号の若手大喜利である。
桂宮治師が常に、次のメンバー入りとささやかれつつ、なかなか実現しない。
それはともかく最近、特大号を視ていると、若手大喜利が非常に小さくまとまってしまっている。本家大喜利よりもずっと。
改めて、あれは難しいものなのだなあと。
他方、綺麗どころを集めた「女流大喜利」が急激に面白くなっているのは注目に値する。だから放映回数も増えているのだろう。
こっちからの抜擢もあるかな?

続きます。

作成者: でっち定吉

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