春風亭かけ橋・二ツ目昇進決定（のはず）

土曜日に新浦安に行ってきた模様は、3日にわたってお届けしたところ。
三遊亭遊雀師の独演会。非常に満足した。
この席で前座を務めたのが、小南師の惣領弟子、南太郎さん。初めて遭遇したが実に楽しい人。
南太郎さんは、8月で二ツ目昇進とのこと。ブレイクしそうな予感。

さて南太郎さんのことが頭にあり、何の気なしに芸協の前座香盤を眺めてみた。芸協の、昇進間近の前座は他に誰だったかなと。

上から、こう。

• 柳家ふくびき
• 春風亭かけ橋
• 桂南太郎

ああ、そうか。3番目にいる南太郎さんが昇進ということは、上の二人も昇進ということじゃないか。
春風亭かけ橋さんも、ついに昇進だ。
同時昇進とは限らない。たとえば、ふくびきさんが6月で、かけ橋さんが7月なんてことも、わりと普通にあり得る。

春風亭かけ橋さんは、絵に描いたような苦労人。
言ってもまだ前座の身でWikipediaももちろんないから、かつては公開されていたプロフィールの復元がなかなか難しいのだが、こんな感じ。

恐らく、2012年頃柳家三三に入門。
2013年と思われるが、落語協会で前座開始。前座名、小かじ。本名（姓）から1字取っての命名。
前座を4年弱やって、2016年11月に二ツ目昇進。名前はそのまま小かじ。
同時昇進の柳家小はぜ、三遊亭伊織の二人が、前座になった時期がなにしろ丸1年ズレている。
このため小かじが前座になった時期がよくわからないのだが、この二人の中間であることは間違いない。
二ツ目になって間もない2018年4月にいきなり廃業。
公式アナウンスなどないものの、破門と思われる。
その後間もなく芸術協会、現副会長の春風亭柳橋に再入門。
2018年の暮れまでには、再度の前座になっている。

じきにWikipediaも再作成されて、小かじ時代のプロフィールも載るのでしょう。
破門の経緯が記載されるまでには、20年ぐらい掛かるかもしれない。
かけ橋さんが自叙伝を出すほど売れないと、経緯も記されない。

かけ橋さん、やり直しの前座をごく普通に3年半ほど務め上げた（昇進月まで）ことになる。
偉いもんだ。
どの噺家だって、前座に戻るのは絶対に嫌だっていうのに。
落語協会から芸術協会に移り、前座をやり直したのは、桂しん華（三遊亭日るね）さんと、かけ橋さんだけのはず。
二人とも、けじめとして落語協会でのキャリアはリセットされて、あくまでも新入りとして扱われた。
三笑亭可風師も移籍しているのだが、師匠が亡くなったのを機に自分の意思でいったん廃業しているので、前座やり直しが気の毒というほどでもない。

ずっと気になっていたかけ橋さんを、先日東村山で聴いたばかり。前座として扱われている様子は、二ツ目として出た昔昔亭昇さんの高座からもうかがえた。
そして前座として「転失気」を掛けていたが、これが元師匠の発声そのままで、改めて驚いた次第。そんなイメージはなかったのに。
元々落語協会でも上手かった人。これから活躍のし直しである。
落語協会で一緒だった人たちとの二人会も多数開催されることだろう。

今回の昇進のニュースは、今のところどこにも出ていない。5ちゃんねるにすら。
当ブログが第1号かもしれません。嫌らしいけどさ。

しかし、落語協会を追われてすぐに芸協に入れたというのは、辞めた際の状況も関係しているに違いない。
落語界とはそんなところ。本人に責があってけじめが求められる状況なら、同じ弟子入りするにせよそれ相応の期間が設けられたものと思われる。
つまり、そうでなかったのには、破門があまりにも理不尽だ、そんな判断が関係者の決断の背景にあると思われる。
もちろん、かけ橋さんの腕への評価も大きかったはず。

大師匠小三治がクビを切ったということになっている。なにがあったかわからないが、小三治も今はない。
小かじであったかけ橋さんが、再度活躍すればするほど、師匠であった三三師にはダメージとなる。
そのうち、元の師匠との二人会でもやって手打ちにするかな。

もっとも柳橋師から三三師へ、再入門時に義理は通したはずではある。
ただ、三三師が仮に「復活なんて絶対ダメ」と言っていたところで、芸協の側はこれを守る義理はない。
落語協会のキャリアはリセットされているからである。そんなわけで、どのみち追認せざるを得ないのだけど。

回り道はしたが芸歴9年になるはず。まだまだこれからです。
神田連雀亭やスタジオフォー巣ごもり寄席等にも出て欲しいものだ。まだ先のことか。
NHK新人落語大賞にエントリーは、しないかな。

（2022/4/8追記）
かけ橋さんの昇進はツイッターによると7月みたいですね。
ふくびきさんは3月下席からだった。
近刊