CSのフジテレビTWOで、「古畑任三郎」をたまにやっている。
同じものを何度見ても面白い。
現代の刑事ドラマといえばまず「相棒」だが、私も好きだ。
ようやく高樹沙耶の登場回が再放送されるようになり嬉しい限り。
だがエピソード数のずっと多い相棒、逆立ちしても古畑にかなわないところが多々ある。
相棒もまた、ユーモア溢れる作品だけども、古畑任三郎の終始ふざけた世界観には、落語との共通点が感じられる。
このおふざけ振りが、捜査のリアリティを犠牲にしているマイナスを補ってなお余りある。古畑の先輩である「刑事コロンボ」もほぼ全話視ていて好きなのだけど、古畑のほうが優れている部分もかなり多いと思う。
相棒には、古畑任三郎オマージュをうかがえる設定が結構多いが、中には完全にそれ目的の回がある。
シーズン8の4話「錯覚の殺人」は古畑任三郎でおなじみ、先に殺人の描写がある倒叙推理もので、しかも犯人が、三谷幸喜組の近藤芳正だ。
三谷幸喜氏への溢れる敬意が伝わってくる。
この回も、再放送を何度か視ているのだが、何度視ても面白い。
オマージュであるということは、つまりふざけているということでもある。ふざけているからこそ、何度も楽しめる。
犯人が殺人後に出演するTV番組のおふざけぶりもそうだ。
さらに杉下右京たちがTV局に出向く理由が、子供番組の「あつまれトンチッチ」にあるというのもいい。
相棒にも繰り返し落語が登場する。
杉下右京と、鑑識の米沢守が落語好きの設定。
そして先達である古畑任三郎のほうにも、落語を取り上げた回がある。
現在では幸四郎を襲名した、市川染五郎が犯人の会である(3rdシーズン第一話「若旦那の犯罪」)。
1999年の放送である、これを久々に見たところである。
今まで視た際には気づかなかったのだが、若かりし日の桃月庵白酒師がかなり映っていた。
当時は二ツ目で五街道喜助か。
それから柳家甚語楼師も映っていた。この人は当時の名である「柳家さん光」としてクレジットまでされていた。
そして落語監修が柳家さん生師で、セリフのある出番。
気づかなかったが柳朝(当時・朝之助)、我太楼(当時・太助)などの師匠も映っているらしい。
また再放送があったらちゃんと見て探します。
とても面白い放送だったが、アラも少々。
染五郎の犯人、新作落語しか知らないので、被害者が「干物箱」に絡めたダイイングメッセージがわからなかったのだと。
だが、こんなことはあり得ませんね。新作派の噺家だって、当時で4年程度楽屋に詰めて、ネタ帳も書くのである。
落語を知らずに入ってきた三遊亭白鳥師だって、自然と覚えるものだ。
干物箱程度の古典落語がわからないなんて考えにくい。亡くなった親父が噺家の設定なんだからなおさら。
もちろん、古典芸能である歌舞伎の人が、古典を知らず新作をやっている二代目噺家を演じるというのが、ドラマの中での壮大なシャレではある。
染五郎の師匠が、殺された同じく弟子のモロ師岡を差して、「あいつは古典の勉強をよくしていたから、新作を作っても古典の香りがあった」と述べていた。
この部分はかなり好きだなあ。私も実際、古典落語の香りのする新作落語が好きだ。
モロ師岡は、万年二ツ目であり、その年も昇進できなかったのだと。
ドラマの頃は、落語協会ならもう年功序列で真打になれる時代だから、これもない。
あと、染五郎の「アニさん」のアクセントがおかしい。アにアクセントが来ていて。さん生師匠も、こういうところは相手が本物の若旦那なので注意しづらかったのでしょうかね。
どの分野を取り上げたってアラは出るので、別に非難しているんじゃありません。