Zabu-1グランプリと入れ子になってしまいましたが、連雀亭に戻ります。
キャリアはまだ浅いが、二ツ目の中でも屈指の実力、春風亭一花さんをしばらく追いかけている。
昨日も触れた桂二葉さんは、男の落語を軽々演じてしまう女流。
一花さんも、その意味で言うと似たタイプ。
だが、噺の雰囲気は結構違う。
二葉さんは、わりと乱暴な男の落語を乱暴にやりつつ、女性としての柔らかさでこれを中和して完成させる人。
一花さんはというと、表面的な部分には女性が一切出てこない。だが、噺の中身に女性の優しさが詰まっているのがたまらない。
一緒に会もやっている二人の共通点は、違和感がないということだ。
いや、最初は違和感を覚える客もいるかも。でも、慣れたらなんの不自然さもない。
アニメの男の主人公に女性が声をあてていても、いつまでも気になったりはすまい。
高い声の二葉さんよりも、客はアジャストしやすかろう。
一花さんは、橋蔵さんの「サウナ芸人」の会をよろしくお願いしますと。
希光アニさんも橋蔵さんも、芸術協会ですからここ、連雀亭でしか会わないんですよ。だから楽屋は楽しいですね。
この後せっかくだからみんなでサウナに行きます。
楽屋はすごく楽しいんですけど、開けてるので寒いんです。コートが必要なぐらい。
私もすっかり手が凍えてしまって、こうやって温めているんです。お客さんに握ってもらいたいぐらいです。
これはもう、ほぼホステスの話術ですな。
廓噺にぜひ活かしてください。この人はもう始めている。
稽古屋の女師匠にも活きるかもしれないが、こちらはまだ聴いたことがない。
実際、早く来た客(もちろん年配男性)は、ことごとく一花さんを捕まえて、話をしていた。
私は、人妻と個人的にしたい話はないなあ。
今日はお客さん12人なので3人で、割り切れますだって。
男性のやきもちの話から、冷蔵庫小噺へ。
この西洋ジョーク由来の小噺は、個人的に飽きた。泥棒噺の「仁王」ぐらいに。
落語の世界に、いまだにハマっていない小噺の気がする。そもそも冷蔵庫には、人間は入れません。入ったら即死です。
だが一花さん、あの世のシーンでもって「はいはい私が神さまですよ」と、ごく軽い神さま出してきたので笑ってしまった。
ちなみに、文菊師に教わったんだって。希光さんが文菊師の名を出したから、被せたみたい。
本編は権助提灯。どちらかというと、女性客が好きな噺というイメージだけど、今日の客は男ばかり。
もっとも私だって大好きな噺です。
一花さんは、主役の権助みたいなファンキーな登場人物は好きみたい。
こういう愉快なキャラを描いても、違和感はゼロ。
というより、一花さんを基本として見ていると、どうして男性を演じて違和感のある女流がいるのか、そちらのほうがわからなくなってくる。
基本に忠実に、登場人物を「らしく」描くだけのことに思えるのだけどな。
応用編としては、権助を自分自身楽しく演じることかな。だからか、権助のことが嫌な旦那も、露骨に嫌ったりはしていない。
東村山に行ったばかりのせいか、志村けんを思い出した。
志村けんは、バカ殿もひとみ婆さんも、変なオジサンもいいよなオジサンも、演じていて実に楽しそうである。
一花さんもこういうエッセンスを持っている。そしてこれはきっと、噺家になる前から持っている、極めてコアな部分にある要素なのだ、きっと。
権助提灯は、本妻、妾と怖い二人の女に挟まれた旦那が右往左往する楽しい噺。
そして一花さん、女を描くときも、男と同様、しっかり作り上げる。
作り上げるが、描写はむしろあっさりしている。ここがぴっかりさんと違うところ。
だが、女の登場人物は、外形でなく態度で表わしきる。
妾宅から戻ってきた旦那を、入れてやらない本妻。旦那の前で、引き戸を勢いよくピシゃッと閉める。
これ、噺のハイライトだ。
実に楽しいのだが、もう1回帰ってくるとき、これが楽しみになってしまう。
今回も実に楽しい一花さんでした。
他のふたりもよかった。連雀亭はやめられませんな。
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