落語には常に行きたいが、来週には息子の入試があるので、それまでは控えめに。
その割には結構出歩いてやがるなと思う方もいらっしゃるでしょうが。
ちなみに入試の後は、モデルナを打ちにいく。
副反応怖さのためにブースター拒否の方もいるでしょう。私は、家畜に予防接種するのと同じだと思ってるので、なにも考えず機械的に体を運んで打ってきます。
家畜なんだから、副反応をぶひぶひ言ったって仕方ないじゃないか。
反ワクチンの人は、地球上における自分の価値を、ムダに高く認識し過ぎなんだと思うね。
さて、ラジオでネタを探します。
野球のオフシーズンだけやっているのが「らんまんラジオ寄席」。
野球シーズンは、当ブログでもよく取り上げている関西の2番組を聴いている。オフになるともうひとつ増えるわけだ。
らんまんラジオ寄席は、コロナ前には招待券が当たって、TBSまで公開録音に出向いたものだ。
現在はお客を絞って録音実施中みたい。
毎年ある、仙台での収録の回だ。
番組のトリなのに、子ほめ。
実際には翌週の録音もあるので、歌武蔵師は仲入りだろう。もっとも仲入りとしても、この出番で子ほめは珍しい。
子ほめは前座噺だが、前座がやらなかったら真打でも出したがる人が多い。
五街道雲助師や、柳家さん喬師など。他にもたくさんいると思う。
それでも、出したとしてヒザ前か、仲入りの出番のひとつ前ぐらいだと思うけども。
私も子ほめが大好き。落語にも多くの噺がある中で、こんなによくできた噺もない。
繰り返し聴いてもまったく飽きない。
匹敵する噺があるとして、替り目、時そばぐらいじゃないだろうか。まあ、これらは前座はやらないけど。
ともかく、ラジオの20分の枠である。演者自身のマクラを振らない、かなり長い子ほめ。
ただフルバージョンかと思うと、そうではない。
隠居のもとに、タダの酒飲ませろとやってくる乱暴な熊さん。
口は相当悪くて、隠居もときどき強くたしなめている。その割にはやり取りが平和なのは、いかにも落語の世界。
一般的には八っつぁんだけど、別に熊さんでもいい。熊さんのほうが乱暴なイメージだから、子ほめに向いているということかもしれない。
八っつぁんは、熊さんに、隠居の家にはタダの酒があると吹き込む人物として出てくる。
長い尺の分、普段出ない何が入っているかというと、錆田の隠居と、ノリ屋の婆さん。それぞれ口の悪い熊さんが怒らせたエピソード。
普通、第三者として隠居が出てくるときは「岩田の隠居」なのだが、錆田。
錆田という人は、上方落語でたまに医者の先生として出てくる。それがどうして歌武蔵師の子ほめに入ってくるのかはわからないが。
歌武蔵師が上方落語好きなのは確かで、直接文珍師あたりに噺を教わったりしている。
隠居のところで口上を教わる熊さん。
「亡くなったお爺さまに焼いて」「蒸して」「揚げて」と言い間違える。「似て」が出てこない。
これは歌武蔵師のオリジナルギャグだろうか。でも古典落語の中でまるで違和感ない。
長い割に、抜いている部分も。
年を褒めるのを教わるくだりは入っているが、実際に伊勢屋の番頭さんを褒める場面はない。
最近、このパターンをしばしば聴くようになった。抜く理由は人それぞれだろうが、意外となくても大丈夫なのだった。
その代わり、知らない人に二度問いかけて叱られている。
堀の内やざる屋などにも出てくる、黄金パターン。
子供が生まれての祝儀が100円である。時代背景は昭和らしい。
竹の家に行ってからはもう、客席から笑いが止まらなくなっている。
別に強烈なギャグが入っているわけではない。「洗濯はふた晩で乾くかな」とか「ジャワスマトラは南方だ」がそんなにウケるわけもないし。
なのに、ジワジワ来てたまらなくなっているのだ。
さて、この子ほめがいいなと思ったのは、見てきた細かい部分だけのことではない。
最大のポイント。熊さんのセリフのうたい調子に、もうなんともたまらなくなった。子供を褒めようとする熊さんに。
これはもう、間違いなく寅さん。時代背景が昭和らしいのも、寅さんに合わせたのではないかと。
以前喬太郎師の番組で「落語教育委員会」が取り上げられたことがある。歌武蔵師、喬太郎師とのトークで寅さんについて熱く語っていたのを思い出す。
このVTR、喜多八師も出ているし、まだ取ってある。
久々にこのトークを聴いてみた。2015年だ。弟弟子の歌奴師が寅さん大好きなんだって。
まあ、トークの大部分はウルトラマンなんだけど。
なにも、歌武蔵師が高座で渥美清のモノマネをしているなんてことではない。熊さんの、わかりもしないくせに一丁前に子供を褒めたい了見が、車寅次郎そのものなのである。
男はつらいよに落語の要素が多数紛れ込んでいるのは有名だ。といっても、山田洋次監督が寅さんのセリフに直接落語を持ち込んだわけではないはず。
子ほめに寅さんを見た歌武蔵師、すばらしい。師の仕事によって、寅さんがルーツのひとつに先祖帰りしてきたのだ。
歌武蔵師の高座が、私の中でステージを二つ上がりました。