電子決済普及で「お釣り」が分からない子ども増加? 大人になって困らない?(大人んサー)
最近の子供はキャッシュレスに慣れ過ぎて、お釣りの計算ができなくなっているとのこと。
駄菓子屋に行く子供だっているので、やや疑わしいのだけども。
それはそうと、この疑わしい事例を引いて「だからキャッシュレスはダメ」と力説する大人がいるのならつくづく呆れる。
お釣りが存在しなくなっていく世の中で、なくなるものをことさらに取り上げ、新しい文化を否定するなんて。
鳥越俊太郎かってえの。
まあ、そんな人いたとしてごく一部だと思いますけどね。
落語界は、キャッシュレスに関しては一般社会から3周ぐらい遅れているとんでもないところ。
なにせ鈴本なんか、コロナ禍で現金投入機を導入してる。本当に意味が分からない。
キャッシュレスで入れるのは国立演芸場と巣鴨スタジオフォーぐらいだ。非導入は「決済の時間がかかる」という理由かもしれないが、よそではみんなやってるんだから理由になり得ない。
キャッシュレスが書くものの専門である私、現金を使うのは最近、本当に落語のときだけですよ。歯医者だってPayPayだもん。
さて、古典落語の世界も基本的に現金で成り立っている。
もっとも、「掛け取り」に見られるように掛け売りも発達していて、ある意味今よりずっとキャッシュレスだと言えなくもないがそれはさておき。
古典落語の世界を、キャッシュレスに変えてみたらどうなるか。そんなことを思ったのである。
キャッシュレス文七元結
博打に入れあげて仕事をしない左官の長兵衛。
娘が自ら吉原の佐野槌に身を売りにいく。佐野槌のおかみ、長兵衛に「1年間」の期限を決めて50両を貸し付ける。これで借金を綺麗にして仕事に励めと。
おかみは長兵衛の楽天銀行口座にすぐ50両を振り込んでくれる。
いっぽう、得意先で碁に夢中になり、お店へ帰るのが遅くなる文七。ただし振込みで用は済んでいるので持ち帰る現金はない。
橋の上でおかしな男にぶつかられるが、特に懐中物もないので心配もしていない。
長兵衛は本所達磨横町の家に戻り、文七は白銀町の近江屋に戻る。
おしまい。
キャッシュレスもう半分
娘を吉原に売り、50両をこしらえた老人。いつものように注ぎ酒屋で一杯やってから帰ることにする。
老人は1合の半分だけ入れてもらい、お代わりする変わった飲みかたをしている。そうするとたくさん飲んだ気がするのだ。
さて老人は娘を売った金を早速振り込んでもらっているので、特に金の心配はせずそのまま帰る。
おしまい。
キャッシュレス柳田格之進
浪人の柳田格之進と、両替商の万屋源兵衛とは囲碁仲間。
両替商といえどキャッシュレス世界では多額の現金を扱うことはないので、50両が消えてしまうこともなく、いつまでも楽しく碁を打ち続けるのであった。
おしまい。
キャッシュレス真田小僧
知恵の廻る金坊にやりこめられ、今日もPayPayで与える小遣いを次々だまし取られる親父。
親父が講釈に通って覚えた真田三代記をおかみさんに語るのをこっそり聴いていて、すぐ覚えて親父に披露する。
親父に、六文銭ってなんだいと聴くが、完全キャッシュレス時代なので家に硬貨などない。
ここでおしまい。
キャッシュレス壺算
弟分に頼まれて、2荷の甕を買いに付き合う兄貴。
弟分に口を挟ませず、1荷の甕、3円50銭をまけてもらって3円で買う。支払いはPayPay。
甕をかついで町内ぐるっと回って道具屋に戻り、すまねえ、2荷の甕がいるんだと詫びて買いなおす。
2荷の甕、7円を首尾よく6円でお買い上げ。
悪いけど、この1荷の甕いらねえから引き取ってくんねえ。結構ですよ。
ここに3円の甕があるな。それから、ここにPayPayで支払ったばかりの3円の取引履歴があるな。
3円と3円、足して6円だからもらってくぜ。
あれ、同じ噺になっちゃった。
キャッシュレス五人廻し
喜瀬川花魁が全然廻ってこないので、前払いした玉代返せとやかましい客たち。
じゃあ返しておやりと花魁。杢兵衛大尽に頼むと、杢兵衛は若い衆の喜助のスマホにLINEで2円を送金して、これで客人に50銭ずつ返してやるとええだよ。
花魁が、ねえお大尽、あたしにも50銭おくれよ。
ええよ、やるべえと花魁のスマホに送金する。
そうすると花魁、直ちに50銭を送り返してくる。どうしただね喜瀬川。
「お前さんも帰ってちょうだい」
あれ、これも同じ噺になっちゃった。
キャッシュレス時そば
「銭細かいよ」
「すみません、うちキャッシュレスそば屋で、現金はお断りしてるんですよ」
「・・・そうかい。じゃ、Suicaで。ピッ」
「毎度あり」
一昔前、電卓を使ってると「算盤も使えねぇのか」と古株の先輩に言われた。
今は電卓で計算してると「Excelで一発で終わりでしょ」と若い社員に言われる。
悔しいので「ヘイ!Siri! 〇○の計算して!」と言ったら「チョット何言ってるかわかりません」
というわけでキャッシュレスも含めて年寄りには生き辛い世の中です。
私のほうは、仕事のネタが切れず、大変生きやすい時代になりました。
なんだかすみません。
といったって、ここ3年ぐらい最先端に食らいついていった、それだけですがね。