両国寄席6 その3(三遊亭好の助「もぐら泥」)

ちょんまげの三遊亭栄楽師は、権助の小噺、「お山は火事だんべ」を振ってから、付け焼き刃は剥げやすいと子ほめ。
前座噺だが、真打からもたまに聴く。実によくできた、落語らしさ満点の噺だと思う。
そして、「竹の子は生まれながらに重ね着て」という上の句に、八っつぁんが無理やり下の句を付けてしまうサゲ。
この型、柳家さん喬師から聴いて以来。

仲入り前は、ちょっと楽しみにしてきた三遊亭全楽師。
皆さん連休でいいですね。私は昨日までずっと連休でしたと自虐から。
元「立川國志館」。先日読んだばかりの立川生志「ひとりブタ」にも、談志家元によくハマっていたのに、上納金3倍返し問題と、当時すでに精神を病んでいたのではないかと思われる家元の言行不一致に悩まされ、立川流を去らざるを得なかった描写がある。
前回聴いて、立川流っぽい口調だと思ったのだが、再度聴くと、ちゃんと独自の個性的な語り口が聴こえる。
だが、本編が前回と同じ真田小僧でちょっとがっくり。前回は、竜楽師のヒザ前における妥当な演目だったと思うが、仲入り前でも同じ噺なのか。
そもそも、「子ほめ」と違って、私の飽きている噺の筆頭でもある。
がっかりしたのもつかの間、よく聴けばなかなか楽しい。自信の演目なんだろう。
客にとって先刻知っている噺を、「この先どうなるんだろう」と聴かせてくれる噺家は非常にありがたい。
金坊のもったいぶった語り口と、お父っつあんのハラハラ振りが伝わってくる。
仲入り前で時間があるだろうから、薩摩に落ちたのくだりまで進むのかなと思ったら、おっかあが帰ってきたところまで。このほうが効果的ということなのか。
ちなみに通貨の単位が現代的で、10円からスタートして100円、500円とどんどん上がっていく。

仲入り後は、面白い顔の三遊亭好の助師。
幻の林家九蔵であるこの人、おかげさまで、結構聴けている。
真打昇進時のトラブルを、見事に味方にしてしまった人。
決して外さない。
一般的に、真打になった後は誰しも大変。寄席にもそんなに出られるわけじゃないし。
落語協会など、真打になった後どうしてるのかなと思う師匠が多い。
だが、円楽党は寄席の番組も日替わりだし、出番がちゃんとあるのだ。もちろん、上手くなけりゃ客に迷惑だが、そんな人は少ない。

羽織を脱いで、マクラでどうでもいい内容を語りながら、その羽織を客の前で丁寧に畳んでいく。
すごいギャグ。
畳み終わってからようやく自己解説が入り、あたしはきちっとしている人間だということがおわかりいただけたでしょうかだって。
高座の後ろに投げ出しておくなんてそんな。化繊だけど畳まないと傷みますなんて。

実演マクラでウケてから、泥棒の噺をと、もぐら泥。
おや、先月黒門亭で蜃気楼龍玉師から聴いた、珍しい噺が続けて聴けるとは。
だが、ムードはかなり異なる。展開が極めてスピーディーで、登場人物がみなとぼけている世界。
縛られたもぐら泥(低い姿勢)を演じながら、「この噺やるんじゃなかった。高座低いから、後ろのお客さんの顔が見えないじゃねえか」。
さらに「この間はよかったな。前列にミニスカートのお客さんがいて。やっぱりやるなら夏だな」。
この日、そんなに押しているイメージはなかったのだが、持ち時間が短かったようだ。
だが、短い時間でもって徹底的に笑わせてくれる好の助師。
絶品でした。

続きます。


三遊亭好楽 落語集 好日楽語

作成者: でっち定吉

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